2005年10月29日11時28分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200510291128136

中東

危険なバグダッドで不動産が急騰 外国の思惑買いで資金流入 業者は命懸け

 自動車爆弾テロや誘拐、殺人などが相次ぐイラクの首都バグダッド。治安が安定するのかもはっきりしない情勢だが、バクダッドでは、意外なことに不動産市場がホットな状態で、価格も急上昇している。しかし、おおっぴらに商売をすると、襲撃の対象になり殺害される恐れがあるため、不動産エージェントは、派手な宣伝を控え、目立たないように行なっている。買い手は、外国人投資家などとみられ、治安が回復すれば、不動産が高騰するとの思惑買いのようだ。(ベリタ通信=エレナ吉村) 
 
 米ナイトリッダーによると、バグダッドのある住宅(5部屋)は3年前、4万5000ドル(約500万円)で売却された。それを2年前に再び売却したところ、売値は8万ドルに上昇。さらにことし8月にまた売却したところ、30万ドルに上昇した。数字を見る限り、不動産市場は過熱している。 
 
 ロンドンにある調査機関チャットハム・ハウスのリム・アラフ氏は「バグダッドで今、家を購入する者がいるとは。状況は悪化の一途をたどっているのに」と驚く。 
 
 治安は悪化しているが、かなりの資金が国内に流入しているといわれ、事実、バグダッド市内は経済が活発化している。人の往来も多くなり、交通ラッシュも起きている。携帯電話も街中にあふれ、商店には、外国からの輸入品がうずたかく積まれている。 
 
 こうした不動産人気を支えているのが、外国人投資家や、旧フセイン政権の下で、国外に退去していた人たちだという。売り手は、国外に脱出する費用を捻出するために不動産を処理する人や、誘拐の身代金を払うために家を売る人など、さまざまだ。 
 
▽不動産業者は襲撃対象にも 
 
 しかし、バグダッドで不動産売買を派手にやると、命の保証がないのも事実。ある不動産エージェントは、8月にオフィスから出たところで、走ってきた車から6発の銃弾を胸に受け、死亡した。イラク抵抗勢力の犯行とみられている。バグダッドで15年間この商売をやっているというエージェントは、自分の知る限りでは、これまでに10人の不動産関係者が殺害されたと話す。 
 
 フセイン政権時代には、市民が不動産を保有することは、厳しく制約されていた。旧政権の残党とみられる抵抗勢力は、エージェントが外国人のイラン人に不動産を売却したり、また米国人と交渉したりして利益を得ているため、襲撃しているようだ。 
 
 この結果、エージェントは、広告も控え、物件の前に「販売中」の看板も出さないなど、細心の注意を払っている。 
 
 物件として人気があるのは治安の良い場所であること。しかし、1年前までは米軍管理区域周辺が、人気があったが、テロの標的になったため、人気は落ちている。バグダッド国際空港周辺は、非常時に、いち早く脱出できるとの思惑から、外国人に人気があるという。 
 
 バグダッド市内には、爆弾や銃撃戦で被害を受けて住宅やビルも多い。こうした物件は安く購入できる。エージェントの間では、ダメージを受けた物件を買い、それに修理を施して数カ月に販売し、膨大な利益を上げている者もいるという。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。