2006年07月11日02時44分掲載  無料記事
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自殺、偽装説まで出ているエンロン元会長の死亡 米ネット上には辛らつな批判も

  米エネルギー大手エンロンの創業者ケネス・レイ元会長(64)が5日に心臓発作で急死したが、インターネットのブログや掲示板には、巨額の不正会計で経済界を大混乱の陥れたレイ元会長に対して、「都合いいときに姿を消した」などと、辛らつな言葉があふれている。巨額の不正会計で、エンロンを破綻させ、多くの投資家、従業員をだました企業犯罪の張本人だった。証券詐欺などの罪で、ことし10月に量刑が言い渡される予定だったが、突然の死去で、法律上は、罪を問われなかった扱いになるという。(ベリタ通信=苅田保) 
 
  米メディアによると、レイ元会長は、米テキサス州ヒューストンを拠点に総合エネルギー企業として短期間でエンロンを優良企業に押し上げた。しかし1980年代末から、粉飾会計によって利益の水増しを図るなど、不正な経理や取引に手を染めるようになった。 
 
  株価は次第に下落し、2001年には不正会計疑惑が表面化した。同年12月には破産申請を行い、事実上倒産した。この結果、従業員ら5000人以上が職を失い、投資家の株式や、エンロン株を買っていた従業員の年金資金など数十億ドルが泡のように消えた。一時は米国市場最大の企業破綻といわれた。 
 
  その後レイ元会長やジェフ・スキリング元最高経営責任者(CEO)が、エンロン株が下落するのを見越して、2000年以降に大量のエンロン株を売り抜けていた疑惑が浮上。ことし5月には、ヒューストンの連邦地裁の陪審から、有罪の評決を下され、10月に量刑が言い渡される予定だった。量刑は20年以上と予想され、刑務所に送られる可能性があった。 
 
▼ブッシュ大統領は安堵? 
 
  レイ元会長の急死の直後、ネット上には、「刑務所に行くのを避けるために毒をあおり、心臓発作を誘発させたのでは」とか、「彼が死んだのはインチキではないか。本人かどうか、DNA鑑定が必要だ」など、陰謀説も多く登場した。 
 
  レイ元会長がブッシュ大統領と親密な関係にあったことは知られている。2000年の大統領選挙の運動期間中、ブッシュ氏は、頻繁にエンロンの企業専用機を使用したという。共和党に対しても大口の献金をしている。 
 
  このため、ブログには、「ブッシュは、安堵しているのに違いない。なぜなら、レイに恩赦を与えるという嫌な仕事をしないで済むからだ」という皮肉の書き込みもあった。 
 
  レイ元会長はミズーリ州の小さな町に住む牧師を父にして生まれた。けして裕福ではなかったが、大学で経済学を学び、博士号も取得している。苦学して企業のトップに立ったことで「アメリカン・ドリーム」の体現者でもあった。 
 
  米カリフォルニア州のペパーダイン大学の関係者は、レイ元会長の人生は「ギリシャ悲劇そのものだ」と話している。無から身を起こし、成功を収めた。しかし、「不遜は強者を滅ぼす」との先人の教え通りになったと解説している。 
 
  レイ元会長はことし6月に、検察当局から、エンロンを通じて不当に手に入れた分として4350万ドルの返還を請求されているが、急死により、この請求にも微妙な影響が出ると予想されている。 
 
  一方、レイ元会長は、有罪評決後も、一貫して容疑を否認。控訴して争う意志をみせていた。今回、量刑が言い渡される前に死亡したため、法律的には罪に問われなかった形になるという。元会長の友人たちは、ストレスとはずかしめが発作の引き金になったと話している。 


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