2005年06月23日14時19分掲載  無料記事
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捕鯨問題

「世界は捕鯨に反対」と豪州のメディアが日本批判 

 【アデレード(サウスオーストラリア州)23日=木村哲郎】韓国・蔚山(ウルサン)市で行われている国際捕鯨委員会(IWC)の年次総会は21日、ミンククジラの捕獲数を年440頭から約850頭(最多で935頭)に増やし、新たに大型のナガスクジラやザトウクジラの捕獲再開を含む日本の商業捕鯨再開計画を否決した。 
 
 ただ調査捕鯨は国際捕鯨取締条約で認められているため、今回の決議には拘束力がなく、クジラの生態解明などには規模の大きい調査捕鯨が必要だとする日本は、調査捕鯨のさらなる推進を進める意向だ。日本の再会計画の可決には、加盟国66カ国のうち4分の3以上に賛成が必要だったが、賛成票が過半数以下の29カ国しか集まらず、オーストラリアの各メディアは「日本が国際社会で非難された」と報じた。 
 
 総会に出席している水産庁資源管理部遠洋課課長補佐(捕鯨班長)の森下丈二氏は22日、「IWC脱会も選択の一つだ」とオーストラリアの各メディアに今後の姿勢を示した。IWC未加盟のフィリピンやインドネシアなどは、IWCの動向とは関係なく捕鯨を続けており、森下課長補佐は「科学と法は感情より優先されるべきだ。日本の調査捕鯨は科学的に支持されていると確信している」と発言。その上で「捕鯨問題の討論が加熱し過ぎている」との見方を示した。 
 
 これに対しオーストラリアのキャンベル環境相は「死を基盤にした科学」に正当性はないと日本の姿勢を一蹴。ハワード首相も「日本は親密な同盟国であり、二カ国関係は捕鯨問題にかかわりなく続くであろう」と強調した上で、「しかしオーストラリアの統一した世論として、捕鯨には反対である。今回の投票結果はクジラを守るために大切な第1歩だ」と語った。 
 
 国内メディアも政府に好意的な立場であり、アデレードの日刊紙アドバタイザーは社説で、今回の投票結果を歓迎、日本が提案した無記名投票が否決されたことに対し、「経済力・外交力を使い途上国から票を買っている日本のやり方が否決された」と伝えた。ただこれは、捕鯨への理解が広がっているために賛否の投票差が狭まっているという日本の水産庁とは、大きく意見が食い違っている。 
 
 オーストラリア国民の多くは、調査捕鯨としながらも鯨肉が食卓にあがっている日本の状況に「うそをついている」と批判している。また日本の南氷洋捕鯨は、オーストラリアの重要な観光アイコンの一つであるクジラウォッチングに悪影響を及ぼす可能性があり、その海域は、オーストラリアが主張している領海とも重なっている。 


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