2006年05月30日10時38分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200605301038282

帝王切開選ぶ米高学歴の女性たち 極力避けるべきだとの声も

 米国では裕福で高学歴の女性が、自然な分娩よりも帝王切開を選択する傾向が強い。通常の分娩では、陣痛が始ってから赤ん坊の誕生までかなりの時間がかかるが、帝王切開は手術によって赤ん坊を取り出すため、出産時間が短縮されるとされ、この結果、一部の女性が自ら進んで帝王切開を選択している。しかし、多くの医師たちは、帝王切開は緊急時のやむを得ない措置で母体を守るためにも極力避けるべきだと話している。(ベリタ通信=苅田保) 
 
 米ダラス・モーニング・ニュースによると、帝王切開は1970、80年代に増えたが、1996年までは次第に減少。帝王切開は危険との意見が支配的になった。しかし、96年以降、実施件数がこれまでに約4割上昇するなど、増加に転じている。 
 
 テキサス州の産婦人科病棟を比較調査した結果で、興味深いデータが出ている。それによると、中流家庭以上の者が住む地区にある病院と、ヒスパニック(中南米系)らあまり金銭的に恵まれていない者が住む地区にある病院では、帝王切開の件数に著しい差が生じている。 
 
 2003年を基にしたデータでは、中流以上が住む地区では、出産数全体の約30%が帝王切開を受けていた。これに対し、ヒスパニックらが住む地区では、この比率は11%から13%にかなり落ちていることがわかった。 
 
 世界保健機関(WHO)は帝王切開の発現率を15%以下と設定しているだけに中流以上が住む地区での30%という数字は、2倍も高い計算になる。 
 
 帝王切開が増えているのは、高学歴女性による高齢出産が目立っているのも一因だという。通常の分娩では、出産に手間取ると、母体への危険性も増すとされる。 
 
 一方、帝王切開というと、分娩室で出産が遅れ、母子を守るために医師が緊急に実施するシーンを想像するが、妊婦が自らの意思で帝王切開を事前に要求する事例も増えている。 
 
▼赤ちゃんの呼吸器に影響も 
 
 28歳のあるキャリア・ウーマンは、根っからの弱虫。ビデオで分娩に奮戦する妊婦の姿をみて、自分にはとてもできないと考えた。婦人科の診察中に呼吸が荒くなったりしたこともあるため、夫に帝王切開をやると告げた。 
 
 もう1人は、初産という女性。苦痛を伴う分娩を心配していたため、医師と相談し、帝王切開を行うことを決めた。手術は20分で済んだ。可愛い子が生まれた。すこし痛みがあったものの、帝王切開をしたことに後悔していないと言い切った。 
 
 帝王切開は、通常の分娩より費用は2倍かかるが、中流以上の家庭にとっては、さほど無理ではない。素早く子どもを取り出せることのメリットの方が大きいと考えている。 
 
 多くの医師たちは、帝王切開は腹部を切るので、依然危険な処置とみている。出血、感染などに注意する必要があり、また場合によっては、子宮摘出の手術を受ける危険性も増すからだ。 
 
 手術後は痛みが残り、さらには帝王切開によって、赤ん坊の呼吸器の発達に影響を及ぼすとの報告も出ている。不必要な帝王切開に反対している団体の代表は、「帝王切開は、赤ん坊が世の中に出てくる理想的な手段とは思えない。母子双方に危険を与える」と話している。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。