2004年06月01日11時45分掲載  無料記事
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天安門支援市民デモ 返還後最大の参加者 

【香港1日=富柏村】89年6月の天安門事件支援をきっかけに香港で毎年行われている「愛国民主大遊行」の市民デモが30日行われ、主催者側発表で5600人が参加した。(警察側発表は3000人、以下主催者側発表の参加者数)。この参加人数は昨年の参加者2500人から2倍以上の増加で、15周年ということと香港での言論の自由への圧力などに対する不満の高まりも影響したとみられる。 
 
 香港市民支援愛国民主運動連合会(支連会)が主催する市民デモは、初回の90年に1万人が参加した。その後、参加者は95年には2000人台まで減っていたが、97年には7月の香港の中国への返還を控え、7000人まで増えた。今年はこの7000人に次ぐ、返還後では最も多い参加者を記録した。 
 
 今回のデモ開催にあたっては、スタート会場となるビクトリア公園の借用をめぐり、保険の問題が浮上した。公園管理者側(政府)が、使用する団体に対して第三者賠責保険への加入を借用許可の条件とした。しかし、支連会に対して、香港の主要な保険会社は、デモはリスクが大きいとして保険を拒んだ。すでに10年以上の経験があり、平和的な市民参加型のデモで危険のリスクが大きいとは思えず、反政府的な活動を間接的に支援しているととられたくないという保険会社の姿勢をうかがわせた。 
 
 この保険加入ができないと、公園管理者側は最終的に公園使用許可を出さなくなることから、香港特区立法会でもこの問題が取上げられ、最終的に開催の4日前に、保険会社を代表して、立法会の職業別選出枠で保険業界から出ている議員が自分の会社で支連会の保険加入を受け入れることで決着し、開催にこぎつけた。 
 
 デモは午後3時にビクトリア公園を出発。香港島のメインストリートであるヘネシーロードのうち片側3車線を通行止めにして平和的に進んだ。機動隊が出るわけでもなく、警察が交通整理にあたる程度。約2時間半かけてデモ隊は約4キロ離れたセントラルの政府総部まで到着。総部前で抗議のシュプレヒコールをあげてデモは解散した。 
 
 香港では、これから「暑い夏」が続く。7月4日に予定されているデモは、昨年7月1日に50万人が参加した国家保安法立法反対と董建華行政長官への不信任表明のデモに続くもの。31日に発表された香港大学の世論調査センターによる調査によると、約1000人の調査対象者のうち13.4%が今年も参加すると答えており、係数など考慮すると最高で33万人の参加が見込まれると発表した。このデモを経て9月の立法会選挙を迎える。 
 
 立法会選挙について、同センターの調査では、政党支持率では民主派が32.1%、中道が29.6%と合計で6割を占め、与党・親中派への支持は4.6%に留まっている。民主派がどこまで得票を伸ばすか、保守親中派の巻き返しが可能なのか、香港市民の香港の自治と民主に対する姿勢がこの選挙で明らかになる。 
 
 しかし、現行の選挙制度では市民の直接選挙枠のほか職種・業界別枠があり、ここが保守派・親中派の安定した票田となっており、議会では与野党伯仲に近くなる。董長官にとっては4割を下回る低い支持率と議会での野党民主派の勢いに、厳しい政治運営が続くことは明らか。董長官はもっても来年までで辞任という観測が海外のマスコミを中心に流れており、不安定な政治状況が続きそうだ。 


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