2006年04月25日14時11分掲載  無料記事
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インドで代理出産がブームに 不妊の外国人カップルらが依頼

   経済発展が目ざましいインドの女性たちが、子どもを持てない外国人カップルのために代理出産を引き受けるケースが目立っている。米英などに比べ、代理出産の費用が3分の1程度で済むことも手伝って、代理出産を扱うインドのクリニックには外国から照会が多数寄せられている。貧しい生活を余儀なくされている女性たちにとって、代理出産で得られる謝礼は貴重な資金になっており、今後も増え続くと予想されている。(ベリタ通信=有馬洋行) 
 
  代理出産は、男性の精子を代理母の卵子と結合させる方法もあるが、インドでは、代理母は、別の場所で受精した卵を自分の子宮で育てるもので、文字通り「子宮を貸す」だけの格好になるという。精子や卵子の提供者は、本人の場合もあれば、そうでない場合もある。 
 
  子どもを求める外国人カップルは、長年不妊に悩み、疲れ果ててインドのクリニックに訪れている。勿論、地元のインド人のカップルにも相談に乗っている。 米サンガブリエル・バレー・トリビューンは、インドでの代理出産の増加傾向の様子を「妊娠のアウトソーシング(外部発注)」といった表現で形容している。 
 
  代理出産の数については正確な記録はあまりないようだが、米国で初の代理出産が行われたのは1979年という。1992年の推計では、米国では4000人の赤ん坊が代理出産で生まれている。 
 
  米国で代理出産を行うと、費用は全部で2万ドルから2万5000ドルかかる。これをインドで行うと、飛行機代を含めても3分の1の7200ドル程度で済む。 
 
  米紙ロサンゼル・タイムズによると、代理出産を行うインド人女性の年齢層は18歳から45歳。大半が貧しい若い女性で、代理出産に応じる第一の目的はお金だ。 
 
  子どもを生んだ場合の謝礼は2800ドルから5600ドル程度。一人当たりの年間の国民所得が500ドルのインドでは、数年分の所得を一人赤ん坊を産むことで稼ぐ勘定だ。この結果、夫が代理出産を応援することがしばしばだ。 
 
■規制する法律はなし 
 
  インドには米国と違い、代理出産などを規制する法律はなく、女性が搾取される恐れもある。またインドでは年間10万人の女性が妊娠中、または産後に死亡しており、安易な代理母ブームを警戒する声もある。 
 
 さらにインドの地方では、代理出産を軽蔑する傾向もあるため、人によっては妊娠中は自分の夫の子どもだと偽り、出産後は「死んでしまった」と言って、ごまかす女性もいる。 
 一方、代理出産を前に両親になる予定のカップルと、インド人の代理母が契約書を交わし、赤ん坊が生まれた後に、親権は主張しないなどの取り決めが行われている。 
 
 米国では、出産後に代理母が親権を主張し、裁判沙汰になることが多い。しかし、インド人の医師たちは、子どものない夫婦に対して同情を寄せるインド文化が、こうした無用な摩擦を回避できると考えている。 
 
 インドでは、子どもを産むことは神聖な義務と考えられている。このため、この義務に応えられない不妊のカップルに対する同情心が人一倍高くなっている。またヒンズー教では、現世で善行を施せば、来世で報われるとの教えがあり、これもインドでの代理出産の増加の背景にある。 


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