2006年06月15日10時55分掲載  無料記事
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根津教諭の「君が代」拒否

「希望が見えるからたたかうのです」 韓国紙記者の言葉に励まされる

  毎週欠かさず送られてくる根津公子教諭(鶴川二中)の「停職『出勤』日記」が、めずらしく期日を過ぎても届かなかったので心配していたところ、最新の日記が昨夜届いた。遅れた理由については触れられていないが、韓国の新聞社の若い記者のインタビューを受けたりして忙しいが実り多い一週間だったようだ。「君が代」拒否への理解の姿勢のひろがりの一方で、相変わらず対話を拒否した「排除」の動きも強い。一教師の問題提起を国際社会のなかで考えてみたい。(ベリタ通信) 
 
6月5日(月) 
 
 立川二中へ。韓国の新聞社のAさんの訪問を受けた。インタビューに応じている時に下校時刻が来てしまい、インタビューは一時中断。次々に立ち寄り、あるいは挨拶してくれる生徒たちと今日も楽しいひとときを過ごした。 
 
 積もる話のある生徒。教室で書いたお手紙を、ポケットから差し出してくれた生徒。登校時に会ったから、帰りにプレゼントしようと思ったのだそうだ。またある生徒は、お客さんに遠慮し、気を遣って、「また今度。さようなら!」と帰っていった。「今度いつ来る?」―「木曜日、かな」何度も何度も答えた。 
 
 今週末からの修学旅行、皆元気で行って来てね。 
 
 記者のAさんに、「韓国の人は自分の考えをしっかり言い、またそれを行動に移しますが、なぜできるんでしょう」と尋ねた。彼女は、きっぱり、「独裁政権を倒し、民主化を進めることができた体験が大きい。希望が見えるからたたかうのです」。 
 
 たぶん30代半ばであろうAさん。ものすごくすがすがしい表情をされた。当時高校生(?)だったAさんの、感動の体験であり、生きる基本になっているのだろう。そう、私も“希望”を捨てないから、行動しよう、と思うのだ。 
 
6月7日(水) 
 
 鶴川二中。門前に立つ私をビデオ撮影するため、Bさんが来られた。私を撮っているだけなのだから肖像権の問題はないはず。出てきた副校長にはその旨話したので、誤解は解けたと思っていたら、そうではなかった。 
 
 近くの公園で早お昼を済ませ戻ると、私の自転車とプラカードを硬い表情で見ている人たちがいた。「町田署の者」とおっしゃる紺色のジャケットを着た男性、駐在所のおまわりさん、そして女性が二人。保護者ということだった。 
 
 女性に声をかけると、「ここを退いてほしい」とおっしゃる。「私は、都教委のやっていることが 教育に反すると思うから、起立できないのです。学校で起きたことでの処分で、私は間違ったことはしていませんから、ここは退けません。なぜ、私がここにいてはいけないのか、その理由をお聞かせください。また、私の気持ちも聞いていただきたいと思います」と私は答えた。しかし、話はされずに帰られた。 
 
 「子どもたちが、どういう人に育ってほしいのか」「どうすることがすべての人の幸せにつながることなのか」を基軸にして、この問題について意見の異なる人たちと語り合っていきたいと切に願う。 
 
 「君が代」処分は、私個人だけのことではなく、東京で起きている、しかも生徒たちが生活する学校で起きている身近な社会問題なのだ。生徒は、その渦中にある私を見て、社会を知る一助にすることはあっても、動揺などしない。 
 
 法令もまた、子どもを社会問題から隔離せよなどとは言っていない。子どもの権利条約は、子どもの「知る権利」を謳い、学校教育法は「中学校の目標」として、「(生徒に)公正な判断力を養うこと」を掲げている。 
 
 公正な判断力は、社会問題から遠ざけられていて育つはずはなく、また、選挙権を持つ20歳になって突然身につくものでもない。 
 
 小さい時からことあるごとに身近な社会問題に触れ、考える材料と意見を交わす機会が保障されることによって可能となる。世界を見渡しても、それをさせない国は、情報操作をする独裁政権国家くらいのもの。「先進国」と言われる国で、子どもには触れさせない、という国は日本以外にどこにあるだろう。 
 
 国際社会でよく日本人は、「自分の考えを持たない」と笑われるが、それも、社会問題を子どもたちから遠ざけ、また、大人社会ですら日常会話にしない、その結果ではないだろうか。 
 
 私の行為を、「排除」に動くのではなく、社会問題の材料の一つにして、意見交流をしたらいいじゃないか、と思う。そうすることによって、子どもたちの思考も深まるはずだ。好き嫌いの感情で判断するのではなく、ことの真理に照らして考え、意見を交わしてほしい。私も異なった意見に耳を傾けたいし、私の考えも聞いてほしい。 
 
 「君が代」で起立しない私の気持ちを知っていただきたいと考え、夕刻鶴川駅前で、個人名を入れて書いたチラシを道行く人に手渡した。 
 
 ディスカッションを大事にする校風を持つC高校の生徒たちの中には、「ください」と言ってくる生徒が多数目立った。 
 
6月9日(金) 
 
 都庁前での情宣、チラシ配りは今日が7回目。その後教育情報課に行くのは、8回目。 
 
 3ヶ月前から出してきた署名の扱いについての質問と、その回答を求める中で出てきた新たな質問への回答を求め、今日その時間設定をお願いしていたが、ファックスで「部屋の確保ができなかった」と断ってきた。 
 
 私たちは、教育情報課長に署名を提出しがてら、私たちの気持ちを伝え、「部屋でなく、廊下の隅ででもかまわない」「今の時点で答えられるものだけでいいから答えてほしい」と直接要求をした。 
 
 今日回答をもらうことは叶わなかったけれど、夜、次回の設定打診が教育情報課からファックス送信された。継続は力なりか。「これ以上の処分をするな」の署名提出総数は、今日11回目で18063筆。 


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