2006年06月21日03時52分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200606210352173

リバーベンド日記

「民族粛清」が行われている 悪いニュースばかり続く

■2006年6月6日火曜日 
 
▼ひどい一日・・・ 
 
 まったくひどい日だった。たまらない暑さで目が覚めた。この地域に電気がくるのは、だいたい4時間くらいで、頼りは発電機なのだけど、それも天井の扇風機が使えるってことで、エアコンを使えるほどではないの。 
 
 発電機が動いていないことを示すいやな静けさでわたしたちは目が覚めた。Eがお隣りに行って確かめてきた。今日一日、発電機は動かないということだ。責任者のお隣さんは、時間が空き次第「発電機ドクター」を連れてくることになっていた。 
 
 電気は夕方6時にわたしたちをあざけるかのようにたったの20分だけきた。ぱっと電気が点いた瞬間、わたしたちは台所に集まっていたのだけれど、近所の子供たちがわっと歓声をあげるのが聞こえた。 
 
 その前に、バグダードのサルヒーヤ地区から多数の人たちが拉致されていったというニュースを聞いた。サルヒーヤはたくさんの旅行代理店でにぎわっている地区だ。戦争からこのかたというものヨルダンやシリアに逃げ去っていく人たちがこの地区のあちこちのオフィスで予約を取るので特に忙しくなっている。 
 
 この地区に住んで働いている人たちによると、警察が15台くらいの車でのりつけて、制服姿の男たちが路上や自家用車から引きずり出した市民に頭から袋を被せ、警察の車に追い込んでいったという。抗議しようとするものは容赦なく殴られるか、車に詰め込まれた。連れて行かれた人たちの数は全部で50人くらいとみられる。 
 
 内務省の得体の知れない男たちによる市民の一斉検挙や連行は、イラクのいたるところで行われているけど、こんなに多くの人々が一度に連れて行かれたことはなかった。気がかりなのは、イラク内務省が、この最近の大量拘束についての関わりを否定していることだ。(これは彼らの新しい傾向で、大量拘束、拷問、暗殺などについては、人権団体が絡んでくるので、そんなことはなかったと否定 
するのだ!) これは良くない兆候だ。つまり、この人たちは多分数日内に死体で発見されることになるだろう。わたしたちは、彼らが生きて帰ってくることを祈っている... 
 
 その日のうちに、もうひとつとりわけ悪いニュースがはいってきた。ドーラ地区で、スクールバスに乗っていた学生たちが殺された。なぜなのか誰もはっきりわからない。彼らがスンニ派だったのか?それともシーア派だったのか? 
 多分両方混ざっていたのだろう。学年末試験のために暑さに耐えながら夜遅くまで勉強していた彼ら。家を出る時には、及第できるかどうかということしか考えてなくて―ご両親は激励と祈りの言葉で彼らを送り出したのだろう。 
 彼らはもう永遠に家に帰ることはない。 
 
 現在、民族粛清が行われていることを否定するのは不可能だ。人々はIDカードに従って殺されている。両方の側の過激主義者たちが、生活を不可能なものにしている。彼らの何人かは“ザルカウィー”のために働き、他はイラク内務省のために働いている。シーア派教徒は“スンニ・トライアングル”の中で殺され、“ウマル”という名(注:第2代カリフであるウマルにちなんだ名前。アリーの血統しか認めないシーア派は、カリフウマルを認めず、アリーの地位を剥奪した者として忌避している)の1ダースものスンニ派教徒の死体が、バグダードの死体置き場に運び込まれていると聞いている。自分が実際に自動車爆弾を懐かしく思うようになるなんて思いもしなかった。少なくとも自動車爆弾は人を区別したりしないもの。スンニかシーアかといって、だれかを探し出して爆破するなんてことはしないわ。 
 
 防衛や内務など、重要な省には大臣がまだ置かれていない。イラクはバラバラになっていて、マリキと彼の仲間は依然誰が権力を持つべきか言い争っている。 
 
▼家族を海外に送るイラク議員 
 
 誰がより外国占領者の手を借りてイラク人を抑圧するのに適任であるか? 
 その上さらに、イラク議会は7月と8月に‘休暇’をとるという噂だ。彼らは言い争いや権力争奪戦に疲れ果ててしまったので、2ヶ月の休暇が必要だってわけ。がっちりと警備された家を数カ月留守にして、家族と海外で過すのだ。(家族はとっても大切だから、イラクになんか住まわせられないの) 
 
 どこに行けば死や破壊から逃れられるっていうの?アメリカ人はこの進歩に満足だっていうの?ブッシュはこれでもまだ、わたしたちが進歩してるって言い張るの? 
 
 エミリー・ ディッキンソンが書いてる、“希望には羽が生えている”って。もし彼女が書いてることが本当なら、希望は遠く―イラクからとても遠くに飛び去ってしまった... 
 
午前2時53分 リバー 
 
(翻訳:リバーベンド・プロジェクト:ヤスミン植月千春) 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。