2005年03月26日18時02分掲載  無料記事
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圧倒する中国の需要 新しい経済モデルが必要 ブラウン所長が警告

 ワールド・ウォッチ研究所の創設者でもあるブラウン所長は、今月初めに発表した「中国からの教訓:なぜ西側経済モデルは世界のために機能しないのか」と題する報告で、中国が教えていることは、化石燃料に頼った経済モデルではなく、再生可能なエネルギー源を利用した新しい経済モデルが必要であると力説している。 
 
 中国の現在の一人当たりの国民所得は年5300ドルと推定されている。これは米国の3万8000ドルの14%に過ぎない。中国経済は1978年以来、年9.5%で成長しているが、今後、年8%で成長するとすると、2031年には、人口が14億5千万人に増えている中国の一人当たりの国民所得は、現在の米国の一人当たりの国民所得に追いつく。年6%なら2040年になる。 
 
 こうした所得の増加を、米国人のほとんどが現在、享受しているライフスタイルに置き換えると、中国の需要は地球が提供できるものを圧倒する。 
 
 急成長する経済をまかなうための中国の原材料の需要は過去数ヶ月、ますます高まってきた、胡錦涛主席率いる代表団を含む貿易代表団が続けざまにラテンアメリカを訪問、農業から鉱山にいたるまで長期的な供給契約を結んだ。 
 
 11月の12日間、4カ国の訪問で胡主席は、原材料の輸出を促進するため、ラテンアメリカで基礎産業とインフラへの300億ドル以上の中国の投資を発表した。 
 
 ブラウン所長によると、産業経済での5つの基本的商品、穀物、肉、石炭・石油、鉄で、すでに石油を除いて、中国は世界最大の消費国として米国に取って代った。 
 
 「今や問題は、もしこうした資源の一人当たりの消費が現在の米国のレベルに達した時はどうなるのかということである」 
 
 ブラウン所長によると、8%成長で中国の消費習慣が今日の米国に似たものになると仮定すると、一人当たりの穀物の消費は現在の291キログラムから、米国式の食事のために935キログラムになる。 
 
 これは中国の全穀物消費が2004年に3億8200万トンに過ぎなかったものが2031年には13億5200万トンに達することを意味し、2004年の世界の穀物生産量20億トンの3分の2に等しい。 
 
 「現在の世界の耕作地の生産性をさらに上げることには限界があることから、中国での消費のために10億トンの穀物をさらに生産するためには、ブラジルに残った熱帯雨林の広大な部分を穀物生産のために変えなければならなくなる」とブラウン所長は指摘する。中国の一人当たりの肉の消費が現在の米国のレベルに上がっただけでも、現在の世界の肉の生産の8割は中国で消費されることになる。 
 
 エネルギーについては、もっと驚くべき数字がある。2031年までに中国の石油使用が今日の米国と同じ率になると、1日に9900万バレルの石油が必要になるが、これは全世界で現在、1日に生産される量よりさらに2000万バレル多い。 
 
 同様に、もし中国の石炭の消費が現在の米国の水準である年一人当たり2トンに達すると、中国は2031年までに年28億トンの石炭を使うことになる。これは現在の世界の生産量25億トンを上回る。 
 
 中国で燃やす化石燃料から出る二酸化炭素の量は、世界全体で今日、排出される二酸化炭素の量に匹敵することになる。気候変動は手におえない状況に陥り、食料の確保が脅かされ、海岸地帯の都市は水に浸かる。 
 
 もし中国での一人当たりの鉄の生産が米国の水準に達すると、中国の全体の鉄の使用は2031年までに西側世界全体が現在消費している以上になる。 
 
 もし中国が現在の米国での自動車保有台数(4人に3台)の水準に達すると、2031年までに中国だけで自動車保有台数は11億台になる。現在、世界全体の自動車保有台数は7億9500万台である。 
 
 ブラウン所長は「そうした自動車のために道路、高速道路、駐車場のために舗装される土地は、中国で現在、稲作に使われている面積に近づく」と言う。自動車所有者と農民の間の耕作可能な土地をめぐる争いは激しくなると予測される。 
 
 同様に、もし中国が現在の米国の紙製品の消費をするなら、2031年には全世界で生産される紙の量の2倍近くが必要になる。 
 
 ブラウン所長は、この予測の趣旨は、中国がたくさん消費すると非難するためではなく、人口大国が急速に経済成長をしている時に何が起きるかを知るためであるという。化石燃料、自動車、使い捨てを中心にした西側経済モデルは、十分な資源がないということからして、中国については機能しないとブラウン所長は言う。 
 
 「もし西側経済モデルが中国で機能しないのなら、経済が年7%で成長し、2030年には人口で中国を超すインドにも機能しない」 
 
 「多分、最も重要なことは、すべての国が同じ減少しつつある資源をめぐって競争しているますます統合されつつある世界経済で、現在豊かな産業社会に暮らしている12億人にとっても、機能しなくなるということである」とブラウン所長は警告する。 
 
「これまで通りというのは、もはや実行可能な選択ではない。石油、穀物、原材料の不足からくる政治的紛争、社会秩序の混乱を招く前に、早急に別の対策を立てなくてはならない」 
 
http://www.earth-policy.org/Updates/2005/Update46.htm 


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