2006年05月29日16時18分掲載  無料記事
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“太っちょ男”の米国横断に疑惑浮上 一部は歩いていなかった?

  180キロを超す肥満の男性が昨年、減量するために米国横断の徒歩旅行に果敢に挑戦。ことし5月に、出発から1年1カ月かけて遂にニューヨークに到着し、メディアの温かい歓迎を受けた。ところが、この徒歩旅行をめぐり、男性が途中で距離をごまかしたのでは、との疑いが浮上している。米メディアが報じたもので、事実ならば、徒歩旅行の評価にも疑問符が付くことになる。これに対し、この男性は、この報道は事実ではないと反論している。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 米カリフォルニア在住の元海兵隊員スティーブ・ボートさん(40)が徒歩旅行を開始したのは、2005年4月。ホテルや野宿したりしながらことし5月ニューヨークに到着。旅行中、行程を記録したジャーナルを自らのホームページに掲載していたため、「太っちょ男の徒歩旅行」としてメディアの関心も高く、ニューヨークに着いたときは、すっかり「時の人」になっていた。 
 
 ニューヨークの上空には取材用のヘリが舞い、朝のワイドショーにもゲスト出演した。1年1カ月間の徒歩旅行で減った体重は45キロ。「あまり体重が減っていない」との陰口もあったが、ともかく英雄好きの米国人の感情を刺激する挑戦旅行だった。 
 
 ボートさんの体重が増えだしたのは、昔人身事故を起こし、相手が死亡してから。うつ病にも悩まされた。家庭には二人の子どもがあったが、妻との関係もうまくいっていなかった。これを打開しようと、思い立ったのが、徒歩による米国横断旅行だった。 
 
 しかし、これに水を差す報道が最近飛び出した。26日付の米紙ワシントン・ポストは「本当にすべて歩ききったのか不明」とする記事を掲げた。 
 
 記事によると、疑惑がもたれているのは、ニューメキシコ州での旅程。同州のアルバカーキから約188キロ離れたサンタロサまでの行程が、不自然だというのがその理由だ。 
 
 ボートさんのホームページによると、アルバカーキからサンタロサまでの移動時間の極端に短くなっている。ワシントン・ポスト紙の情報源の一人になっているのは、ボートさんの妻エープリルさん(33)。 
 
 エープリルさんは現在、ボートさんと離婚訴訟中。当時、ボートさんは、妻に毎日連絡を入れており、妻はその話から、アルバカーキからサンタロサまでは、実際は歩いていないとの見方をしている。その場合、車のヒッチハイクで移動した可能性もあるが、その辺の事情はわかっていない。 
 
 これに対し、ボートさんも早速反論。記事は間違いで、実際に歩いていると語っている。アルバカーキからサンタロサまでの日程に混乱があるのは、ボートさんの旅行の日程を知って、熱心に追いかけてくる一群の女性グループを追い払うために、日程を操作したためだという。 
 
 昨年、ボートさんが旅行を開始するとメディアの話題に上り、これを知ったテキサス州のドキュメンタリー制作者が取材を始めた。また出版社からも本出版の誘いがあり、一部の金が先払いされた。 
 
 しかし、ニューヨーク到着後、本の内容をめぐり出版社と調整がつかなくなり、出版は見送られる公算が大きいという。またドキュメンタリー作品も、ボートさんの旅行の一部の日程に混乱があるとして、中止されることになった。ボートさんは失業中で、現在小さなモーテルに泊まっている。 


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