2006年01月22日16時26分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200601221626010

世界社会フォーラム

【IPSコラム】影響力を拡大する世界社会フォーラム 今年は4ヶ所で開催 カンディド・グリズボウスキー

 反グローバリゼーション運動は、特に代表的な行事である世界社会フォーラム(WSF)は力を失っている、と多くの人たち、その内部にいる者でさえ、そう言っている。が、リオデジャネイロにいるわれわれは活気と創造性でみなぎっている。(IPSコラムニスト・サービス=ベリタ通信) 
 
 WSFは常に意外性と斬新さで、大企業のもうけを増やすことを目的にしたグローバリゼーションの影響を最も直接的に感じ取っている人々にますます近づいている。今年はわれわれの能力が伸び、かつ拡大していることを示す。2006年には、フォーラムは一ヶ所だけではなく、4ヶ所で開かれる。マリのバマコ、ベネズエラのカラカス、モロッコのボウズニカ、パキスタンのカラチである。誰もわれわれに期待を寄せていないようなところでさえも、われわれはキノコのように急速に成長している。確かに障害や問題、新たな矛盾はある。しかし、われわれが築き上げつつあるものは素晴らしいものである。 
 
 今回は6回目のフォーラムであり、いつものように、新しい挑戦があるであろう。われわれは2001年、ブラジルのポルトアレグレで始めた。当時は、そんなに人が集まり、反響があるとは、誰も想像もできなかった。いわゆる「ワシントン・コンセンサス」といわれる、最も極端なグローバリゼーションの政策に支配されているラテンアメリカにあって、希望と驚きを生じさせることができた。それは、ただの夢に過ぎないもののように見えた。しかし、夢をみることはは最も人間的な行為の一つで、われわれを生き、未来を信じさせるように力づけるものである。 
 
 夢は現実のものとなり始めている。「ワシントン・コンセンサス」に同調した政府は、選挙ないし街頭での抗議により、次から次えと倒れていった。ラテンアメリカは進路を変え始めた。多くの人が望み、必要だと思うほど速くは変化していないかもしれないが、変化は現実であり、世界全体に影響を及ぼしている。政治的混乱の時期を経過しつつあるが、われわれは、権利、社会正義、自由、参加を求めてやまない人々の創造性と願望を刺激している。 
 
  変革をもたらす政治・文化的運動はWSFの元になっているものであり、世界中で勝利している。多くの人たちは、そうした運動をいまだに真の運動とは見なさず、どのような影響をもたらすか分からずに突進している潮流のようなものと見なしている。WSFによって先鞭となったものは、地球上のあらゆるところで花開いている。その唯一の共通の基準は「基本原則憲章」で、それは基本的な発想では倫理的であり、文化と習慣を変える可能性において過激に政治的なものである。それは、「宗教裁判」や「政治局」が何が正しく、何が正しくないと判断する必要がないまま、世界中のさまざまな運動、団体、ネットワーク、連合、キャンペーンで利用され、解釈されてきた。 
 
 現在のような多中心的なWSFの考えは、この創造的で人間的な冒険から生まれている。その中心にあるのは、多様性の中に共通の人間性があるという認識、すべての人類の人権を尊重するという点での連帯、それに最大の共通の価値は、われわれが保全し、共有しなければならない自然とその資源であるという自覚である。 
 
 このことを念頭に置くと、世界の政治状況において、WSFが評価の基準として認められていることを祝うべきである。指導者、政治代表者、世界の「所有者」でさえ、この反体制市民(それなりに世界のパワーの一つにないっている)に対応しないといけないと感じるという事実は、われわれが影響力を持っているという証拠である。われわれのアンチテーゼであるスイス・ダボスの世界経済フォーラムが、われわれの議題から問題を採用する(近年、そうしている)必要を感じていること、多国籍の組織の代表者ばかりでなく、政府の指導者も、WSFと同じ懸念を持とうとしていること、毎日、メディアがわれわれの活動を報道しているということ、それらはみな、われわれの戦略が機能しているという明らかな印である。 
 
 多くに人たちは、われわれが不確実な進路を取るという危険を冒しているとみている。これに対して、われわれはこう答える。社会変革を達成するために民主主義の道を選ぶことは、不確実を人類共生の規範として受け入れるということである。それはまた、われわれの活力と信念、いつでも戦う用意があるという世界市民としてのわれわれの状況を示している。これが、カラカス、バマコ、ボウズキナ、カラチ、その他の世界の多くのところでのWSFの存在が、支配体制にそのような懸念と不安を生じさせている理由である。前進しよう! 
 
*カンディド・グリズボウスキー ブラジルの社会学者、ブラジル社会経済分析研究所(IBASE)所長、WSF国際評議会委員。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。