2005年06月15日11時14分掲載  無料記事
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根津教諭の「君が代」拒否

君が代起立にNO! 根津教諭の「停職『出勤』報告」(1)

 入学式で君が代斉唱のとき起立しなかったとして、東京都教育委員会から5月27日に一ヶ月の停職処分を受けた根津公子教諭(54)=立川二中=は、停職後連日のように勤め先の校門前に出向いて不当処分の取り消しを訴えながら、生徒や道行く人たちとこの問題について話し合っている。同教諭が関係者に送っている「停職『出勤』報告」を読み、みんなで彼女の問題提起を考えてみたい。(ベリタ通信) 
 
皆様 
 
根津公子です。今日の報告です。転送可です。 
 
 5月31日停職「出勤」第1日目。朝職員室に行き、私の気持ちを書いた手紙を同僚たちの机上に配り、職員打ち合わせの時に発言をした。その後校長が「学校の敷地内からは出て行ってもらわなくては困る」と言う。「私は悪いことはしていない。仕事をしたい。処分は不当。だから、出て行く気持ちはまったくない」 
と告げ、しかし、意に反して校門外に出ることにした。 
 
 カレンダーの裏に「『君が代』斉唱で起立しないからと、1月停職処分! 私が起立しなかったことで迷惑を受けた人はいますか? 私はまちがっていると思うことには、命令でもしたがえないのです」と書き、プラカードにして座っていた。下校時刻までは行きかう人と話したりし、それはそれで面白かった。 
 
 3時40分ころから下校が始まった。生徒はなぜ、私が校門外にいるかにわかには理解できず、訊いてくる。ひとしきり話をして1グループが引き上げると、途切れることなく、次のグループがやってくる。5時過ぎまで途切れることなく、にわか仕立ての意見交流会となった。 
 
 「石原知事からひどいことをされても、正しいことをする先生を尊敬します。私もそう生きたい」なんて、言ってくれる生徒までいて、とってもエネルギーをもらった。私の受けた停職処分が、生徒たちが考えるきっかけになってくれればいいなと漠然と思っていたけれど、十分受け止めてもらえて、最高!! とっても充実した1日でした。 
 
 
 
根津公子です。 
停職「出勤」報告2 
 
 「処分を取り消し、学校に戻せ!」と要求し校門前に立って今日で4日が経ちました。道行く人がいろいろに声をかけていきます。ご近所にお住まいというお年寄りの女性2人と男性1人とは親しくなりました。この3人の方たちどなたもが、「戦争中のものの言えない時代に戻るようで本当に恐ろしい」とおっしゃいます。お一人は、全身から水分が蒸散していくほど日差しの強かった1日にジュースを差し入れてくださいました。とってもおいしく、小さい水筒の用意しかなかった時だったので、救われました。翌日からは大きな水筒を持参しています。 
 
 はじめは生徒たちのかなりが下校時に、「なぜ立たないと処分なの?」「誰が処分をしたの?」「生活どうするの?」「君が代って天皇の歌なんでしょ?」等々、質問してきました。そして昨日今日辺りは、「体大丈夫?」と気にしてくれたりしています。「先生がんばって!」と毎日行ってくれる生徒もたくさんいます。 
 
 新聞をよく読むというある生徒は、「大勢の先生たちが君が代に反対の考えを持っているのに、実際に行動に移す先生はなかなかいない。だから先生は偉い」と言ってくれました。とっても勇気づけられています。生徒から与えられる力は百人力です。 
 
 また、「なぜそんなに抵抗するんだろう?」「何で立てないの?」と不思議いっぱいの生徒もいるでしょうね。なぜ?を大きく膨らませ、今の社会を、人の生き方を考える一つの材料にしていってくれたら、と思います。 
 
 よく日本人は、「指示待ち人間」「自分の意見を言わない」などと評されますが、子どものときに情報から遠ざけられ、考える機会を奪われていて、大人になって意見を求められても、できるものではないと思います。個人の意思決定を大事にする国では、家庭教育、学校教育段階で子どもたちに、政治的・社会的問題を当たり前に投げかけている点、大いに学びたいですね。 
 
 お一人から、「子どもを刺激するな」という苦情をいただきました。処罰された一教員が校門前に立っていることで、生徒たちは動揺などしないと思います。私は、泣き寝入りせずに、私に起きた社会問題を明らかにしただけのことです。それは憲法で保障された行為だと思います。でも、苦情をお持ちの方ともぜひ意見交換をしたいと思っています。 
 
 私は生徒たちからエネルギーをもらい、とっても元気です。 
 
 
停職「出勤」報告3 
皆様 
根津公子です。 
 
 昨日で2週間が経ちました。帽子も日傘も使っているのにしっかり日焼けし、夏のバカンスが終わったような色をしています。生徒にまで、「歳なんだから、気をつけてよ」と言われていますが、元気ですので、ご心配なく。こんな時、頑強な体でよかった!と感謝します。昨日は雨模様。「先生、雨大丈夫?」と気遣い声をかけてくれる生徒の優しさに励まされました。 
 
 9日は立川市役所入り口でハンドマイクを持って訴えをし、友人に手伝ってもらってチラシを撒きました。外でマイクを持ったのは、私には初体験のこと。不安でしたが、立川市庁舎、とりわけ市教育委員会で働く人たちに聞いてほしいという強い思いから、話すことは次から次に出てきました。「応援します」「頑張ってください」と声をかけてくださる職員の方が何人もいました。きっと、教育委員会の職員の方の中にも、都教委に追随した市教委の教育行政をおかしい!と感じている方はかなりいらっしゃるんでしょうね。 
 
 「都教委がやっていることは個人的には問題を感じている」。これは、近隣の市教委の役職にある人が市民との話し合いの場で漏らしたということばですが、役職にあるなしに関わらず、このようなことばを教育行政に携わる人から聞くことが最近はかなりあります。教員たちも、職員会議では発言しないけれど、個人的には問題を感じていることはわかります。数年前あるいは10年前まで教員は、職員会議で激しく議論してきたのですから。 
 
 ことは酷くなる一方なのですから、教育行政、教育現場にいて疑問を感じている人たちは黙っていないで、一言でも発言してほしい。学校が上意下達で支配されて一番の被害者が子どもたちであることは、歴史が証明していることです。外堀が滅茶苦茶に崩されて、教室だけで子どもたちを守ることはできないのですから。 
 
 ところで、この情宣をしていたところ、市教委教職員課長が「マイクで言うのはやめろ!」と血相を変えて怒鳴ってきました。当然法で認められた行為だと思いましたから私は、「なぜマイクはいけないのですか?根拠となる法や条例を提示してください」と言いました。すると「今、ここにはない」と言って、引き返していきました。 
 
 しばらくすると、同じ部署内の職員が遠くから私をカメラに収めていることに気づきました。すぐに追いかけ、名前を確認し、その後、撮ったデジカメのメモリーカードを引き渡してもらいました。私に責任はまったくないけれど、替わりに新品を買って渡しました。出費は1700円。職員課長には改めて、禁止の根拠となる法令を尋ねましたが、「今のところ見つからない(もしくは、探せない)」とのことでした。彼らは法を超え、権力を持つ者のおごりで確かめもせず動いたのか、と思いました。 
 
 関東地方は昨日、梅雨入りをしたとか。市教委が校長を介し、「(校門前の)敷地に入るな」と言って来たので、今週から歩道に座っています。雨の日には1日中車が渋滞し、私の目の前で排気ガスを出しています。きつい臭いがつらく、高速道路の料金所で働く労働者や、有害物質と隣りあわせで働く労働者の大変さを想います。 


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