2006年01月20日12時40分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200601201240255

根津教諭の「君が代」拒否

質問に答えない都教委講師 「君が代」不起立処分の教員が再発防止研修の報告

  「君が代不起立・再発防止研修」でゼッケンを着けて研修を妨害したとして、東京都教育委員会が減給・戒告などの処分を下した教員10人に対する新たな「再発防止研修」が19日、都総合技術教育センターで行われた。被処分者の一人、根津公子・立川二中教諭(55)から、研修の様子の報告とともに、研修に抗議する声明が寄せられた。(ベリタ通信) 
 
 
 1・19ゼッケン処分再発防止研修のご報告 
 
 ゼッケン等着用被処分の私たち9名(1人は移動教室のため2・1に変更)に対する再発防止研修に際し、早朝からたくさんの方が都教委に対して抗議を、私たちに対しては激励に駆けつけてくださいました。また、参加はできないからと、都教委に抗議文等を寄せてくださった方もたくさんいらっしゃいます。皆さん、本当にありがとうございました。おかげさまで、とても心強かったです。私たち当事者背後には、都教委の暴走に怒るたくさんの人がいるのだということ、たくさんの人が都教委の暴走を監視しているのだということを都教委に知らしめることができたと思います。 
 
 さて、今日の再発防止研修(基本研修)もまた、今までと同じように、園田・教育庁総務部法務監察課長の講義(「教育公務員の服務と関係法令について」)1時間と報告書の作成40分という予定でした。課長の講義は、地公法の条文を読み上げ、「全体の奉仕者」として「全身全霊を傾けて職務に専念すべき」だというもので、私たちの行為がなぜ職務専念義務違反なのかを具体的に指摘することはありませんでした。1977年の最高裁判決(「ベトナム戦争反対」等のプレートを着用した目黒電報電話局職員の処分を、「注意力のすべてを職務に向けなかった」「他の人の注意力も乱した」とした判例)を挙げて、乗り切ろうとしました。一方私たちは、注意力のすべてを職務に向けて、全身全霊を傾けて、丁寧に質問をしました。7月21日当日もこの園田課長が講師だったので、課長はあのとき、教育公務員の服務と関係法令について講義を進めているにもかかわらずなぜ、目の前のゼッケン着用者に対して、指摘、注意をしなかったのか、などと質問しました。初めは、質問者数を制限していた担当者は、私たちの強い(=職務に専念するがゆえの)質問要求の中で、全員に質問をさせました。そうだ!と共感する質問が続出しました。 
 
 私たちのゼッケン着用について、「課長はあの時、職務専念義務違反という認識があったのか」との質問に園田課長は、「いいえ」と漏らしていました。推測どおりでした。これぞ、注意力の欠如であり、職務専念義務違反ではないのか?!と思いました。また、このことについて「では、服務事故がなかったということでいいのか」と問われ、もりや研修センター研修部企画課長は、「私の方で判断できない」と言いました(では、一体誰が職務専念義務違反と決定したのか?です)。 
 
 一切、質問を受け付けないのは研修に値しないことを、私たち当事者を含むたくさんの人が批判してきた成果でしょうか。今までは質問を受け付けず、逃げるように退室していた課長を、今日は質問に向き合わせることができました。お粗末な答えであったり、「答えられない」という答えでしたが…。 
 
 1時間50分後、会場となった建物から出ると、朝と同じようにたくさんの方が待っていてくださって、とってもうれしかったです。ありがとうございました。 
 
 さて、基本研修は終わりましたが、減給処分をされた私(根津)には、2月1日に専門研修(10時から)とやらが待っています。また、この日、移動教室で日にちが変更になったAさんの基本研修、そして、9月の専門研修を欠席したことを理由に減給6ヶ月の処分を受けたBさんの基本研修(午前)と専門研修(午後)が予定されています。 
皆さま、お忙しい中を恐縮ですが、ぜひまた、駆けつけてくださいますようお願い申し上げます。 
 
◆2月1日(水)9時15分 
◆今日と同じ東京都総合技術教育センター前 
(JR水道橋・お茶の水寄り出口、都営地下鉄水道橋、都立工芸高校隣) 
 
 なお、今日この後、都人事委員会に当該みんなで行き、ゼッケン等着用処分について審査請求をしてきました。 
 
 追伸:執行停止の申立をしたところ、昨日出た決定はどれも「却下」でした。裁判所が都教委に迎合しているとしか思えません。私の申立についての「却下」理由は以下のとおりです。私は、回復困難な損害が発生してからでは、取り返しがつかないから申し立てたのに、です。 
 
 「申立人が本件研修命令に対しどのような対応をとるのか、申立人の対応に対し、立川市教委等が如何なる対処をするかについて、いずれの不確定というほかない。しかも、申立人がこれまで受講した研修においても国旗・国歌等思想・良心にかかわる問題に言及することはなかったと認められる。さらに、・・・本件研修は、・・・その前提となる懲戒処分の内容が異なり、自ずと研修の目的・内容も異なるものになることがうかがわれる。これらの事情に照らしてみれば、申立人がこれまで2回の研修を受講していることを考慮しても、現段階において、申立人が本件研修命令に従うことにより、何らかの損害が発生するのかは未だ不明・・・。 
 
 仮に申立人に何らかの損害が発生することがあったとしても、当該損害を、原状回復ないし、金銭賠償による方法で填補させることが不可能であるか、又は、社会通念上、そのような方法で回復させるのが容易ではないないしは相当ではない程度に達しているとまでの疎明はいまだされていない」(民事36部難波孝一裁判長) 
民事11部、19部に回った人たちの決定も 
(1)本件再発防止研修は、その前提となる懲戒処分の内容が異なる。「繰り返し」の研修ではない。 
(2)本件再発防止研修が講義と報告書の作成だけなのだから、申立人の思想信条の自由等が侵害されるものではない。 
という、本質から目を背けた、不当なものでした。 
(文責 根津公子) 
 
 
 
 報道関係者各位 
 新たな「再発防止研修」に抗議する声明 
 
 本日、東京都教育委員会(都教委)は、7月の「服務事故再発防止研修」での「ゼッケン・ハチマキ・Tシャツ」着用を理由に処分した10名の教職員(処分発令12月1日。減給1/10・1ヶ月1名<中学校、ゼッケン着用・「妨害行為」>、戒告9名<ゼッケン着用7名(小学校4名、高校3名)、Tシャツ着用1名(高校)、ハチマキ着用1名(高校)>)に対する新たな「再発防止研修」を強行実施しました(うち高校教員1名は「移動教室引率」のため2月1日に期日変更)。今回の「研修」は、被処分者に執拗に「反省・転向」を迫り、繰り返して苦痛を強いるもので、まさに権力的弾圧・「いじめ」以外の何ものでもありません。また民主主義の根幹である「思想及び良心の自由」「言論・表現の自由」をないがしろにする暴挙です。私たちは、都教委のこの新たな暴挙に満腔の怒りを込めて抗議するものです。 
 
 そもそも「日の丸・君が代」処分に係わる「再発防止研修」は、「違憲違法の可能性がある」「教職員の権利を不当に侵害するものと判断される余地がある」等(東京地裁決定)と司法も鋭い警告を発しているものです。また、04年度再発防止研修処分取消等請求事件として東京地裁(中西裁判長)で係争中です(05年1月26日、第8回口頭弁論)。更に、都人事委員会では、03年度周年行事・04年3月卒業式・4月入学式の処分取消を求めて公開口頭審理が進行中です(12月より3回目審理、校長証人尋問)。しかし05年3月卒業式・4月入学式については不服審査請求を申し立てたものの都教委は準備書面も出しておらず、私たちの早期開催の要求にもかかわらず、人事委員会審理開催の見通しもたっていません。かくして、都教委は、公務員の身分の救済制度として存在する人事委員会制度上の手続き・進行を無視して重ねての処分を乱発し、「再発防止研修」を命令しているのです。 
 
 都教委は、「処分説明書」によると「研修」時の「ゼッケン」等着用を「職務専念義務違反」「信用失墜行為」であるとしています。しかし7月21日の「再発防止研修」の状況を見るとこれは全くの「言いがかり」に過ぎません。その日の「研修」では、都教委法務監察課長の「講義」に対し、研修受講者は次々と質問しましたが、都教委は質問には一切答えることなく「一方的」に「研修」打ち切ったのです。質問には答えず質問者を敵視する研修など「研修」の名に値しません。また、当日、都教委は、「ゼッケン・ハチマキ・Tシャツ」着用を「認めない」理由さえも述べていないのです。そして4ヶ月以上経過した12月1日に上記10名を処分し、本日新たな「研修」を強行したのです。 
 
 これは、受講者が一人も「反省」せず「研修」の意図を打ち砕かれた都教委の「報復」「見せしめ」であることは明らかです。 
 
 12月8日、中村教育長は都議会で卒業式・入学式の「国旗掲揚・国歌斉唱」に関して「校長の職務命令発出」の継続、教職員による生徒の「君が代」斉唱指導の強化を明言しています。本日の「再発防止研修」は、まさに本年3月卒業式・4月入学式を前にした都教委の「日の丸・君が代」強制の強化の象徴でもあり、抵抗する教職員を根絶やしにするための「見せしめ」です。 
 
 しかし都教委が「日の丸・君が代」強制などの教育の強権的支配をいかに強めようとしても、良識ある都民の批判にさらされることでしょう。各種世論調査でも批判の声が圧倒的多数です。都教委の暴走を危惧する声も確実に大きくなっています。 
 
 私たちは、憲法・教育基本法に基づき、東京の学校に自由を取り戻し教育の再生を実現するために、「日の丸・君が代」の強制に反対し、都教委の暴圧に屈せず最後まで闘い抜きます。 
 
2006年1月19日 
 「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会 
  共同代表 清川久基(前足立西高校)、星野 直之(前保谷高校) 
(連絡先)事務局長 近藤 徹(葛西南高校)090-5327-8318 e-mail:qq947sh9@vanilla.ocn.ne.jp 
(弁護団事務局)加藤文也弁護士(東京中央法律事務所)Tel:03-3353-1991  Fax:03-3353-3420 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。