2006年04月22日12時06分掲載  無料記事
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根津教諭の「君が代」拒否

道行く人や生徒たちとの「青空教室」を愉しみながら「出勤」をつづける

  新学期から3週間ほどが過ぎ、どこの学校にも子どもたちの元気な声が響いている。根津公子教諭(鶴川二中)は、卒業式での「君が代」拒否で東京都教育委員会から停職3ヶ月の処分を受けたため教室での授業を行なえないが、勤務校と前任校の校門の前まで毎日「出勤」し、道行く人や生徒たちと「青空教室」を開いている。春らしいポカポカ陽気の日、突風と雨の日、路上でどんな教育が行なわれているのだろう。(ベリタ通信) 
 
4月17日(月) 
 
 新聞の天気予報では「予想最高気温19℃」。久しぶりに春らしい天気、と思って多少薄手のセーターとコートに替えて今日は立川二中に。ところが、午前中は強風に叩かれっ放し。まだまだ防寒対策が必要だった。 
 
 登校時刻が過ぎ読書タイムに入った頃、出勤途上の男性が自転車を止めて私のところに来られ、激励してくださった。初めての方。上のお子さんは二中の卒業生だとおっしゃる。見ず知らずの方から声をかけていただくことがどんなに、私を励ましてくれることか。 
 
 昼食はAさんが私のために作ってきてくれた稲荷ずし、近くの公園に行っておいしくいただいた。 
 
 下校時は今日も3年生の生徒たち何グループか、何人かが入れ替わり立ち代わりして、おしゃべりを楽しませてもらった。 
 
「先生、給料もったいないから立っちゃえば」。 
 
「クビにされても、間違っていることには服従しないよ」と答えると、「君が代歌っても、戦争になるわけではないでしょ?」と言う。「大きく見れば、戦争に突き進ませないために闘っているのでもあるのよ、私は。でも、(鵜呑みにしないで)自分で考えてね」と答えると、「戦争にならないよう、先生がんばって」と。 
 
戦時になれば直接狩り出される対象である若い世代の声だ、と思った。 
 
 別のグループは、「君が代のことよく知らないから、(学校は)きちんと知らせてほしい」 
 
「知らないのに、立てって言われるのいやだ」 
 
「反対する人の意見も賛成する人の意見も聞きたい」。まったく生徒たちの言うとおりだ。 
 
 私は何をしたいのか?すべきなのか?答えを見つけたいBさんとしばし話をする。「周りの人の意見にはしっかり耳を傾ける。でも最後は自分の意思で行動を決めたいね」と確認しあった。「先生がんばって!応援しているよ!」――「私もBさんを応援しているよ」。行き始めた体を再度私に向け、「先生、努力は人を裏切らない、って」――「そうだね、努力は私を裏切らないよね。ありがとう。お互い、がんばろうね」。 
 
4月18日(火) 
 
鶴川二中へ。8時過ぎ、パトカーが速度をすごく落とし、明らかに私を覗き込むような視線を向けて通り過ぎて行った。 
 
8時5分には副校長が、やや遅れて校長がやってきて、登校する生徒に挨拶の声をかける。挨拶自体はいいことだけれど、今日も朝の職員打ち合わせには2人とも出ない。変だよな、と思う。 
 
11時、車を止め、自販機で飲み物を買った人が私の方に来られる。頭を上げると、60代らしき男性。 
 
「信念を貫くって大変なことですね。最後までがんばってください」とおっしゃり、今買われたお茶を差し出された。ご近所にお住まいの方だとのこと。原稿を書きながら、眠くてボーッとしていた頭の霧は一瞬にして消え、私はうれしさでいっぱいになる。 
 
感激がプラスされたお茶はとってもおいしかった。昨年立川でも、炎天下にいる見ず知らずの私に、飲み物や氷を差し入れてくださる方が何人もいらした。 
 
こうした方々にどんなに励まされ、支えられていることか。人間っていいな・・・。じわーっと、ひとの温かさに浸りながら想う。 
 
朝は、園児を連れた、おしゃれを愉しむお母さんが立ち止まり、プラカードを読まれて、「ひどいですよね」と声をかけてくださった。 
 
毎日挨拶を交わす方もできてきた。 
 
夕方の予定があって、3時半、「退勤」。 
 
4月19日(水)は、調布中への見せしめ的報復的人事異動裁判の控訴審2回目。 
 
調布中、立川二中に続き、鶴川二中も同様の人事異動であることが明確となった今、あらためて証人採用を要求したが、書面で十分として結審とされた。 
 
4月20日(木) 
 
今朝は副校長も校長も、パトカーも来なかった。私はただ立って、登校する生徒たちに挨拶の声をかけているだけなのだから、これでいいはずだ。 
 
職員打ち合わせが終わっただろう頃、「出勤」していることを告げに行くべきかと思っているところに出張に出かけようとする副校長と出会った。 
 
下校時間帯にはやっぱり、副校長が下校指導に出てきた。本当にご苦労様なことだ、と思う。 
 
今日は日中、突風と雨。穀雨。この天候の中、約束していた訪問者と語り合う。 
 
昨年の停職期間にプレゼントされたゴアテックスの合羽とズボンに包まれ、濡れも蒸れもしない。快適だ。 
 
でも、突風で傘は骨が折れてしまった。今日藤沢市では、電柱や屋根が飛んだ事故があったそうだ。 
 
放課後は、雨が上がり、台風一過のような空になる。部活動で校地の周りの道を走る生徒たちの姿をまぶしく眺めた。 
 
4月21日(金)は、8時から都庁でチラシまき。その後、署名提出と質問に教 
育委員会に行った。 
 
3週間が過ぎました。1日屋外で過ごすと、何をしたのでもないのに、夜は睡魔とのたたかいですが、愉しみながら「出勤」しています。 


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