2006年09月16日23時01分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200609162301456

解雇撤回と職場復帰をめざし粘り強い大衆闘争を継続 鉄建公団訴訟判決1周年集会

  「国鉄労働者1047名の人権回復を!怒りをひとつに 鉄建公団訴訟判決1周年 9・15中央集会」が15日、都内で開催された。この日のために北海道・九州から始まったサイクル・キャラバンに参加した国労組合員たちも東京・新橋の鉄建公団(注1)前に午後5時にゴールインし、集会に駆けつけた。会場は主催発表で920名の参加者で埋め尽くされ、参加者らは解雇撤回と職場復帰を求めて粘り強い大衆闘争いを続けていく必要性を訴えた。(ベリタ通信) 
 
 1年前のこの日、東京地裁は、1987年の国鉄分割民営化の際に国鉄当局が国労組合員であるという理由で1047名を新会社JRに採用せず解雇した措置を、不当労働行為と認める判決を下した。しかし、判決はその一方で「解雇は有効」とし、解雇の撤回、職場復帰を求める国労組合員の主張は退けられた。控訴審では、 訴訟救助を巡って攻防が続いている(注2)。 
 
 国鉄労働組合を辞めればJRに採用するという要求を拒んだがために解雇され、アルバイトで生活を凌ぎ、年金まで奪われた国労組合員と家族の20年にわたる生活の苦しさは筆舌に尽くしがたい。子どもの教育費や家族の将来について考えればなおさらだ。それでも家族は助け合い闘ってきた。その組合員の平均年齢も53歳に達し、41人の仲間が解雇撤回と職場復帰の闘いの志なかばで他界している。 
 
 集会では、国鉄闘争共闘会議の二瓶勝久議長が挨拶の冒頭、中曽根首相の「国労を解体し、総評、社会党を崩壊させるため」に国鉄分割民営化を断行したという発言が不当労働行為を自ら認めたものだと言及。「当事者と家族の生活を考えると早期の解決が必要だ」と強調した。その一方で「政府は(我々を)相手にしていない。9・15判決を勝ち取った3倍も4倍もの大衆闘争をしないと解決しない。簡単に解決すると思っているのは間違いだ」との厳しい現状認識を踏まえた上で、「大衆闘争と裁判闘争をともに闘い抜く」という姿勢を明らかにした。 
 
 引き続いて加藤晋介弁護士と評論家の佐高信さんとの対談の中で、加藤弁護士は、「国鉄分割民営化では、日本の労働者がどれだけ強いかということが試された。赤字だと言われれば、我慢できない。70年代の石油ショック以来、民間労働者は過労死するまで働いた。国労はどうかと試したら、自分だけはという意識が出て負けた。赤字なのでリストラしないといけないのだと言われれば、崩れてしまう。これが日本の労働者の姿だ」と指摘。労働者の団結権が崩れてきた問題点について説明した。 
 
 加藤氏は、「あいつが切られるのなら俺も切られようという気持ちがない。公共交通が地元で果たしている役割、利潤と効率が導入されて変化していく過程を踏まえて、国鉄闘争を総括しないと労働運動の再生はない」と述べ、この国労闘争が社会全体の問題であることを強調した。また国労組合員を解雇したのは当然という発言が裁判所に見られる点を指摘し、「利益につながらない人間は人として認めない」という風潮が背景にあると批判した。 
 同氏はさらに、「今日の新自由主義の中で、組合員はずるいという発想が広がり、職場は無権利でバラバラになっている」という困難な状況を指摘した上で、我々に求められているのは「個人と個人が切り離されてバラバラな状態を克服するための具体的な問題意識を形成する力量だ」と強調した。 
 
 最後にサイクル・キャラバンに参加した国労組合員から挨拶があった。中野勇人さん(北見闘争団)からは、キャラバンの最中に訪ねた埼玉県の狭山市で冤罪裁判を闘う石川一雄さんの声援を受けたことから、国労の戦いがあらゆる社会運動と一緒になって不正を告発することで、当局に手強いと思わせる運動に発展させたいとの発言があった。水本俊生さん(北見闘争団)は、最年少の22歳で解雇されて20年 、不当な解雇を撤回させたいとの一心で耐えて闘ってきた思いを吐露した。 
 
 壇上では、日本の本社への抗議に来日中の韓国山本製作所(本社、東京都板橋区)の解雇された労組員が国労の組合員と並び、連帯の挨拶を述べ、インターナショナルな雰囲気の中で集会を締め括った。 
 
 
 
(注1)鉄建公団(日本鉄道建設公団の略称) 
 整備新幹線の建設や、JRや私鉄の鉄道建設工事の肩代わりを行うことを目的とする特殊法人として、1964年に設立。1998年に時限立法の期限切れによって解散した日本国有鉄道清算事業団の業務を同公団が継承した。現在は日本鉄道建設公団と運輸施設整備事業団が統合されて、04年10月からは、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構となっている。 
 鉄建公団の名称が引き続き使われているのは、訴訟を起した2002年1月の時点で「鉄建公団」だったためで、それ故、通称「鉄建公団訴訟」と呼ばれている。原告団も「鉄建公団訴訟原告」。新機構設立後に裁判闘争に入った二次訴訟グループは、「鉄運機構訴訟」と呼ばれている。 
 
 日本国有鉄道清算事業団は、1987年4月1日にJRグループ各社への分割・民営化された日本国有鉄道(国鉄)の固定資産売却益による長期債務償還や国労組合員(政府やマスメディアは、余剰人員と呼んでいた)の再就職促進などを行うことを目的として設立された特殊法人。 
 
(注2)控訴審での訴訟救助を巡る攻防 
控訴審=不当な訴訟救助却下を跳ね返す取り組みを! 
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tomonigo/gonews/no63/no63-4.htm 
 
 
【参考】がんばれ国労闘争団 
http://www1.jca.apc.org/ouen/040520index.html 
【参考】手応えあり! 1日行動の疲れも吹き飛ばした元気印の9・15中央集会 
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tomonigo/news2006/060915syukai.htm 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。