2005年11月05日10時15分掲載  無料記事
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中東

自衛隊撤収、決断の時 迫り来る危険、膨大な経費…  「プレスウォッチング」の池田龍夫氏

 自衛隊のインド洋上とイラクへの派遣を可能にした、一連の時限立法が年末に期限切れとなる。延長の是非をめぐる議論が高まるなかで、ジャーナリストの池田龍夫氏は各紙の報道や防衛庁などのデータをもとに、「日本政府は米国の意向を重視してズルズルと自衛隊を駐留させる愚にピリオドを打つべき時期ではないか」と提言する。また、インド洋上の海上自衛隊がイラクに参戦する米空母に給油を行っているのはテロ対策特措法に違反する、との見解も紹介している。(ベリタ通信) 
 
●自衛隊撤収、決断の時 迫り来る危険、膨大な経費… 
          池田 龍夫(ジャーナリスト) 
 
 9・11同時多発テロ(2001年)から4年目になるが、イラク戦争は泥沼化の様相を濃くしてきた。テロ対策特別措置法(01年10成立)、イラク復興特別措置法(03年7月成立)、イラク特措法基本計画(同年12月策定)に基づいて紛争地域に派遣されている自衛隊が、今後も�犢餾欟�力�瓩魴兮海垢戮�かどうか。年末の時限立法延長をめぐって、論議が高まっている。 
 
 アフガニスタン・テロ対策の一環として、海上自衛隊の護衛艦、補給艦、掃海母艦の3隻をインド洋に派遣し洋上給油を始めたのが01年12月。03年3月始まったイラク戦争は、米軍の圧倒的戦力で終結したかに見えたが(ブッシュ大統領は同年5月終結宣言)、国際的ゲリラの抵抗はいぜん頑強である。アフガニスタンにはカルザイ政権が発足したものの�狷眄鐓�態�瓩陵輿蝓0貶�、イラクは05年12月の新憲法による国民議会選挙後の本格政権を目指しているが、テロ続発で政情安定を期待できない状況になっている。 
 
 小泉政権になってから、自衛隊の海外派遣が一気に加速されてきたが、内外の状況はきわめて厳しく�犲�衛隊撤収時期�瓩料�択が迫られている。 
 
 ▽インド洋の「無料ガソリンスタンド」 
 
 アフガニスタンの反政府勢力タリバーンに対する米軍攻撃に呼応して、インド洋上でのテロリストの移動や補給路を断つため、米英仏海軍などが厳戒態勢に入った。小泉政権は電撃的に「テロ特措法」を成立させ、海上自衛隊艦艇をインド洋に急派し�犢餾盜弩キ瓩量召里發箸房�衛隊海外派遣に踏み切ったのが、01年12月だった。あれから4年、2年の時限立法のため03年末に2年延長、今年11月で期限切れとなる。 
 
 カルザイ政権下のアフガニスタンが安定したとはいえないものの、戦火が消えた後も洋上給油を継続することに疑義が出ている。小泉内閣も対応に苦慮した模様だが、けっきょく10月4日の閣議で「12月以降1年間テロ特措法延長」を決定、国会に提出した。同法に基づく「基本計画」も変更し、インド洋上での給油は当面06年5月までの半年間継続する方針のようだ。 
 
 防衛庁によると、今年9月上旬まで洋上での全給油量は、「米英仏など11カ国の艦艇に545回・約40万7000キロリットル」で、「162億円相当」の油が無償提供されている。「無料のガソリンスタンド」と言われる通りの実態だ。�爛轡隋次Ε供Ε侫薀奪悪瓩寮菠爾箸覆辰審ぜ�艦艇派遣についての問題点はこれまでも指摘してきたが、「米国の要請に応じた小泉外交は、明らかに舵取りを間違った」との不安が深まるばかりだ。 
 
 給油は02年3月の月4万キロリットルをピークに下がり、05年夏には40分の1にまで減ったという。アフガニスタンでの激しい戦闘が終わったのだから当然だが、それでも給油艦・護衛艦各一隻体制を現在もとっているのは不思議である。本来の任務をほぼ終えたのに、「無料スタンド」を廃止しないのは、アフガン後のイラク戦争で米軍後方支援に、この洋上給油が役立っているからに違いあるまい。現に、イラク空爆の米空母キティーホークに補給艦を通じて給油されていたことが米軍の公開資料で判明したと、野党議員が国会で追及している。政府は給油量を公表しているものの、対象艦艇名などは明らかにしていない。 
 
 この点に関し、自由法曹団が03年7月に公表した「イラク特措法=イラク参戦法に関する意見書」がズバリ違法性を指摘していたので、主要個所を紹介しておく。 
 「テロ対策特措法に基づいて派遣された海上自衛隊の補給艦が、イラク戦争に参戦している米国空母キティーホーク機動部隊に間接給油を行なっていたことも明らかになっている。もとより、テロ対策特措法に基づく海上自衛隊の活動はアフガニスタンでの対テロ作戦の支援に限定されている。海上自衛隊のキティーホーク機動部隊への支援はテロ対策特措法の逸脱というほかない。現在、アフガニスタンでの米国の軍事行動はおおむね終結しており、この期に及んで海上自衛隊がインド洋で活動する必要は全く認められない。政府が海上自衛隊の派遣期間を延長するねらいは、イラク参戦法による陸上自衛隊の海外派兵と相まって、自衛隊の海外派兵を既成事実とすることにある」 
 
▽サマワ駐留自衛隊員の年末交代を命令 
 
 大野防衛庁長官は05年10月3日、陸上自衛隊に対し「第七次イラク復興支援群の交代部隊として第八次支援群の編成命令」を出した。自衛隊派遣を決めた「イラク特措法基本計画」は12月14日に期限切れとなる。さらにサマワ駐留を継続するかどうかは、日本外交の重大局面。陸上自衛隊は、04年2月からサマワでの復興支援活動に当たってきたが、給水活動は地元民への給水設備供与で今年2月に任務を終えている。その他の医療施設・学校、道路などの修復も進んだという。イラク国民へ作業を移管し、自衛隊撤収時期を明示すべき段階にきたと判断できる状況である。 
 
 折しも、イラクでは「憲法草案に関する国民投票」「新憲法による国民議会選挙」、次いで「本格イラク政権発足」の政治スケジュールが年末に向けビッシリ詰まっている。ところが、イラク国内のテロはいぜん跡を絶たず、イスラム教シーア派、スンニ派の対立も収まりそうにない。 
 
 このような状況を分析したうえで、大野元裕氏(中東調査会)は「いずれにしても、これほど不安定な状況では、『状況を見て』判断するのではなく、あらかじめ時期を設定しておかないと撤退が先送りされ続ける可能性がある。……撤退のタイミングは、年末の本格政権樹立と、多国籍軍からイラクに治安維持業務が移管されるであろう06年半ばの二つでしょう。基本計画を延長するなら、自衛隊の任務内容を見直し、自衛隊の存在意義を明確にしないと、危険の中で活動する隊員がかわいそうです」(毎日10・6夕刊)と、�猴�念なきダラダラ駐留�瓩傍震笋鯆鷦┐靴討い襦� 
 
 サマワの治安維持に当たっていたオランダ軍は既にイラクから撤退、英・豪両軍が肩代わりしているが、その両国軍から「06年5月ごろに撤退開始の可能性がある」との非公式情報が日本政府にもたらされているという。[ロンドン発共同電](05・10・11)が「リード英国防相は10日、イラク駐留英軍の兵員を11月にも500人削減し、800人にすると報告した。国防相は『大きな編成替えではない』としているが、今後も英政府が徐々に削減を続ければ、陸上自衛隊が駐留するサマワも撤退対象となる可能性がある」と報じており、他国軍に守ってもらわなければ動けない自衛隊の重大転機との認識が肝要だ。 
 
 「政府が何よりも重視しているのは米国の意向だ。米側は再三、延長を要請。11月中旬に予定される日米首脳会談でも、ブッシュ大統領が改めて継続を求め、首相が延長するとの観測が広がる」(西日本新聞10・12朝刊)との指摘どおり、「12月の『基本計画』期限切れ寸前に、駐留再延長(半年か1年)を決定」との段取りを政府は考えていると推察する。「イラク特措法(07年7月が期限)に基づく自衛隊派遣は人道派遣が目的であるため、治安維持目的の他国と違い、治安が回復されても任務が終わらないという点が、日本の撤退判断をむずかしくしている面もある」(朝日05・10・5朝刊)にしても、ズルズル駐留する�犇鬮瓩縫團螢�ドを打つべき時期ではないか。 
 
■基礎的なデータ 
 
 最後に、自衛隊海外派遣問題について、防衛庁などの取材を通じて確認した基礎的データを整理したので、参照願いたい(現時点での推計)。 
 
▼派遣隊員=陸自(サマワ)約600人・空自(クウエート)200人・海自(インド洋)400〜600人▼駐留経費(予算計上)=陸自(03・12〜05・3)433億円・空自(同)83億円。陸・空合計516億円(4、5月分を加えると546億円)、海自(01・12〜05・9)他国艦艇への無償給油代162億円以外の経費は未確認▼イラク復興の分担金=日本49億�法別鵤毅横娃芦�円)[注=EUは15億�法連Ъ�衛隊員危険手当=一日2万〜2万8000円 
 
▼イラク戦争の死者=イラク人3万9000人、米兵1757人・多国籍軍合計1961人(05・7・17現在)日本人外交官ら5人 
 
 なお、「みずほ総合研究所」リポート(05・8・31)は「05年度までの米国のイラク戦費は2700億�砲鯆兇─⇔濱僂妊戰肇淵狎鐐茲鮠絏鵑覯椎柔�がある」と推計。 
 
(本稿は、「新聞通信調査会報」11月号に掲載された「プレスウォッチング」の再録です) 


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