2006年05月09日14時17分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200605091417322

イラン核問題

【IPSコラム】一枚岩ではないイラン保守派 制裁は現実主義者の立場弱める ダリウス・ザヘディ アリ・アサレ

 今後数週間にわたって世界の主要国は、イランの核開発計画に対して、関与から経済制裁、一方的な軍事行動にまでいたる選択肢がある中、どのような方策をとるか合意を目指す。イランの保守派支配エリートが分裂していることから、主要国の動きはイラン国内の権力闘争の成り行き、さらにはイランの核計画の行方にも大きな影響を及ぼすであろう。(IPSコラムニスト・サービス=ベリタ通信) 
 
 ウラン濃縮計画を止めさせようとする国際的な圧力の高まり、国民の生活水準の向上を求める要求の高まり、それに改革運動の敗北のもとで、イランの保守派支配エリートの結束には、ついにひびが入った。国際社会はイランと交渉する際には、これらの各派閥の違いを考慮に入れる必要がある。どのような方策をとっても、特定の派閥に関する限り、利益と不利益な面がある。 
 
 アフマディネジャドが大統領に就任する以前は、保守派は1997年に始まり2005年まで続いたハタミの改革運動という「共通の敵」へ反対することで一致結束するのが容易であった。しかし、改革派がいなくなっても、派閥内の戦いは続いている。今回は保守陣営内の戦いになった。 
 
 最近、高まっている保守派内の派閥主義は、ホメイニ師のようなカリスマのある、まとめる力のある指導者がいないためにさらに激化している。現在の最高指導者ハメネイ師は、人気も宗教的正統性も欠いていて、権力基盤はずっと弱い。 
 
 保守陣営は一枚岩には程遠く、国の将来の方向、危機の高まりにどう対処すべきかをめぐって、分裂している。それぞれの派閥の下部組織は、それ自身の社会基盤を持ち、イランの組織化され過ぎた政治構造の権力の一部分を担っている。 
 
 アフマディネジャド大統領に代表される強硬派保守派は、影響力の強い治安当局と威圧的組織と親密な関係を持つ。彼らは革命防衛隊司令と義勇民兵のバシジ部隊に支持基盤を持つ。バシジは1979年にホメイニ師よって大衆運動として始まり、イラン・イラク戦争の開始後、苦境にあった軍隊を補完するために軍事化された。最近は、人気取り政治に利用されて、人口の40%近い貧困ライン以下に暮らす国民の支持を得た。 
 
 ラフサンジャニ前大統領に率いられる現実派は、イランの中産階級と近代的資本主義層に社会基盤を持つ。保守派グループの中では最もイデオロギー色が薄く、イランでの中国モデルの実行を推進し、高い経済成長と政治面での限定的な自由化とともに、重い社会的制約を取り除くことを支持してきた。 
 
 伝統的保守派は、イランのバザール(商人)社会と関係を持っている。彼らの利益を代表する主なグループはIslamic Coalition Societyで、その一般メンバーはイランにおける重要な経済的立場を占めるまでになった有力商人である。 
 
 保守陣営の分裂は国際社会にとって、イランにおける今後の政治的展開の道筋に影響を与える機会となっている。 
 
 軍事の選択肢を追求することは、アフマディネジャド大統領と強硬派が優位に立つ治安環境をつくりだすことになるであろう。そのような場合、強硬派はその気に乗じて、イランの市民社会の残存物を消し去り、多くの改革を後退させるであろう。 
 
 イランに制裁を加えることは、苦境にある私的部門と極めて小さな中産階級に大きな打撃を与えるであろう。イランの巨大なブラック・マーケットを支配する強硬派と伝統主義者に比べて、現実主義者の立場を弱めることになる。 
 
 一方、イランと関与することは、他の下位の派閥に比べて、現実主義者の立場を強めることになるであろう。何年も前から、現実主義者はイランと米国を含む国際社会との間の正常化を求めてきた。 
 
 米国との関係正常化は、経済状況の改善につながる。米国の投資は私的部門の発展を伸ばし、中産階級を大きくするであろう。このプロセスは長期的には、保守派の中のイデオロギー色が薄く、より現実主義的な集団の地位を強めて、民主主義への平和的で持続的な移行への基礎を築くことになる。 
 
 保守陣営での派閥政治の最終的な成り行きは、イランの核計画への国際社会、とりわけ米国の対応によって主に決まるであろう。どのような対応をとろうとしているのであろうか。 
 
*ダリウス・ザヘディ カリフォルニア大学講師。国際政治経済・平和紛争学 
*アリ・アサレ 同校で中東の政治経済を教える。。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。