2005年11月10日03時53分掲載  無料記事
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米の象徴白頭ワシの保護やめて、絶滅種指定解除求め訴訟

  米国の紋章にも使われている「ボールド・イーグル(白頭ワシ)」。1960年代に、狩猟やえさの汚染などの影響で激減し、その後政府が保護に乗り出し、近年、白頭ワシは生息数が劇的に回復している。このため米北部ミネソタ州に住む地主がこのほど、白頭ワシをもう保護する必要はなくなったとして、「絶滅の恐れのある種」の指定から外すよう求めてミネソタの裁判所に訴えを起こした。保護鳥に指定されている限り、白頭ワシが巣を作った場所周辺の土地開発ができないというのが言い分だ。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 白頭ワシが米国のシンボルである国鳥になったのは1782年。頭の部分が白いのが特徴で、高い木の上に巣を作ることで知られる。沿岸部や湿原付近に住み、好物の魚を上空からダイブしながらキャッチする。当時は10万組のつがいが生息していたが、狩猟や殺虫剤で汚染された魚を食べたことなどから急速に生息数が減少。63年には417組に激減した。 
 
 米連邦政府は67年に「絶滅種」に指定、保護に着手。その後順調に生息数が増え、95年には「絶滅の恐れのある種」に格下げされた。99年、当時のクリントン大統領は白頭ワシを保護指定から将来外す考えを表明している。この時の生息数は全米で5748組と報告されている。 
 
 スター・トリビューン(電子版)によると、訴訟は、ミネソタの地主の代理人を務める米カリフォルニア州サクラメントの「パシフィック法曹財団」が、米野生動物保護局を相手取って訴えた。 
 
 この地主はミネソタ中部モリソン郡にある湖の付近に、3万平方メートルの土地を持っている。地主は一部の区画整理を行い土地分譲を行うことを希望しているが、問題は白頭ワシの巣が一つあること。現行の「絶滅種法」は、巣から半径100メートルの範囲内に建物を作ることを禁じているからだ。 
 
▽土地開発問題が背景 
 
 法曹財団によると、ミネソタ州では、過去5年間に白頭ワシの生息数が28%増えたという。同財団では、クリントン前大統領が約束したように、白頭ワシを絶滅種の保護から外す時期にきていると主張している。 
 
 保護鳥の指定解除が行なわれると、白頭ワシとその巣が、法律によって引き続き保護されるが、巣の周辺地域は、保護対象から外れ、土地開発が可能になるという。 
 
 これに対し、米野生動物保護局は白頭ワシの指定解除が遅れている事実は認めるとともに、今後数カ月以内に、指定解除問題で何らかの進展があるだろうとの考えを表明している。しかし、将来指定解除があるにせよ、白頭ワシに生息状況は、少なくとも5年間は監視が必要だと話している。 
 
 一方、米紙プレス・エンタープライズによると、カリフォルニア州南部では、ことし9月初め、ヘメット湖周辺で、白頭ワシの雛鳥2羽が死んでいるのが発見された。嵐で木の上の巣から落下したのが原因という。 
 
 白頭ワシは全米平均では、生息数が回復しているが、カリフォルニア州ではむしろ減少傾向にある。それだけに雛鳥2羽の死亡について保護関係者は「自然の行為だが、残念だ」と話している。 


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