2005年12月28日09時45分掲載  無料記事
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ロシア製戦闘機が東南アジアの空を支配? タイ政府も購入に合意

  原油生産でも世界一の座を争っているロシアが今、兵器市場としては米国の“牙城”だった東南アジア諸国に、ジェット戦闘機の売り込みを図り、実績を挙げている。1990年代後半から顕著となった同諸国と米国との確執に巧みにつけ込み、ロシアは2003年にインドネシアへのスホイ戦闘機売却に成功、そして今回はタイが同戦闘機の購入に暫定合意した。この結果、ロシア製戦闘機を保有するのはインドネシアとタイに加え、中国、ベトナム、マレーシアなどとなり、同戦闘機がアジアの空でその雄姿と存在感を一層示すことになりそうだ。(ベリタ通信=都葉郁夫) 
 
 バンコク・ポスト(電子版)のロシアからの報道によると、マレーシアの首都クアラルンプールでこのほど開かれた「東アジアサミット」を機に、タクシン・タイ首相がプーチン・ロシア大統領と会談、ロシア製のジェット戦闘機スホイ30MKM12機とヘリコプター数機の購入に暫定合意した。 
 
 タイ政府はこれまで戦闘機など武器の大半を米国から買い入れており、ロシア製ジェット戦闘機を導入するのはこれが初めて。 
 
 正式契約は2006年半ばまでに結ばれる予定とされるが、これに対しタイ国軍首脳は「まだ正式契約ではない。ロシア側からの詳しい条件が届くのを待っている」と述べ、慎重な姿勢を示している。 
 
 タクシン首相は昨年、同戦闘機購入の意向をいったんは示していたが、同年12月26日に「スマトラ島沖大地震・津波」が起き、復興へ向けた経済政策などの見直しを迫られたことなどを理由に、購入計画を白紙に戻していた。 
 
 今回の取引総額は5億ドル(約580億円)に上るが、タイ政府当局者は購入代金の一部を同国の物産で支払うことになるとしている。 
 
 旧ソ連との関係が強かった中国およびベトナム両国空軍の主力戦闘機はロシア製で、これに加え東南アジアではマレーシアがマハティール前政権下でロシアからミグ戦闘機を購入、現在の保有機数はミグ29Nなど17機に上っている。 
 
 また、域内の大国インドネシアも04年4月、モスクワを訪問したメガワティ大統領(当時)がジェット戦闘機スホイ27、スホイ30の各2機計4機とヘリコプター2機を購入することに合意した。パイロット訓練も終わり、同戦闘機は既に納入済み。 
 
 タイが正式契約を結べば、東南アジア諸国としてロシア製ジェット戦闘機の保有国では3カ国目となる。この結果、冷戦中、米国が強力な軍事プレゼンスを誇っていた東南アジア地域の空に、米国製と共にロシア製ジェット戦闘機が飛び交うことになる。 
 
 これに対しロシア側は、今回の取引を「(正式合意に向け)やっと折り返し点に漕ぎ着けたところで、今後の進展に期待している」としながらも、東南アジア主要諸国の相次ぐ同国製ジェット戦闘機導入を大いに歓迎している。 
 
 東南アジア地域では米国と最も関係の深いフィリピンが今年10月、保有していた37機の米国製ジェット戦闘機F5を「耐用年数が過ぎた」ことを理由に、全機廃棄を決めたばかり。 
 
 フィリピン政府がまだ、次期主力戦闘機の導入計画を発表していないだけに、タイのロシア製ジェット戦闘機導入がどのような影響を与えるかも注目される。 


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