2005年08月29日15時36分掲載  無料記事
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中東

米大統領の夏休みは長過ぎる? イラクで米兵士の戦死相次ぐ中

 ブッシュ米大統領が、米テキサス州クロフォードの私邸(牧場)で8月初めから5週間の長期夏休みに入っている。2001年に大統領に就任して以来、政権2期目のブッシュ氏は、今回の夏休みで、レーガン元大統領(1981〜89年)が8年間の在任中に作った休暇の記録を追い抜くといわれている。世界一多忙な政治家である米大統領が休暇を取ることは当然だが、今回の夏休みは、これまでの中でも国政、外交面で悪いニュースが相次ぐ中での長期休暇という。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 米コプリー・ニュースによると、国政問題では、ガソリン価格の高騰が続き、消費者の不満が高まっている。また大統領私邸前では、8月初めから、イラクに従軍し戦死した兵士の母シンディ・シーハンさんが、「息子はなぜ死んだのか」の抗議の座り込みを続けている。シーハンさんは、母親が急病で私邸前から一時的に離れているが、シーハンさんの支援の輪が広がっている。 
 
 外交面では、イラクの将来像を決める憲法起草が8月15日までの期限に間に合わず、来年の駐留米軍の撤退スケジュールに微妙な影響を与える可能性もある。この間、駐留米軍に対する抵抗勢力の攻撃は後を絶たず、戦死者の数も増え続けている。 
 
 北朝鮮の核開発問題をめぐる多国間交渉も大きな進展はない。最近、新大統領が誕生したイランは、米国の反対にも関わらず、核関連技術開発を再開している。 
 
 AP通信の最新の世論調査では、大統領の仕事ぶりに対する支持率は42%と、最低の水準になっている。 
 
 政権2期目は、歴代大統領でも支持率が落ち込むといわれる。しかし、今回はかつてないほど悪い材料が、一度に噴出した格好だ。 
 
 支持率が低下している主因は、出口戦略がはっきりしないイラク戦争の推移と、原油価格の高騰に対する不満とみられている。 
 
 多くの政治分析筋は、イラク戦争の行方について不安感を覚えている世論に対して、ブッシュ大統領は、イラク政策について明確に説明する必要があると指摘する。 
 
 ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、モーリン・ダウド記者は「駐留米軍がイラク情勢で苦しんでいる時に、長期休暇を取れるのか」と疑問を呈している。 
 
 ブッシュ大統領は、休息し、リラックスするのが休暇の目的としている。ホワイトハウスでは、これまで通り、完全な休暇ではなく、仕事もする「実務休暇」と位置づけている。大統領は、サイクリングや釣りなどで英気を養っているが、5週間の長期休暇については「バランスの取れた生活を維持するためには必要だ」と話しているという。 
 
 英紙フィナンシャル・タイムズによると、レーガン元大統領が在任中、米カリフォルニア州サンタバーバラの牧場で過ごした休暇は計335日。ブッシュ大統領はこの記録を在任5年で抜くという。 
 
 一方、7月に2度にわたって爆弾テロ事件に震えた英国では、ブッシュ大統領の盟友、ブレア首相も8月から3週間の夏休み中。同首相は、これまでイタリアのベルルスコーニ首相に招かれ、海外で夏休みをとったことが報道されるなど、英メディアの話題をさらっていた。 
 
 しかし、今回は、テロ攻撃を経過し、英政府は事前に主要メディアに対し、首相の休暇場所を公表しないよう特別な要請をしたという。ニューヨーク・タイムズ・ニュース・サービス(電子版)によると、英国の新聞は、要請を受け入れ、首相の動向に関して沈黙を守っている。一部の新聞が、休暇中の首相の写真を掲載しているが、場所については、一切触れていないという。 


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