2013年03月29日19時41分掲載  無料記事
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TPP/脱グローバリゼーション

【女たちのTPP】(2)大震災と原発事故  回覧ノートが行方不明に  西沢江美子

 二〇一一年三月一一日。あの福島原発事故は、生まれたばかり、事務局もない「反TPP百姓女の会」を行方不明にさせた。事務局をまかされていた私は、まず百姓女の仲間の安否を問うことからはじめた。この時すでに五冊の回らんノートが全国をかけめぐっていたはずだ。そのうち二冊は福島に、二冊が宮城から岩手に、一冊が九州で、それぞれの地の女性たちが「くらし」を記録していた。 
 
 福島の一冊が幸いにも千葉県松戸市の七〇歳女性の手元に届いた。五月の連休明けである。そこには大きな字で「何をしてきたんだ。どう生きたらいいんだ。出口がない!!」と書いてあった。松戸の女性は、東日本の被災地のひどさ、特に福島原発事故のテレビや新聞報道を見ながら、どうしようもない悲しさで胸がつまっていた。「出口がない!!」と書きつけた回らんノートに彼女は、生の声を聞いたと思った。この「出口がない!!」を反TPP百姓女の会みんなの叫びにしなければならない。松戸の女性は、自分の知人、回らんノートに書かれた仲間の住所に手紙を書いた。 
 
 「出口は必ずあるはずだ。原発は原爆と同じ。私たちは広島・長崎、ビキニと三度被曝し、これで四度目だ。広島・長崎・ビキニを知ること、そこに出口があるはず。そして、百姓女だから生命をつなげようよ。これからいろんなことが起きるけど、私たちは、牛や馬でなく人間だと心で叫んでいた先輩たちに続いていたはず。放射能と対峙し生きるチエを出し合おう。土に生きる女として、土をいじり、種子をまき、収穫するそのことをし続けられるように考え合おう。当然、責任は東電と政府(国)にとらせよう。福島に自由にいけないなんておかしいよ」 
 
 「私は原発事故は、TPPと同じと思う。いつでも核兵器をつくれる原発を平和利用といって使い、また輸出しようとしている。金のことだけ考え、そこで生きている人たちの生命よりも金が大事という資本主義、金以外目に見えない新自由主義経済とやら。福島とTPPそして憲法、沖縄を切りはなしてはいけない。生命を生むという、女性だけが持っている特長こそ、最も生命を無視する新自由主義に反対できるはずだ。私たちは、戦後すぐに基地反対闘争、原爆を二度とつかわせない戦争反対などなど様々な平和運動をしてきました。私が忘れられないことがある。それは爛螢鵐瓦鮑遒辰討呂い韻覆ぁ函淵螢鵐官犢椋酖彰肯瓠Π豢綮融闇)とリンゴの木を切り倒させられたこと。孫に食べさせたくてこっそりとリンゴをつくっていた祖父が警察につれていかれたのだ。それでもリンゴの木を切らずに守り続けた祖父たちのいたことを、いま学ぶべきだ。」 
 
 十歳で祖父の行動を見ていた青森県黒石市の女性は、原発事故の情報を明らかにしないまま、避難しろ、外に出るな、種子をまくなという、どことなく流れている空気に。太平洋戦争末期の状況を重ねて書いている。 
 
 また、山梨県富士吉田の六二歳の女性は、近所のおばあさんからかつて聞かされた「戦いを必ず女が一番早くつかむ。子を産むせいかな。どこともなく戦争の足音と臭いがしてくるんだ。その感性をおまえさんもみがいておくことだ。その時は、おれたちの時のように戦争に備える準備ではなく、やめさせる仕たくを早くすることだ。それが女の役割さ」と気を許したら、いつでもしのび込む戦争を防ぐことを伝えている。 
 
 人類にとって最も危険な戦争の臭いを早くキャッチする能力を、私もどこかで身につけてきたようだ。 


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