2006年09月29日01時28分掲載  無料記事
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若者が遺体袋に入る前に イラク戦死者家族会シーハンさんの「脱走の勧め」

  平和を求める戦死者家族の会のシンディ・シーハンさんは、2004年4月4日にイラクで戦死した息子のケーシー・オースチン・シーハン特技兵が、なぜイラクで死ななければならなかったのか、ブッシュ大統領に直接説明を求め、ブッシュ大統領の牧場のあるクローフォードに運動拠点キャンプ・ケーシーを作って、反戦運動を粘り強く続けている。そのシンディ・シーハンさんが、19カ月間無断で離隊していた陸軍特技兵マーク・ウィルカーソンがキャンプ・ケーシーに救いを求めてカミングアウトしてきたことを、トゥルースアウトに載せた小論で明らかにした。ワタダ中尉は軍隊の中でイラク行きの命令を拒否して闘っているが、マーク・ウィルカーソン特技兵のように無許可離隊した兵士のカミングアウトが、これから増えてくるのではないか。(TUP速報) 
 
 
 「いくつもの義務」と題するその小論は、ウィルカーソン特技 
兵が所属していたフォート・フード基地に出頭した8月31日の数日前に書かれたものと思われる。出頭したとの記事はIPS News Agency のサイトhttp://ipsnews.net/news.asp?idnews=34539 
に、その記事の抄訳はJANJANのサイト 
http://www.janjan.jp/world/0609/0609080869/1.php 
に、9月9日の記事として掲載されている。 
 
 
■いくつもの義務 シンディ・シーハン 
 2006年9月1日(金) 
 
 私はテキサス州クローフォードに土地を買いました。身の毛のよだつような悪夢である占領がイラクで終りを告げるまで、それとも、私たちの世界がブッシュ政権の下でもう苦しむ必要がなくなるまで、あるいはその両方が実現するまで、みんなのキャンプ・ケーシーを続けるためです。けれどもこの土地は平和のために役立てる恒久的な場所、希望のよりどころ、また、兵士の避難所となるでしょう。やってくる兵士が軍籍にとどまることを望んでいるか離脱を望んでいるかにかわらずです。 
 
 第啓.ャンプ・ケーシーとそれに先立つすべてのキャンプ・ケーシーに、どんなに多くの市民が文字どおり血と汗と涙を投入してきたことでしょう。すばらしい平和活動家の皆さんが何日も、それどころか多くは何週間もの日々を投げ打って、暑くて汗だくになる、干天で埃まみれのテキサス州クローフォードにやってくるのは、自由のある平和をこよなく愛する人々がこの国にいて、自分たちの生きているうちにそれを現実のものとするためなら、いのちを捨てることも辞さないのだということを、ブッシュ株式会社に、わが国に、そして私たちの世界に、見せるためなのです。 
 
 今年のキャンプ・ケーシーは、昨年夏によく(いや、それほどでもなかったかもしれませんが)メディアに取り上げられたほどには取り上げられてきませんでした。それは逃げのジョージ(訳者註:ブッシュ大統領)が、キャンプ・ケーシーが頑張った日数に比べて短い日数しかクローフォードで過ごさなかったからです。どういうわけか、メディアはジョージを追っかけるのです。 
 
▼22歳の陸軍特技兵の訪問 
 
 私たちみんなのまじめな努力と私が使った資金、どちらも今日突然充分に報われることになりました。それはフォート・フード基地から出て19カ月間無許可離隊していたマーク・ウィルカーソンという22歳の陸軍特技兵が、私たちの駆け込み寺の呼びかけを聞きつけて、フォート・フードの軍当局に出頭する前の最後の数日を過ごそうと、今日キャンプ・ケーシーにやってきたからです。 
 
 イラクに一度参戦したあとマークは、この戦争は、最初は支持していたのだけれど、誰かが言っていたのを聞いた通り、不法で不道徳だと思うようになりました。良心的兵役拒否者の資格を獲得するため、まともな筋から懸命に働きかけましたが、認められませんでした。それで、イラクへ二度も派遣されるかわりに、無許可離隊することにしたのです。 
 
 キャンプ・ケーシーの駆け込み寺の呼びかけを聞いて、マークはやってきたのです。ここで住家と心から愛し支えてくれる新しい家族に出会ったのでした。マークは自分の決心にどんな対価でも払いたいと思っており、キャンプ・ケーシー平和協会や平和行動で、私たちと一緒に活動したいと思っています。 
 
 キャンプ・ケーシーに来ている記者たちがマークに何度も何度も聞いていたのを私は耳にしましたが、その一つの問いはこんなふうでした。 
 「一旦宣誓したからには宣誓を全うする義務がある、とは思いませんか?」 
  マークは、自分の良心に従う義務もあると答えて、この質問を見事にさばいていました。あらゆる合理的で健全な基準にてらして、この戦争が不法であり不道徳でもあるということがわかったので、嘘つきの政治指導者たちが皆に強制する戦争犯罪と人道に対する犯罪には、道徳から言って参加するわけに行かなかったと彼は 
言いました。 
 
 私はたくさんのニュースを見ていますし、まれにしか行われないブッシュの記者会見の記事も読んでいます。でも、誰かがマークにしたのと同じ質問をジョージ・ブッシュにするのを見たことが一度もありません。この総司令官は、ベトナム戦争のとき兵役義務をはたさなかった人です。アラバマ国家航空警備隊に転属になり、褒賞をもらっていますが、彼が任地にいるのを見て彼に賞をやろうと提案した人がいたわけではありません。 
 彼は軍務に就いたことなどなかったからです。ウィルキンソンに繰り返し向けられた問いと同じ問いが大統領に向けられるのを見たいものです。どうして大統領は、22歳の特技兵(訳者註:給与では上等兵と軍曹の間、伍長と同等の兵士)を、とんでもない口実をつけた戦争のためにイラクに送って、戦わせ、ことによれば死なせもし罪もない人々を殺させるなどということができるのでしょう。自分は、とんでもない口実による戦争で同世代の多くの若者が、闘い、命を落とし、無辜の人々を殺さなければならなかったときに、父親のつてを利用しまくって逃げていたというのに。 
 
 ほとんどの共和党の上院議員、連邦議会議員、行政府職員、それから「先約ありき」のディック・チェイニーもそうですが、それが誰であれ、自分がベトナムに行かなくてすむために必要なことは何でも実行したことにとやかく言おうとは思いません。私がどうしても問題にしたいのは、60年代と70年代に軍産複合体の手から逃れた彼等が、次世紀最初の強欲のための戦争で私たちの子どもを貪欲な怪物にえさとして与えていることです。連邦議会は宣戦布告をするという憲法に定められた責任も放棄し、戦争マシーンの鍵を無責任な脱走兵ブッシュとその“副”徴兵忌避者チェイニーに手渡したのです。さらに言えば、一国の総司令官たるもの、配下の軍隊を賢明に使う義務があるのであって、無謀にまた不注意に使ってはならないのです。それから、私たち国民に本当のことを言わなければならないという義務はどうなっているでしょうか? 
 
▼ワシントンの腰抜けどものために死ぬな 
 
 誠実と名誉心あふれる勇敢な若者にたいして義務の全うについて問うようなうさんくさい「勇気」は私にはありません。かわりに報道陣のだれかに、マークとケイシーの総司令官であるジョージ・ブッシュに同じ問いをしてもらいたいものです。ジョージは東海岸生まれの恵まれた条件をすべて持ち、また、父親の富と利権仲間を持っていました。だから、出るところに出たくないと思えば、出なければならないということはなかったのです。マークにはそんな条件 
などありませんでしたから、1年半以上も見つかる恐怖の中で生きなければならなかったのです。金持ちはもっと金持ちになるために、いつだって貧しい者の子どもたちを死に追いやるのです。 
 
 平和運動は兵士全員に、勇気を出して武器を捨て、ワシントンの腰抜けどもと戦争マシーンのために死んだり、何の罪も無い人びとを殺すことを拒否するよう、勧めなければなりません。平和を愛する私たちは、私たちの道徳的支持と金銭的支援とで兵士の皆さんがそんな行動をとりやすいようにしてあげなければなりません。平和を愛する私たちは、次の戦争をとめる努力をしなければなりませんし、兵士の家族に情報を提供し、戦争成金どもの軍服を着る子ども 
たちにはそれとは違う別の選択があることを知らせる努力をする必要があります。大学はお金がかかりすぎるし、身近な地域社会には職もありません。私たちは戦争省からお金をもぎ取って、私たちの未来、私たちの子どもたちに返してあげなければなりません。 
 
 わが子たちを戦争マシーンに提供し、彼等のよこしまな利益のために使い捨てにさせ続ければ、戦争は延びるばかりです。 
 
 若者を助けて戦争に行くのをやめさせるにはどんな方法があるかを知るには、GIの権利ホットラインに連絡してください。(訳者註:連絡のURL=tp://www.objector.org/girights/contact.html ) 
 
 良心的兵役拒否者となるための情報を得るには、良心的兵役拒否者のウェブサイトにアクセスしてください。(訳者註:URL= 
http://www.objector.org/advice/contents.html ) 
 
 軍隊に入る以外にどんな選択肢があるのかもっと情報を知りたい方は、アメリカン・フレンズ・サービス・コミッティーに連絡してください。(訳者註:例えば次のサイト= http://www.afsc.org/youthmil/default.htm ) 
 
 私の一番上の子が遺体袋に入って帰宅することになる前に、このような情報をすべて知っていたらよかったのに、と思います。 
 
翻訳:寺尾光身/TUPスタッフ 
 
原文のURL: 
http://www.truthout.org/docs_2006/090106A.shtml 


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