2017年08月17日23時31分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201708172331154

東日本大震災

ヒートアップする仙台港

【仙台パワーステーション試運転開始】 
 関西電力の子会社・仙台パワーステーション(以下、仙台PS)が仙台港に石炭火力発電所(11.2万KWh)を建設し、6月12日から試運転、7月26日から石炭を投入し、8月7日には100%定格出力となり、10月から予定通り本稼働に入ろうとしています。 
 右写真は、8月5日に対岸のフェリー埠頭から撮影したものです。どんよりとした空に、灰色の煤煙が吐き出され、周囲の空を薄暗く染めていました。大気汚染が現実味を帯びてきました。 
 現在、四国電力も向かいの高松埠頭にバイオマス混焼の石炭火力発電所(11.2万KWh)の建設計画を申請し、再エネを売りにするレノバ社も隣接する北蒲生にバイオマス発電所(7.5万KWh)の建設計画を申請しています。この2社がそのまま認可されれば、3年後には仙台港周辺にさらに2本、このような巨大煙突が林立し、20年以上煙を出し続け、空を汚すことになります。先行して煙を出し始めた仙台PSは、アセス基準(11.25万KW)をすりぬけ、住民からの説明要求を無視したまま2年前から建設を強行しました。 
 この企業姿勢を問題視した住民グループは、昨年9月に「仙台港の石炭火力建設問題を考える会」(以下、考える会)を結成し、学習会や企業や議会への働きかけを行ってきました。私は地域在住の医療関係者として会に参加しています。 
 県議会でもその企業姿勢が問題となり、仙台PSはその指導を受ける形で、3月4日夢メッセで‘しぶしぶ’住民説明会を開催しました。 
 会場で、なぜ「仙台港で石炭火力なのか?」の問いに、彼らは「^族舛嚢い更地がある、⇒∩に便利な大型の港に面している、A電網の空きがある」と恥じ入ることもなく立地選定理由を話しました。 
 更地は宮城を襲った津波の結果であり、送電網の空きは原発事故と停止によるものです。震災で多くの人命が失われ、その悲しみを抱きつつ周辺住民がそこから未来に向かって立ち上がろうとしていることなど彼らの眼中になく、目先の利益を求める企業の論理しかありませんでした。 
 
【急速に広がった反対署名運動】 
 「利益は関西に、電力は首都圏に、汚染とリスクは宮城に」これは、原発と同じ構図です。このことを知った住民は、当初の疑問や不安から、「怒り」へと変わりました。 
 考える会の提起した「杜の都を石炭の都にするな」の声は、急速にひろがり、4月から開始した署名は、5月末で22,000筆を超え、さらに7月初めには40,000筆を超えました。県と関連自治体、そして仙台パワーステーションに、5月末に一次集約文として22,000筆を住民の声として提出しました。 
 しかし、仙台PS側は、手続き上違法性はないことを理由に、住民の声を一顧だにしないで、予定通り10月の営業運転に向かって突き進んでいます。許可した仙台市や宮城県も住民とのコミュニケーションの勧めや遺憾の意を表明する程度で、法的な限界を理由に仙台PSへの強制力は行使していません。 
 
【世界的流れに逆行する石炭火力発電】 
 石炭火力発電は、大気汚染・環境汚染の代表格であり、地球温暖化の元凶でパリ協定にも反します。先進諸国では新設はほとんどなく、お隣の中国ですら規制に入っています。 
 しかし日本では国際的な流れに逆行し、異常な石炭火力建設(48基)が進められています。背景に、利益優先の電力会社の思惑と2030年度ベースロード電源として石炭火力26%とする政府の方針があります。 
 内外からの批判の中で、政権内でも経産省と環境省の意見の対立も生じています。兵庫や千葉、大船渡などで住民の批判を前に見直しが迫られています。 
 私は医療の立場から、SOx、NOx、Ox、PM2.5などの大気汚染による健康被害を懸念しています。蒲生地域の方々は、津波による破壊から奇跡的に復活した蒲生干潟の生態系への影響も心配しています。漁業関係者からも、海水汚染や温暖化について不安の声があがっています。 
 7月の仙台市長選挙では、仙台PSも争点の一つに浮上しました。この問題を「新健康都市宣言」として政策化した郡和子氏が当選し、郡氏は「仙台PSには自主アセスを行わせ、問題があれば操業を停止する」と明言しました。 
 考える会は、住民の声を無視して、稼働に突き進む仙台PSに対して、周辺の地域住民を中心に原告団50名以上を組織し、本稼働に踏み切る9月末〜10月上旬に、地裁に「差し止め訴訟」を起こすことを呼びかけています。私は、一住民として、医療関係者として、モラルハザードに陥った仙台PSを許せない気持ちで原告の一人に加わります。訴訟では「人格権」への仙台PSによる侵害を柱に据えます。健康被害については、6ページの河北新報「持論時論」を参照ください。 
 
【自然との共生、安心できる生活環境実現へ】 
 村井県政の「創造的復興」の諸政策は、トヨタに象徴される企業誘致=宮城県の発展という思考の「富県宮城構想」を根幹に据えています。 
 仙台PSのHPの最初に、「富県宮城の実現」に寄与すると書かれています。仙台PSや後続の2社は、利益を求めて火力発電所の有利な立地条件を求め、県や市は震災跡地を提供する形で政策的にそれに迎合したという背景があります。その意味では典型的な災害便乗型事業(ショックドクトリン)と言えます。 
 今回の提訴は、無謀な仙台PSの操業を止めさせることが第一義的目的ですが、市や県の震災復興事業の在り方を問い、石炭に依存する国のエネルギー政策を問うという大きな意図もあります。 
 発電は膨大な廃熱を伴います。原発はエネルギーの70%、石炭火力やバイオナス発電は50〜70%のエネルギーを熱として外に捨てます。仙台港で3つの火力発電所が稼働すれば、総発電量相当以上、約30万KWh の熱が放出されます。試算すると、2日間で東京ドーム1杯分(124万㎥)の熱湯が仙台港周辺にばらまかれることになります。大気汚染だけでなく仙台港周辺が廃熱でヒートアップします。そして、同時に地域住民は仙台PSへの「怒りで」ヒートアップしています。 
 エネルギーの浪費につながるこのようなヒートアップを、何とか収拾し、省エネや再エネへのシフトと自然との共生、安心できる生活環境を実現するような震災復興を目指したいと思います。(寄稿:県民センター水戸部秀利世話人) 
〔みやぎ県民センター ニュースレター49号(2017年8月15日発行)より〕 
 
※ 詳細は以下のリンクからご覧ください。http://www.miyagikenmin-fukkoushien.com/pdf/news/news-49.pdf 
 
       ★       ★       ★ 
 
<被災者の医療・介護 電話相談受付(東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター)> 
 お困りのこと、誰に相談していいかわからないことなど、被災者の医療・介護についてご遠慮なくご相談ください。 
電 話:022−399−6907 
Fax:022−399−6925 
受付時間:10〜16時(平日のみの受付です) 
 
       ★       ★       ★ 
 
発行:東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター 
(住 所)〒980−0804 宮城県仙台市青葉区大町2丁目5−10−305 
(TEL)022−399−6907 
(FAX)022−399−6925 
(E−mail)miyagi.kenmincenter@gmail.com 
(Web)http://www.miyagikenmin-fukkoushien.com 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。