2006年11月21日11時51分掲載  無料記事
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イラク南部のシーア派がバスラで反イランの民兵組織を創設

 日本のメディアはイラクの暴力事件をスンナ、シーア両派間の抗争のように報じがちである。だが、イラクの内部抗争の実態は、占領を容認する「傀儡派」と、占領軍を排除しようとする「民族派」との抗争である。傀儡派は親米派と、親イラン派に大別される。よってシーア派自体もイラン傀儡派と反イラン派の民族派に別れてにらみ合いを続いている。こんな中、南部の大都市、バスラでイランの手先に対抗すべく、反イラン派の軍事組織「南部大隊」をシーア派が樹立した。14日付イスラム・オンラインが報じた。(斉藤力二朗) 
 
 イランと対決する愛国勢力である「南部大隊」と称する武装集団が、イランの諜報機関「イッティラーアート」への協力者を一掃し、イラク南部でのイランの影響力の浸透に歯止めをかけることを目的として、南部の町バスラで旗揚げを宣言した。 
 
 イラク人評論家は、イランはイラクの苦境に付け入り、イラク南部における影響力を徐々に拡大。イランへのイラク人追従者数も増しており、これが南部の住民のイランへの怒りをさらに募らせていると語った。 
 
 また、イラク通信によると、武装集団「南部大隊」は第二の都市バスラで市民に声明文を配布し、イランの諜報機関への協力者を一掃するのが武装集団結成の目的と知らせている。同大隊の構成員は、民族主義的、或いは親イラン集団への敵対心の強いシーア派信徒とみられている。 
 
▼イラン植民地主義者への憤怒 
 
 12日に初めて出された声明は「イラク南部全域に殺人者や資金、ギャングを送りこみ、人々の食糧、生命から名誉に至るまで南部のすべてを支配した隣国イランから入り込む悪逆の輩からイラク国民を防衛する」と宣言した。 
 
 また、「イランの手先の殺人者たちに外国人の手先であることを止めるまで復讐を続けることを誓う。雇われ殺人者を使いイラク人を無差別に連日殺害しながら、イスラムを主張する植民地主義者に踏みにじられている我々の土地や家族、住居、名誉を防衛する義務があると確信する」と述べている 
 
 さらに同オンラインによると、現地情報筋は「バスラにおけるイランの影響力はもはや誰の目にも明らか。米国がスンナ派抵抗勢力の掃討に忙殺される中、イラン政府はイラク社会奥深く浸透した。親イラン諸政党を設け、誘拐、殺人、拷問を繰り返し、イラク南部がイランに従属するよう狙っている」と説明している。 
 
 今年6月、シーア派宗教者マフムード・ハサニー師の支持者のデモ隊が、バスラのイラン領事館を襲撃し、その屋上にイラク国旗を掲げた。同情報筋は「この事件は、バスラにおける人々の鬱積した気持ちや、イランの影響力の伸長にシーア派の一部が拒否していることの証だ」と語った。 
 
▼バスラの実権は民兵組織に 
 
 バスラとその周辺部のアラブ諸部族の指導層は今年5月、占領に代表される外国勢力の伸張や、イランの影響力に反対するイラクの愛国的な代表的人物を暗殺の標的とするイランの影響力の拡大に対抗すべく軍事組織「南部大隊」の設立を呼び掛けた。 
 
 バスラではスンナ派の数千世帯を追い出す作戦をはじめ、殺人、誘拐が行なわれ、豊富な石油を擁するこの町の支配権をめぐって諸党派の間で抗争が繰り広げられてきた。国防省筋によると、バスラの現状は一時間毎に暗殺があり、町の本当の権力は武装民兵組織や部族指導者が握っているという。 


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