2005年01月23日22時45分掲載  無料記事
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「奥の細道は日本人の人生の象徴」 李前総統が再訪日に重ねて意欲

【台北23日=ベリタ通信】台湾の李登輝前総統は23日付の台湾英語紙、台北タイムズとのインタビューで、陳水扁総統が残りの任期中に内政問題で大きな業績を残せないと、次期2008年の総統選挙では、「台湾優先」を掲げる民進党などの候補の当選は危ういとの見方を示した。また、次回の訪日については、「日本人の人生に対する態度を象徴している奥の細道を訪れたい」と重ねて意欲を見せた。 
 
 台湾政界では2月の旧正月を前に24日にも、昨年12月の立法委員(国会議員)選挙で過半数を取れなかった民進党の現内閣が総辞職し、新しい行政院長(首相)を選定することが決まっている。政権基盤の強化のため、民進党と野党の親民党の合作も報じられている。 
 
 こうした中で李氏は「もし陳総統が残りの任期3年半の間に政治的に死に体になれば、陳政権は2期8年間、内政に関しては何もできなかったと、台湾人は不満に思うであろうことを検討する必要がある」とした上で、「かりにそうなれば、“台湾優先”の政権の継続にも関係し、2008年の総統選挙では(そういう候補が当選できるか)危ない」と警告した。 
 
 李氏は宿敵でもある宋楚瑜氏が率いる親民党と民進党の協力については理解を示しているが、「行政院長の職を親民党に与えることは無責任だ」とけん制した。 
 
 台湾の最大の庇護者であるアメリカとの関係について李氏は、米台間にある多くのチャンネルを通して関係を育てることができるとして、政府間同士の関係に加え、シンクタンクや米議会の議員グループとの関係強化を提言している。  
 
 「意思の疎通が重要だ。そうしていれば、アメリカ政府に『台湾側は何も言ってこない』という印象を残すこともないし、憶測ばかりさせることもない」  
 
 一方、中国が制定を検討している「反分裂法」について李氏は、その目的は「台湾人を脅かす」ことにあり、「台湾人に独立を語らせない」ための法律だと語った。これまでのところ、同法の中身は分からないが、李氏は「台湾は自国の一部であるとする中国の主張を受け入れている国々に同法を売りつけて、成立後には台湾独立支持者を中国政府が捕まえるときには助けなければいけないと言うつもりなのだ」と批判した。 
 
 さらに李氏は「常に台湾が中国の行動や言動に対応するために動く必要はない」と話した。  
 
 また1949年に国民党が台湾に撤退して以来、初めて実現することになった、旧正月前後の中台間の直通チャーター便については、「香港(上空)を通過する航空便では(中国の)国内線のようなものだ」として、「日本を経由したほうがよかったのでは」と述べた。 
 
 中台間の直通便については、中国は国内線扱いを主張する一方、台湾は(台湾海峡の)両岸線というあいまいな名称で将来の国際路線化を望んでいる。今年のチャーター便は、中台直通になったものの、香港の管制空域を通過することになった。台湾側は韓国や沖縄の管制空域の通過を主張していたが中国側に押し切られた。 
 
 最後に、最近日本を訪れたばかりの李氏は、松尾芭蕉の奥の細道を訪問することに重ねて熱意を示した。 
 
 「もしある人が、武士道こそ日本をかつて治めた侍たちの伝統的な価値観だというのなら、日本人の人生に対する態度を象徴しているのは奥の細道に間違いない」  
 
 奥の細道をたどる途中にはたくさんの寺院があり、僧侶たちが俳句を詠んだという李氏は、「もし健康が許せば将来、本当にこうした寺院を訪れたい」と再度の訪日を訴えた。 
 
オリジナル記事:http://www.taipeitimes.com/News/front/archives/2005/01/23/2003220565 


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