2006年04月15日00時59分掲載  無料記事
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ネパール情勢

【IPSコラム】ネパール 君主国(モナキー)における無政府状態(アナキー) クンダ・ディシット 

 最近のネパールは、二重の時間のゆがみの中にあるようだ。絶対君主になろうとしている中世の国王が、1960年代の毛沢東の中国に触発されたゲリラと死闘を演じている。間に挟まれているのが、民主派の政党、市民社会、メディアによって促進されてきた穏健で近代的なネパールである。しかし、それらは追い込まれ、生き残りのために苦闘している。(IPS/コラムニスト・サービス=ベリタ通信) 
 
 7政党の連合はギャネンドラ国王に対し、民主主義を回復し、軍隊に支援された2005年2月1日のクーデターを無効にするように求めて、全国で街頭活動を続けている。デモ隊は機動隊と5日間続けて激しい戦いを続けている。4人が死亡し、数十人がけがをした。全国で数百人の活動家とジャーナリストが逮捕された。 
 
 過去1年間、ほとんどのネパール人は反国王のデモは避けてきた。1990年の民主化運動以来の失政と汚職の責任は、政党にあるとして、政党を信用していなかった。民主主義に幻滅して、マオイストは1996年、ネパールを人民共和国に変えるために武装闘争を開始した。 
 
 ギャネンドラ国王は昨年、政党がぶち壊していると言って、マオイストを「従順にさせ」、平和を回復させる必要があるとして、権力を握った。しかし、ゲリラを追いかけるのではなく、民主的な組織を組織的に解体し、政党指導者を投獄した。このため、政党はマオイストとやむなく同盟を結んだ。ゲリラは、民主主義を回復するよう国王に圧力を掛ける政党の運動を支援した。 
 
 この1週間で、ネパールは限界点を越えた。1か月前までは歩道から見物していた普通の市民が、政党が主導する民主化デモを支持して、街頭に繰り出している。医者、学者、ジャーナリスト、公務員それに普通の市民が、夜間外出禁止令や脅しを無視して、デモに参加している。 
 
 先月の世論調査によると、圧倒的多数のネパール人はマオイストが暴力を放棄するよう求めている。絶対君主制も共和国も拒否している。ほとんどの人は、現国王は好きではないが、儀礼的君主制を望んでいる。 
 
 しかし、国王は聞く耳を持たない。街頭行動にもかかわらず、国を直接統治する干渉君主に固執しているようだ。 
 
 マオイストの指導部は、政党と隣国インドからの圧力から政治的な主流に加わろうとしているように見える。10年間の戦いの中で1万3千人の死者を出しているが、軍隊に圧倒的に勝利することは不可能であり、政党と同盟を結ぶことで政権を獲得する機会があると説得されたようだ。 
 
 国王と軍隊は、政党とマオイストとの連携を脅威と見なしており、政党に対して、武装反政府ゲリラと関係を絶たないと、「テロリスト」のように扱われるようになると警告した。特にネパール駐在米国大使は、マオイストと政党の間の協定に懸念を表明している。カトマンズに乗り込もうとするゲリラの策略と見なす。 
 
 政党指導者は、ゲリラは面目のある出口を求めていると確信していると言い、国王が停戦や和平プロセスを妨害しようとしていると非難している。実際、国王の下でネパールは、軍国主義の道をたどっており、世界で行方不明者の数が一番多い国で、人権侵害で悪名高い国になった。 
 
 今週は、国王、民主政党、マオイストの3者間でのネパールの権力闘争を解決するうえで極めて重要である。国王は14日、ネパール暦の新年恒例の演説で国民に和解を申し出る機会がある。もしそうしないなら、ネパールが共和国になるのは時間の問題である。 
 
*クンダ・ディシット カトマンズの週刊紙ネパーリ・タイムズの編集長・発行者 


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