2006年06月25日12時34分掲載  無料記事
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根津教諭の「君が代」拒否

自分は「君が代」を歌うのに、なぜあの人は拒否するの? 好奇心旺盛なGさんとの対話

根津公子です。 
 
停職「出勤」日記(12)をお届けします。毎日何かしら新しい出会いがあります。 
 
5月19日(月) 
 
立川二中へ。午前中一時雷雨。あとは、真夏を思わせる日差しだった。 
 
生徒たちに「おはよう」の声をかけ、出勤途上のいつもの人との挨拶を終え、JRのレール破断についての本(安田浩一著)を読んでいた。人影に気づき顔を上げると、プラカードを見て青年が立っている。 
 
青年はプラカードを指差し、「僕も全くこのとおりだと思います」と。左利きのことを教員にとがめられた体験があり、そこからわかったことが、「先生だから正しい、偉いのではない。先生も一人の人間に過ぎない」ということ。だから、「指示だから従うものとは思わなくなった」と言う。 
 
彼は八王子のA中、B高校出身ということで、一層親近感を持った。今日読もうと思って持ってきた、私の停職「出勤」日記が掲載された「戦争と性」25号(谷口和憲編著)をプレゼントした。 
 
今日のプラカードには、「君が代」不起立停職3ヶ月処分は不当です/憲法19条 「思想および良心の自由はこれを侵してはならない」に違反すると思います」「『君が代』について説明さえせずに起立させる。『指示には考えずに従え』というに等しいことです」と書いていた。 
 
午後はCさん(教員)の訪問を受けた。偶然にも彼女が小学校で担任したDさん姉妹が二中に転校してきていて、彼女はDさんたちとの再会も果たした。 
 
今日は5時間授業で、明日は定期テスト。だから、下校時刻が早い。「今日は早く帰って試験勉強をしよう。来週、ゆっくりおしゃべりしようね」と言いながら、やっぱり、1時間も入れ替わり立ちかわりでおしゃべりを楽しませてもらった。「二中に来て皆に会うと元気が出るよ」とふと漏らすと、「えっ、そんなふうに言われるとうれしい!」と。JRのレール破断についての本を見つけ、「読みたい!」と、一人の生徒が借りて帰った。 
 
生徒たちが皆下校して5分も経たないところへ、今度は卒業生の訪問。学校にも私にも用事があってのことだった。彼女とは、歯医者さんの予約時間ぎりぎりまでおしゃべりをした。 
 
相手(友だち、家族)を想う優しさに触れ、私の心もあったかくなった。 
 
彼女からもらった私宛の手紙を、家まで待ちきれず、信号待ちの車中で読み、幸せに浸った。元気200%の帰路だった。 
 
6月21日(水) 
 
調布中(2003年度)への異動控訴審判決が出された。 
 
異動要綱は「法律、規則でも条例でもなく、・・・内部的指針に過ぎない」のだから「その行使は都教委の合理的な裁量に委ねられており」、通勤時間が異動要綱の定める90分を10分や15分超えても構わないという、不当判決。 
 
同じく不当判決ではあったが、「異動要綱に合致しない転任処分については、特段の事情がない限り、裁量権の逸脱があると推認され」ると原則は一応押さえた、Eさんの控訴審判決および私の地裁判決(いずれも05年)から大きく後退している。 
 
今回の控訴審判決に沿えば、都教委が、異動要綱に通勤時間を明記する必要も、いや、異動要綱それ自体を作る必然性もなくなってしまう。都教委の裁量、すなわち、都教委の意のままに行うと言うのだから。 
 
実際、2003年7月都教委はさらに異動要綱を改悪し、「通勤時間120分」「1年ごとの異動可」とした。「校長に楯突く教員は・・・1年ごとにどんどんぐるぐる回」せ、と米長教育委員が発言したそのままがいま進行している。 
 
私が鶴川二中へ異動させられたのは、このサンプルみたいなもの。1日4時間を超える通勤時間は当事者にとっては、日常的懲罰そのもの。それはさておいても、1日の交通費は2000円。税金の使途として、大いに問題だ。 
 
6月22日(木) 
 
鶴川二中へ。報道関係の仕事をされているFさんの取材を受けた。 
 
そのあと、初めての方Gさんの訪問を受けた。近所にお住まいで、2週間ほど前に通りかかられ知り合いになったHさんのご友人とおっしゃる。Gさんのお住まいもここから徒歩圏とのこと。 
 
Gさんご自身は「『君が代』を、日本人皆の幸せを願う自然なものとして歌う」とおっしゃる。「でも、強制はよくない」とも思われる。 
 
私について、なぜ立たないのだろうと不思議に思われ、直接会ってみたいと、訪ねてくださったのだった。 
 
好奇心旺盛、ご自分の目で見、頭で考えるスタンスの、魅力的な女性。話しはやがて、操作された情報や事実の見極めについてに及び、何事も自分の目で見、頭で考えることが大切であること、自分の考えと違う人を排除するのではなく、違いを論じ合うことに意味があるということで大いに一致した。 
 
午後はHさん母子が、帰りがけに立ち寄ってくださった。お子さんは私にお菓子を二つ、差し入れてくれた。自分のおやつを分けてくれたのかな? 
 
ところで、ここのかなりの生徒は、私の行動を見て、「へんなやつ」と思っているのかもしれない。でも、そこでピリオドを打たずに、なぜ、どうして?の疑問を大きくし、社会を覗いてほしい。せっかく出あった事実にしっかり目を向け、考えるきっかけにしてほしい、と思う。 
 
6月23日(金) 
 
都庁でチラシまきと情宣。 
 
チラシには、私が起立できない理由を主に書いた。今日も13人の方が参加してくださった。 


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