2004年04月07日01時20分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200404070120373

ルワンダ虐殺の二の舞いの恐れ スーダン西部で民族浄化作戦

 【東京7日=鳥居英晴】イラクに世界の目が奪われている中、国連当局者が「最悪の人道上の危機」「組織的な民族浄化作戦」と呼ぶ事態がスーダン西部で起きている。このままでは、大量の餓死者がでる恐れがあり、十年前に起きたルワンダ虐殺の二の舞になると人権団体は警告している。国連安保理が紛争当事者に即時停戦を呼びかけたのは、紛争が始まって14ヶ月もたってから。国際社会の反応は鈍い。 
 
 紛争が起きているのはチャドに接する西部地域ダルフール。政府軍とアラブ系民兵による組織的な焦土作戦により、人権団体の推計では、100万人の非アラブ系住民が家を失い、難民となっている。 
 
 アフリカ最大の国スーダンではでは、20年以上にわたり、北部のイスラム原理主義を掲げる中央政権とキリスト教徒を中心とする南部の反政府勢力が内戦を続けてきたが、和平合意が最終的な局面に入っている。ダルフールでの事態は、こうした動きと無関係ではない。 
 
 ダルフールはフランスほどの広さ。700万人が住む。住民はアラブ系の遊牧民と農業を営む非アラブ系の住民に大別される。両者は、宗教は同じイスラム教であるものの、土地と放牧権をめぐり、もともと緊張関係にあった。 
 
 ニューヨークに本部がある人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、ハルツームの中央政権は、反政府勢力の母体となっている非アラブ系の住民を町や村から強制的に追い立てており、政府軍は無差別に一般住民を爆撃している。2万人のアラブ系住民に武器を与えて、住民を攻撃させている。 
 
 HRWによると、政府軍とアラブ系民兵は一緒になって村々を破壊し、これまでに数千人が殺害された。レイプ、子供の誘拐、家畜の略奪も頻発している。国連の推計では、これまでに75万人が家を失って国内難民となり、別の11万人がチャドに難民となって逃れた。 
 
 「民兵は殺人を犯すだけでなく、何万という家族の生活基盤を破壊している。こうした行為が停止され、人道的な救援が受けられないと、数ヶ月のうちに飢餓に直面する」とHRWは警告している。 
 
 イーグランド国連救援担当官によると、焦土作戦で学校。井戸、食糧施設が破壊され、町や村全体が住めなくなっている。紛争地域への国連の立ち入りをスーダン政府が制限しているため、詳しいことは把握できていない。スーダン政府はこうした事態を否定している。 
 
 ダルフールの非アラブ系の反政府勢力である「スーダン解放軍(SLA)」と「正義と平等運動(JEM)」はスーダン政府と和平交渉を3月30日から、チャドの首都ヌジャメナで始めたが、反政府勢力側の国際監視団の設置要求をめぐり、こう着状態になっている。 
 
 紛争は昨年初め、SLAとJEMが政府の軍事施設を攻撃したことから始まった。ダルフール地域が長年、経済、政治的に見過ごされてきたことに抗議するものであり、政府に支援されたアラブ系民兵が20年来続けている住民への攻撃に対する反撃でもあった。 
 
 非アラブ系の反政府勢力は、中央政府と南部の反政府勢力との間で合意に達しつつある和平合意に関与できず、石油収入や権力の配分などの交渉に取り残されていることにも懸念を抱いた。 
 
 1983年にイスラム法を導入した中央政府はキリスト教勢力を中心とした南部の「スーダン人民解放軍(SPLA)」との間で内戦に突入、20年にわたる戦乱と飢餓で200万人が死んだとされる。 
 
 米国の圧力のもと、両者はケニヤで和平交渉を続け、大筋で和平合意に達した。その内容は、�‘酩瑤郎8紕暁�間の自治の後に、南部の地位について住民投票を行う��富の配分については、産出する石油の収入を北部と南部で均等に分ける、というもの。大統領の権限など権力の配分については、今後に詰めを残している。 
 
 米国は1993年以来、イスラム系テロリストをかくまっているなどを理由に、スーダンをテロ支援国家のリストに載せ、経済制裁も続けてきた。1998年には、東アフリカの米大使館爆破事件の報復として、米国はハルツームに巡航ミサイルを打ち込んだ。 
 
 米国はブッシュ政権になってから、それまでのスーダン孤立化政策を転換、最終和平合意が成立すれば、テロ支援国家のリストから除外するとしている。ブッシュ大統領は3月、バシル大統領とSPLAのガラン最高司令官に直接電話し、和平合意に達するよう要請した。 
 
 米国がスーダンの和平合意達成に積極的に関与している背景には、石油がある。ブッシュ政権は、アフリカの油田を戦略的な国益と位置付けている。 
 
 経済制裁を受けスーダンが国際的に孤立している間に、中国は初の海外大型油田を開発するなど積極的に投資しているが、欧米企業は出遅れている。 
 
 政府軍が、ダルフールで大攻勢を開始したのはSPLAと石油収入の配分について協定に調印した直後で、新たな交渉が再開される前の今年1月。「国際社会が政府に圧力を掛ける時間がないような電光石火のスピード」(HRW)で反政府勢力を鎮圧しようとした。 
 
 スーダン政府には、南部勢力との和平合意成立を期待している国際社会は、交渉に悪影響を与えるような反応を起こさないであろうという読みがあった(ブリュッセルに本部のある独立系シンクタンク「インターナショナル・クライシス・グループ」の報告)。 
 
 一方、ダルフール地域の緊迫化が、ハルツームでの権力闘争に波及しそうな様相を帯びてきた。治安警察は3月末、政府転覆を企てたという嫌疑で、野党人民国民会議(PNC)のトラビ党首と党員、軍人を逮捕した。トラビ側は、嫌疑をでっち上げと否定している。 
 
 イスラム原理主義政府の理論家であったトラビとバシルは盟友であったが、権力争いから、バシルは1999年、国家非常事態を宣言、トラビが議長を務めていた議会を解散させた。 
 
 2001年2月、PNCとSPLAがジュネーブで内戦終結の覚書に調印すると、政府はトラビを逮捕。昨年10月に釈放したばかりだった。 
 
 政府は、PNCがダルフールの反政府勢力のひとつであるJEMに資金援助をしていると主張している。ロイター電が軍高官の話として伝えたところによると、逮捕された軍人11人は調べに対して、政府転覆計画はJEMが資金を提供したと供述しているという。 
 
 バシル大統領は5日、演説で事件に触れ、「われわれがダルフールでの紛争を解決するよう努力している際に、ある一派はこれに反対して、ダルフールで戦闘を激化させようとしている」と述べ、PNCを非難した。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。