2015年12月18日00時38分掲載  無料記事
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福島から

福島県平和フォーラム・湯野川守事務局次長が語る「原発のない福島を! 県民大集会」の意義

<福島県の現状> 
 
 2015年11月現在、東日本大震災と福島第一原発事故による被災3県(福島県・宮城県・岩手県)の全避難者数のうち、福島県民は55%超を占める約10万4000人で、未だ多くの県民が、将来の見通しが立たない中、日々困難な生活を強いられている。 
 避難者の一刻も早い生活再建のためには、被害に対する損害賠償や行政支援が必要であるが、政府と福島県は今年6月、「福島第一原発事故避難区域のうち、居住制限区域及び避難指示解除準備区域の精神的損害賠償を2018年3月までとする」「避難指示区域外からの自主避難者に対する住宅無償支援を2017年3月までとする」などと賠償金や支援金の支給に期限を設定することを発表した。 
 これにより、居住制限区域及び避難指示解除準備区域の人口約5万4800人に対する損害賠償と、自主避難者約2万5000人に対する住宅無償支援が打ち切られるため、今後、避難生活への悪影響が懸念される。 
 
 また、福島第一原発事故の発生当時、18歳以下だった県内在住者と、事故後1年間に生まれた子どもを含む約38万人を対象に、福島県は「県民健康調査甲状腺検査」を実施しているが、同検査の結果、甲状腺がんと確定、あるいはその疑いがあると診断された者が公表されるなど福島県民の健康被害が顕在化しつつある。 
 
 福島県内には、福島第一、第二原発を合わせて計10基の原発が存在するが、このうち国・東京電力が廃炉を決定したのは福島第一原発6基のみで、福島第二原発4基については廃炉にするか否かを未だ決定していない。そういう中で、福島第一原発の廃炉作業には現在、1日につき約7千人の原発労働者が従事しているが、作業現場では放射能被曝とともに、過酷な労働による事故が度重なっており、廃炉作業の安全性と原発労働者の生命や健康への影響も懸念される。 
 
<「原発のない福島を!県民大集会」の意義とは> 
 
 福島第一原発事故によって生じた福島県内の様々な問題に対して、問題解決に取り組む「原発のない福島を!県民大集会実行委員会」(以下、福島大集会実行委員会)は、原発事故の翌年2012年から毎年3月に「原発廃炉」「放射能汚染による健康被害への保障」「原発事故に伴う損害賠償」を求めて福島県民大集会を開催している。これまでの集会には、作家の大江健三郎氏や落合恵子氏、ルポライターの鎌田慧氏ら著名人も出席した。 
 福島大集会実行委員会には、政党、地方自治体、労働組合、人権団体など党派や立場を超えた幅広い団体・個人が名を連ねており、まさに「オール福島」を体現した組織と言える。そして、第1回開催時から事務局として大集会の運営全般を担当しているのが「福島県平和フォーラム」だ。 
 福島大集会実行委員会は現在、原発事故から5年の節目を迎える2016年3月に向けて、5回目の福島県民大集会の準備に当たっているところであるが、そこで今回、福島県平和フォーラムの湯野川守事務局次長に来年の福島県民大集会の開催に向けた準備状況を聞いてみることにした。 
 
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――来年3月の福島県民大集会の準備状況はいかがでしょうか。 
 
(湯野川) 来年の県民大集会は、2016年3月12日に開成山陸上競技場(福島県郡山市)を会場として開催する予定です。会場が陸上競技場という屋外での開催なので、集会そのものは短時間でコンパクトに終わらせ、その後、デモ行進やシンポジウムを予定しています。 
 シンポジウムの詳細は現在検討中ですが、例えば、仝業廃炉問題、原発事故後の放射能被害に関する医療問題、J‥膰民の帰還問題、などをテーマに有識者の方々に議論してもらい、意見や提言をまとめていただくことを考えています。 
 来年の福島県民大集会は、福島第一原発事故から5年という節目になります。これまでの運動は、福島県内で原発問題に取り組む団体との連帯が中心であり、取り上げる問題も県内のことに集中していました。引き続き取り組むべきことは、これまで連帯してきた福島県内の運動団体と結束を強め、福島県が抱える原発事故等の問題が全国の問題なんだということを他県の人たちに向けて訴えていくことです。 
 ただ将来的には、原発問題に取り組んでいる他県の運動団体との連携を図っていくことも、運動を作る上での一つの方向性ではないかと考えています。そのために、例えば福島県・宮城県・岩手県の被災3県の運動団体が連携して情報交換の場を作ったら、原発問題に限らず福島県の置かれた現状を他県の方々に知ってもらうことにつながりますし、我々福島県民も他県の被災後の現状を知ることができ、お互いのことを理解し合うことになるのではないかと思います。そういった交流を通じて、お互いに信頼関係を築き、運動に対する協力関係が出来ていけば、今後の福島県民大集会において新たな内容を盛り込んだ訴えを提起できるのではないかと思います。 
 
――福島県民大集会において、福島大集会実行委員会が掲げる“訴え”について教えてください。 
 
(湯野川) 福島県民大集会において、我々が主張している訴えは大きく3つになります。 
 第1の訴えは、「福島県では原子力発電は将来にわたり行わず、福島県を再生可能エネルギーの研究・開発及び自律的な実施拠点とすること」です。 
 この訴えの前段部分は、要するに「福島第二原発の再稼働はあり得ない、廃炉にすべき」ということです。福島県では県議会のほか59全市町村が、県内10基の原発廃炉を求める意見書等を議決しており、国・東京電力に対して申し入れなども行っています。 
 しかし、国・東京電力ともに、現状では福島第二原発を廃炉にするかどうかを明言していません。そのため、関係者からは「これまでのような集会だけでいいのか」「もっと県民に対するアピールが必要ではないのか」という声が上がってきています。 
 このような状況に対して、福島大集会実行委員会では、これまで実施してきた復興庁の出先機関である福島復興局や東京電力福島復興本社への要請行動に止まらず、東京電力本社に出向いて直接要請行動を行うなど、新たな取り組みといったことを模索しているところです。 
 
 第2の訴えは、「放射能によって奪われた福島県の安全・安心を回復し、県民の健康、とりわけ子どもたちの健やかな成長を長期にわたって保障すること」です。 
 福島県では、福島第一原発事故当時18歳以下であった少年少女と原発事故後1年間に生まれた子どもを対象とした「県民健康調査甲状腺検査」が行われており、先日、2巡目検査の結果が公表されました。この検査結果において、甲状腺がんや甲状腺がんの疑いのある子どもが現れてきているという現実があります。同調査に関して助言等を行う有識者で構成する県民健康調査検討委員会は「現時点で放射線影響は考えにくい」との見解を示していますが、それをどのように判断するのかは学者の中でも意見が分かれています。 
 その他、福島県内では放射線量が下がってきている地域があることから、住民帰還すべきなのではないかという意見があるものの、ホットスポットが点在していることやインフラ整備が十分ではないこと、精神的不安が解消されていないことなどの理由から、帰還しない、帰還できないという県民が多数に上っています。 
 
 第3の訴えである「原発事故に伴う被害への賠償、および被災者の生活再建支援を、国と東京電力の責任において完全実施すること」は、第2の訴えとも関係しますが、国は今年に入って帰還区域の見直しを行うとともに、福島県民に対する賠償を2018年3月で打ち切るとの方針を決定しています。 
 さらに、福島県はこれまで自主避難者に対して住宅の無償支援を行ってきましたが、これも2017年3月をもって打ち切るとしています。県当局は「自主避難者が全国に散らばっていることによって、かえって風評被害を加速させている」としており、何とか県民を帰還させようとしているのです。 
 しかし、故郷への強制的で画一的な帰還を促すということには疑問を感じます。帰還促進のために住宅無償支援を打ち切るというのであれば、自主避難者には居住の自由があり、どこに居住するかに関して国や県の方針に従う必要はない訳ですし、それが権利として認められていることは言うまでもありません。国や県にはそれを踏まえた帰還事業への対応をしてもらいたいと思います。 
こうした3つの訴えは、福島県民1人1人からコンセンサスを得ることのできる最大公約数というものをどこに求めるかを考えた上で、その内容を決めています。 
 
 集会を始めた当初は、とにかく“原発をなくせ”という一点での勢いがあり、それが強い求心力として働いていたところがありました。ただ、4年余りの歳月の経過とともに、福島県民の置かれている立場、住んでいる地域など、一人一人が抱える様々な事情によって、それぞれの考え方も異なってきています。そういう状況の変化に対し、今後の福島県民大集会における訴えのポイントをどこに置くか、コンセンサスをどうすべきかは、課題の1つではないかと考えています。 
 
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 国は、福島県に対して原発事故の収束作業を含む様々な復興事業を投じているものの、必ずしも福島県民が望む結果をもたらしているとは言い難い。湯野川事務局次長が指摘するように、福島県の復興の道のりが、いかに厳しい状況であるかを感じている。(館山守) 


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