2005年05月19日21時37分掲載  無料記事
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今なお「新聞王国」のマレーシア 部数、広告収入とも絶好調

 【クアラルンプール19日=和田等】インターネットの普及や電波媒体の人気に押されて世界的に新聞離れが加速しているが、マレーシアではまだまだ新聞が「元気」だ。多民族・多言語国ゆえ、新聞売りスタンドや雑貨店の店頭に並ぶ新聞もマレー語、英語、中国語、タミール語と多彩だが、本紙とは別に特集、地域情報やイベント情報、経済情報、文化・芸能情報を専門に載せた別刷りのセットを折り込んで、総ページ数が100〜150ページに達する新聞もある。 
 
 カラー印刷もふんだんに使い、まるで雑誌並み。これで1.2リンギット(35円弱)前後だから実に「お得な情報源」だ。新聞1部の値段は缶ジュース1本よりやや安い。これだけ新聞が充実していることもあってマレーシアでは雑誌を読んでいる人をほとんど見かけないといってもいいほど。 
 
 新聞がこうした「豪華絢爛さ」を保てるのも購読部数と広告収入が堅調さを保っているからだ。調査会社ACニールセンがさきごろ発表したメディア指数調査によれば、マレーシアの主要紙は軒並み購読部数を増やすか、悪くてもほぼ現状を維持している。 
 
 たとえば、2004年1〜12月期の平均購読部数を2003年10月〜04年9月期の平均購読部数と比較してみると、マレー語紙の「ハリアン・メトロ」は4.9%増の121万8000部、同「ベリタ・ハリアン」が1.2%増の147万3000部、マレー語紙トップの「ウトゥサン・マレーシア」が微増ながら0.3%増の151万部と、それぞれ購読部数増を達成。 
 
 英字紙では、トップの「ザ・スター」が6.1%増の110万9000部、「マレー・メール」が23.4%増の13万2000部、無料英字紙の「サン」が4.8%増の17万3000部、政府系の老舗英字紙「ニュー・ストレーツ・タイムズ」は0.3%マイナスの32万2000部となったものの、日曜版の「ニュー・サンデー・タイムズ」は7.4%増の30万3000部となり、それぞれ部数を伸ばした。 
 
 華字紙をみると、トップの「星洲日報」が0.9%増の110万9000部、「中国報」が1.5%増の74万1000部と、ともに部数増を達成。タミール字紙では、「ナンバン」が2%増の24万7000部、「タミール・ネサン」が2.9%増の14万4000部と、こちらも部数を伸ばしている。 
 
 ちなみに、マレーシア(総人口2570万人)の民族別人口構成比はマレー人が60%強、華人が25%、インド人が7%で、残りはその他の民族となっている。 
 
▽広告費の大半占める新聞 
 
 広告収入の面でも新聞は好調だ。ニールセン・メディア・リサーチ・マレーシアによれば、2004年に活字媒体や電波媒体などに対する広告支出の総額は2003年比で17%増となる44億リンギット強(1230億円強)に達した。広告支出総額が2桁の伸びを記録したのは2000年以降では初めて。なお、この広告支出には、有料テレビ局「アストロ」やウェブサイトなど「新興メディア」に対する広告支出は含まれていない。 
 
 04年の広告支出のうち、最大の支出先となったのが新聞で全体の60.5%を占めた。新聞に対する広告支出は前年比でも13%伸びた。次いでテレビの構成比が29.4%、ラジオが3.8%、雑誌が3.7%となっている。 
 
 マレーシアで「旧来型メディア」の中で新聞が「強さ」を保っている一因として、これまで政府系2局、民放2局とテレビ局の数が少なく情報の選択肢が限られていることをあげる向きもあったが、昨年には民放テレビ局2局が新規参入。今後、新聞の広告シェアを食っていく恐れも出てきた。実際、04年のテレビに対する広告支出は、新聞の伸び(13%)を大きく上回る前年比30%増を記録した。また、テレビの多様化によって新聞離れが始まる可能性もある。 
 
 しかし、広告収入の面では今のところ新聞は安泰だ。前年同期比5%増となった今年第1四半期の広告支出においても、新聞はシェア62%をキープ、テレビは28%、ラジオが4%、雑誌が4%、その他が2%と、昨年の状況と大きな変動はない。 


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