2005年08月15日01時05分掲載  無料記事
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イランの対イラクへの思惑

【東京14日=齊藤力二朗】イラク問題を読み解くに当たりイランの深い関わりを解明することは不可欠であるが、一筋縄ではいかないイランの政治は分かりにくい。11日付のイラクのニュース・サイト、キファーフは、イランはイラクのシーア派勢力を政治的に支援すると同時にスンニ派の武装行動を支援する和戦両面作戦を採っているとするウレイブ・ランターウィー氏の評論を掲載した。 以下抄訳。 
 
 バグダッドが陥落しサダム・フセイン政権が倒れて以来、イランはイラクで和戦を同時平行する作戦を開始した。 
 
 イランは一方で、選挙とそれがもたらす各種の同盟や暫定評議会、国民議会を、シーア派の数の力で押しつぶせると考え、イラクの政治活動を支援している。そこでイラクにおけるイランの宗教的、政治的、治安上の影響力が、最大限に達したことを知らぬ者はない。 
 
 他方イランはイラクのテロを支援している。そのことに疑念を抱くなら、イランを訪問したと語った国際テロ組織アルカイダから分離した指導者たちの言動を思い起こすのがよい。またイラン国内にアルカイダの戦闘員が3千人以上もいると一挙に明かしたイランの公式声明自体の真意を吟味するがよい。 
 
 「イランの最新鋭兵器を抵抗勢力が所有している」とのラムズフェルド米国防長官の声明に耳を傾けよ。また「イランがイラクの抵抗勢力や聖戦組織の活動支援に関与している」とするアラウィ政権時代の国防相や内相の発言を思い起こせ。 
 
 確かなことは、イラクにおけるイランのこの2面作戦は、イラクにおけるイランの利益にも2面性があることに由来することだ。他のどの地域やどの時代に於いても同じように、ここでの政策も、利益追求を濃密に反映しており、時に変化するが、それは優先順位の変化に合わせた合理的な結果だ。 
 
 またイランには、米国のイラク作戦を失敗させ、米国人の生存を単に困難にするだけでなく、不可能にすることに隠れた利益がある。イラクの抵抗勢力と「テロリスト」の頑強な岩に対する米国の侵略と浸透力が破壊されなければ、隣国であるアフガニスタンやイラクに対して行ったと同様な戦争を、イランに対して米国が仕掛ける危険性が残るからだ。 
 
 イランはイラクの新体制と外交関係を結び、ジャファリ首相(シーア派)やタラバニ大統領(クルド人)などイランの友人や信奉者たちでイランを訪問したい者たちに門戸を開く一方、戦闘員や聖戦士であれば誰でも兵器庫や国境監視施設を開放している。それどころか、送った目的と異なる使われ方をすることがあっても、必要な兵器は提供される。それらを使ったために無辜の民間シーア派アラブ人自身が倒れているのだ。 


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