2005年09月08日14時13分掲載
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米国製中古車がメキシコに大量流入か 排ガス規制甘く、環境悪化を憂える声も
自動車大国の米国。最近は新車販売に力を入れ、中古車がかなりだぶついている。その中古車市場に救世主が現われた。南で国境を接するメキシコが、これまで厳しく制限されていた中古車対策を転換し、10〜15年経った米国製中古車の輸入を認める決定をしたからだ。しかし、年数の経った車の中には、メキシコの排出ガス規制の基準を満たしていないものもある。環境保護団体は、世界有数の大気汚染都市といわれるメキシコの環境がさらに悪化すると憂慮している。(ベリタ通信=江口惇)
米国からメキシコへは、これまでも米国製中古車の乗用車、トラックなどが大量に流れ込んでいる。多くが密輸で持ち込まれたもので、車の登録は行なわれておらず、当然メキシコの排ガス規制の適用も受けていない。
現在メキシコ国内で走っている密輸車は200〜300万台といわれる。メキシコ国内で車を購入すると、高い税金がかかるため、農園主などの間では、割安で手に入る米国製中古車への需要は高い。しかし、未登録のため、発見されれば、車が没収される危険性が常につきまとっていた。
こうした中で、フォックス大統領は8月下旬、これまで厳しく制限されていた中古車輸入を変更し、米国、カナダからの10〜15年経った中古車の輸入を解禁する決定を下した。同時に密輸車の所有者に対し、自動車価格の15%の税金を支払えば、正規の登録を認めるとの“恩赦”措置を発表した。
▽米中古車の価格低下
メキシコは北米自由貿易協定(NAFTA)により、2009年までに米国、カナダ製の中古車に対し、市場を開放することが義務付けられている。今回の10〜15年車の解禁は、この流れに沿ったものとされる。
米紙ロサンゼル・タイムズなどによると、米国で少なくとも10年経った車は、約1億台に達している。その数から言って、米国は大量の中古車の供給基地といえる。
米国では、GMやフォードといった自動車メーカーが、販売不振を解消するため、新車の割安セールを実施している。販売ディーラーは、中古から新車に乗り換える客のために、あまり年数の立っていない中古を引き取る結果になり、市場で中古車が増えている。米国の中古車は、一般に低価格だが、それでも最近は値段が下がっている。
米国のあるディーラーは「自動車は性能がよくなり、寿命も伸びている。多くの車が、まだ十分走れるのに、廃棄対象になっている。メキシコへの輸出で、中古車市場が活気づくだろう」と、期待を膨らます。
メキシコ政府は、米国から低価格の中古車が流入することで、消費者に利益があると強調するが、国内の新車販売ディーラーは、売り上げが落ちることを懸念している。
米国でも15年立った中古車は、相当くたびれた状態になっている。「メキシコ市場が、米国製のジャンク(がらくた)で一杯になってしまう」と、あるディーラーは不満を隠さない。
メキシコの大気汚染は深刻で、政府もこれまで汚染解消の環境対策に取り組んできた。それだけに、環境保護団体の関係者は「メキシコ政府が、中古の、公害を撒き散らす車を国内に持ち込むことを許可するとは、“クレージー”だとしか思えない」と話している。
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