2006年04月16日11時40分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200604161140310
沖縄密約
沖縄返還をめぐる「国家犯罪」を問う西山・国家賠償訴訟 池田龍夫(ジャーナリスト)
沖縄返還密約に関する「吉野文六(元外務省アメリカ局長)証言」の波紋は広がっている。現在東京地裁で「西山太吉・国家賠償請求訴訟」の口頭弁論が続いており、3月29日に第5回弁論が開かれた。
原告・被告側双方の提出文書についてやり取りがあった後、加藤謙一裁判長から大要次のような説明があった。
「原告本人(西山氏)の尋問を行ない、どのような思いから訴訟を提起したのか、現在どんな気持ちでいるのか、原告の受けた精神的苦痛などについて聞きたい。裁判長としては、原告側と被告側の主張が平行線で議論が噛み合っておらず、このまま弁論を続けてもすれ違いは埋まらないと思う。そこで、原告の尋問を行なった上で弁論終結とし、一度地裁レベルでの判断を下したいと考えている」
裁判長は「議論が噛み合っていない」と主張しているが、原告側代理人(藤森克美弁護士)再三の「密約事件・刑事裁判記録提出要請」に、被告側(国)は応じず、押し問答を繰り返しているのが現状である。その背景には、「吉野証言」で�猝�約の存在�瓩�明らかになった今も「密約はなかった」と強弁、隠蔽し続ける政府の姿勢が滲み出ている。
この第5回弁論での裁判長発言につき、藤森弁護士は「裁判長発言は、つまるところ、最高裁決定の誤判性についての判断に入らないということを意味するもので、被告側の主張に沿った判決が予想される。つまり、原告が入手した第1034号電信分の示す巨大な国家組織犯罪=密約の有無や、その違法秘密性には踏み込まない、全く判断する必要がないという姿勢だ。検察官のウソや故意に重要事実や証拠が隠蔽されていた疑惑解明の努力をしないで、『原告が入手した電信文の内容は対米請求権問題だけでなく、VOA問題、P―3問題、FEBC問題、共同声明8項及び財政支払問題、外資系企業問題などの非公知の事実を含むものであって実質秘性を有し、第1034号電信文全体として要保護性が認められ、(西山氏の)そそのかし罪が成立する』という最高裁決定の結論を前提とした判断になるのではないか」と分析している。
現段階での冷厳な裁判経過を報告したが、「沖縄密約」についての「政治権力のウソ」のベールは、密約を明記した「米外交文書」公開や「吉野証言」によって剥がされてしまっている。昨年4月の「国家賠償訴訟」提起以来、追及を続けている藤森弁護士は「米公文書の発掘や今年2月以降の『吉野証言』によって権力犯罪が明々白々になった。納税者の感覚、日本国憲法の下で暮らす市民の感覚から、最高裁の誤判に踏み込まないままでの幕引きは絶対に容認できない。今後も権力犯罪の違法性を追及する主張と立証を原則どおり展開し、裁判所に働きかけていく」と今後の決意を語っている。
次の第6回口頭弁論は6月6日に開かれる。事件は30数年前のことだが、米軍再編問題など、今日の日米関係にも通底する重大な問題だ。対米交渉が深刻化している現状認識を踏まえた上で、裁判の行方をウオッチし�犢餡犯蛤甅瓩鯒瓦蟠�く追及していかなければならない。
[脚注]
▼沖縄返還協定=1945年8月の日本敗戦後、沖縄は米国の占領下に置かれ、米軍の基地に利用された。祖国復帰を願う住民の強い要望を受け、佐藤栄作首相は69年、ニクソン米大統領と「核抜き・本土並み返還」で合意。71年の返還協定署名・国会承認を経て、72年5月返還された。
▼沖縄密約事件=沖縄返還直前の72年3月、社会党の横路孝弘議員が衆院予算委員会で、外務省の機密電文を示して、密約の有無を追及した。電文には、米国が払うべき返還土地の原状回復費400万�砲髻�日本が肩代わりするとの�猝�約�瓩�記されていた。この機密電文は、西山太吉・毎日新聞記者が外務省女性事務官から入手した特ダネで、横路議員に提供されたことが判明し、問題化した。警視庁は女性事務官を国家公務員法(守秘義務)違反、西山記者を�爐修修里�し�瓩虜瓩蚤疂瓠�西山記者は一審無罪の後、二審で懲役4月・執行猶予1年の逆転有罪、最高裁で確定した。
▼米公文書公開・国家賠償請求訴訟・吉野文六証言=米国の外交公文書公開により、2000年と02年に密約を裏づける文書が発掘された。日本政府は一貫して密約を否定しており、西山記者は05年4月「不当な起訴で記者活動を停止させられた」として、国に3300万円の賠償と謝罪を求める訴訟を東京地裁に起こした。06年2月、返還交渉当時の外交責任者だった吉野文六・元外務省アメリカ局長が、マスコミの会見に応じ「密約の存在」を初めて認めた。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。