2005年12月01日18時12分掲載  無料記事
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黒人か白人かで量刑に雲泥の差 肌の色で差別と批判の声

  米フロリダ州の交通事故の審理で、被告が白人か黒人かという肌の色の違いで、裁判所の量刑に大きな差がつくケースが目立っている。黒人の子ども二人をひき殺した白人女性は、2年の自宅軟禁という寛大な刑で、刑務所行きは免れた。これに対し、白人のカップルを交通事故で死なせた黒人少年は、禁固30年という厳しい刑を受けたほか、ハイチからの黒人移民に対しても厳しい量刑が科されている。黒人の支援関係者からは、審理の公正さを疑問視する声が上がっている。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 米紙セントピーターズバーグ・タイムズによると、ウィリアム・ソートン被告(18)は、17歳だった2004年12月、無免許運転中、白人のカップルを事故で死なせ、ことし9月フロリダの裁判所で禁固30年の刑を受けた。ソートン被告は初犯で、黒人関係者は厳しすぎる量刑だと不満を漏らした。 
 
 この判決の2カ月後の11月初め、同じく04年12月に二人の黒人の子どもひき殺した白人の元小学校ダンス教師、ジェニファー・ポーター被告(29)に対し、フロリダの別の裁判所は、自宅軟禁2年、保護観察3年という寛大な刑を言い渡した。悪質なひき逃げ事故だったが、初犯で、子どもが突然飛び出したなどが情状の理由となり、刑務所行きを免れた。 
 
 ポーター被告は、ひき逃げの現場から自宅に逃げ帰っていた。彼女の父親は、狼狽した娘を心配し、いったん車をガレージに入れさせ、車に付着した血痕をぬぐっていた。翌日も、娘に通常通り学校に行くようアドバイスしていた。その後裁判に出廷した父親は、当日娘を出頭させなかったのは、誤りだったと述べた。父親には証拠隠滅の疑いもあるが、警察からは、何のおとがめもなしだった。 
 
 ハイチ移民の黒人ジャン・クロード・ミューズ被告(41)は、01年5月にフロリダ州で白人母子を交通事故死させたとして、02年に禁固15年の刑を受けた。その後上訴したが、棄却された。現在弁護士は、裁判の公正さに疑義があたとして非常救済手続きの申請を準備中だ。 
 
 ミューズ被告はトレーラーを運転中、白人女性(40)運転のミニバンと交差点で衝突、バンは横転したトレーラーの下敷きになった。バンには、娘3人が乗っていた。母親と8歳の娘の2人が即死した。同被告は居眠り運転による致死罪に問われた。 
 
 一審は陪審員は全員が白人で、一時間足らずの審議で、有罪になった。有罪評決後、陪審員たちは「居眠り運転の証拠はなかったが、2人が死んだのでとりあえず有罪にした」「どの事故でも死者が出れば、有罪」などと語り、審理が公正に行なわれたのかを疑わせる発言をした。 
 
 この判決の後、死亡した母親に同乗し、生き残った長女(16)ら2人が、15年の刑は重過ぎると、ミューズ被告の弁護に立ち上がる意外な展開をみせている。長女は当時12歳。車の中から負傷していた彼女を、ミューズ被告が救出してくれたことを記憶している。「死んだ母親も彼が刑務所に行くことは望んでいないと思う。彼を助けたい」と少女らは語っている。 
 
 少女や母親の関係者たちは、フロリダ州の小さな町では、黒人に対する差別があり、ミューズ被告の有罪は「復讐の結果だ」と告発している。全米黒人地位向上委員会(NAACP)も支援に乗り出している。 
 
 これに対し、死んだ女性の夫は、これに真っ向から反対し、「彼には責任がある。肌の色の問題ではない」と反論している。少女らは現在、父親と離れ、おばの家で暮らしている。 


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