2005年09月05日05時44分掲載  無料記事
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写真が語るイラク情勢、津波、ヒロシマ... 南仏で第17回国際写真展

【ペルピニャン(南フランス)4日=宮下洋一】国際フォトジャーナリズム祭(VISA)が南仏ペルピニャンで開かれている。今年で17回目を迎えるVISAには、フォトジャーナリストで、月刊誌「DAYS JAPAN」編集長の広河隆一氏も参加した。最優秀作品(ビザ・ドール)を受賞したのは、「津波」をテーマに扱った通信社「VU」所属のフィリップ・ブレンキンソップ氏となった。 
 
 今年の写真祭で注目されたテーマは、昨年8月、ロシア南部・北オセチアで起きた小学校占拠事件や、引き続くイラク情勢の写真など、深刻な世界を記録した展示作品。夜に行われるスライドショーでは、数多くのフォト通信社やフリーカメラマンの撮影した写真が、大型スクリーンで発表され、会場からも拍手が沸き上がっていた。 
 
 南仏ペルピニャンの町は、毎年、世界中50カ国以上から約2000人のカメラマンが結集。通信社が置かれているブースなどに集まって、自らの作品を紹介しあったり、現場で知り合った仲間との再会を求める場所にもなる。フリーのカメラマンが、マグナム、ガンマ、ポラリスなどの大手写真通信社と契約する道も開ける可能性から、訪れる若者カメラマンたちは、作り立てのアルバムをブース関係者に見てもらうのに必死になっている。 
 
 今年度、展示作品に選ばれたカメラマンたちは、「非軍事地帯の奥」(マイケル・ヤマシタ=ナショナル・ジオグラフィック)、「ガザ/おりの中の生活」(ジェローム・エクール=VU)、「イラク」(ユーリ・コジレフ=タイム・マガジン)、「ヒロシマ」(ジェラール・ランシナン=無所属)、「紛争の10年」(ハイディ・ブラッドナー=パノス・ピクチャーズ)など30点。 
 
 町全体の教会や修道院を使って、一般市民に無料で公開されるのがこの写真祭の特徴。ドミニカン教会内に展示されている作品「ヒロシマ」は、60年前に被害を受けた被爆者たちのポートレート写真が数十枚、大きな壁一面に飾られている。 
 
 今回でVISA参加が2回目となる広河隆一氏にとって、この写真祭は、最も注目するフォトジャーナリズムのお祭りだという。「DAYS JAPAN」の英語版を参加するカメラマンたちに手渡して宣伝し、プロフェッショナル・ウイークと呼ばれるわずか5日間で、ほぼ全員が広河氏を絶賛する光景が目立った。「ル・モンド」や「リベラシオン」といったの大手フランス紙をはじめ、海外からの新聞社が、世界でも数少ないフォトジャーナリズム雑誌に注目を集めていた。 
 
 広河氏は、VISAがすぐれた写真祭であることは認めつつも、「展示作品を見ていると、やはり欧米カメラマンの視点から捉えた、白人社会が好みそうな写真が目立つ」と指摘した。カメラマンたちが持ち込んでくる作品を数時間、見て、じっくり話を聞く同氏は、「どうしようもない写真もたくさんありますけど、いつでも雑誌に送ってもらいたいというベテランのカメラマンも多い」との感想を述べた。今回、力作と感じた展示作品は、チェチェンを10年間、撮り続けた女性カメラマン、ハイディ・ブラッドナー氏の「紛争の10年」だったという。 
 
 イラク駐留米兵の埋葬写真などを展示しているポール・フュスコ氏(マグナム所属)は、「私は、この(イラク)戦争に怒っている。だからこそ、この無邪気な米兵たちの悲惨な現実を撮りたかった」と強調。「しかし、米政権は、総選挙が終わるまで、この写真の掲載を禁じた」と米メディアの都合主義にも憤慨していた。 
 
 作品展示会のほかにも、市民会場内では、世界から集まったカメラマンやメディア関係者、知識人らが、フォトジャーナリズムをテーマに講演した。フランス人哲学者のベルナール・スティーグラー氏は、「デジタル化の時代で、写真の世界がキャピタリズム主義になっている」とし、「そんな時代だからこそ、カメラマンは、本当に何がいい写真なのかを見極める実力が必要だ」と主張した。 
 
 このフォトジャーナリズム祭は、1週間がプロフェッショナル・ウイークで、町中はプロのカメラマンで埋め尽くされるが、その後の1週間も、町全体で写真の展示が続けられる。 


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