2006年11月28日00時48分掲載  無料記事
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フィリピンでのASEAN首脳会議準備に赤信号 会場建設にもたつく「アジアの病人」

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の成功へ、国の威信をかけて取り組んだベトナムとは対照的に、フィリピンが12月中旬に同国セブ州で開催する東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の会場建設にもたついている。政府が約束した会場完工の期日は「11月15日」だったが、それを過ぎても完成のめどは一向についていない。地元紙の中には早くも「首脳会議までに間に合うのか」と懸念する社説が現れた。国民の間からもアロヨ政権のずさんな会場建設計画に批判の声が高まり、相変わらずの「アジアの病人」ぶりを見せつけている。(ベリタ通信=都葉郁夫) 
 
 ベトナム、フィリピンを含めASEAN加盟国(10カ国)にとり、APECおよびASEANの首脳会議開催は域内同盟諸国のみならず、国際社会にその開催能力、発展ぶり、国家の威信、政権の安定度などを誇示するまたとない“晴れ舞台”となる。 
 
 ベトナムの場合は、APEC首脳会議開催国に決定したと同時に、陣頭指揮をとる政府がその成功に向けて、会場の建設、通信施設の完備、参加国代表団・記者団用ホテルの確保などを計画通りに準備を進めた。 
 
 その結果、APEC首脳会議を取材した日本人記者の1人は、「準備の完璧さに驚いた。取材の心臓部となるプレスセンターの通信設備は申し分なかった」と話し、ベトナムの同会議に向けた意気込みとそれを見事に成し遂げた底力に感服していた。 
 
▼ベトナムに抜かれた理由 
 
 このベトナムとは好対照なのが、民主化が進まぬミャンマーに代わって、1年前倒しで急きょASEAN議長国を務めることになったフィリピン。今や、勤勉な国民性を活用し目覚しい経済発展を遂げるベトナムに追いつかれ、抜かれてしまったとの評価が定着するほど国力が低迷している。両国の勢いの差が、国際会議開催に向けた政府の取り組み姿勢、会場建設などの準備状況にもはっきりと現れている。 
 
 今回、セブ州で開かれる第12回ASEAN首脳会議(12月11、12日)は、同首脳が初めて顔を合わせた1976年から数えて30周年となり、ASEANにとっては記念すべき会議ともなる。 
 
 にもかかわらず首脳会議場に予定していた、肝心の「セブ国際会議センター」が11月末になっても完成しておらず、アロヨ政権はハイライトとなる首脳会議の会場をセブ市内の高級ホテルへの変更を検討せざるを得なくなった。 
 
 同センター建設は今年4月に、総工費4億5000万ペソで着工された。当初の予定では首脳会議開催1カ月半前には完工し、首脳会議をはじめ、日本も参加する東アジアサミットなど計91の会合を新装の同センターで開くと自慢げに発表していた。 
 
▼なぜか工費倍増、工事は遅滞 
 
 ところが、工費が約2倍に膨らむ恐れが出てきたこともあり、建設工事が一向にはかどらない。セブ州知事および政府の同会議委員会当局者は「11月15日までには工事は完了する」と太鼓判を押したが、公約の日が過ぎても同センター工事が終わる兆しは全くない。 
 
 この失態に業を煮やした地元英語紙スター(18日付)は「本当に間に合うのか」と題した社説を掲げ、参加国首脳たちへの警備問題などを考慮すると、同センターでの首脳会議開催は相当に難しいと言い切った。 
 
 その上で同社説は、会議場の変更はフィリピンの能力のなさを国際社会にさらすことになると警告。こうした「国辱」ものは同センターだけでなく、約2年前にほぼ完成したにもかかわらず、ごたごた続きでまだ開業に至っていないマニラ空港第3ターミナルも同様にやり玉に挙げ、アロヨ政権の無責任・無計画さを厳しく批判した。 
 
 同センターの完成までに残された時間は2週間足らず。12月6日にはASEAN首脳会議のお膳立てをする事務レベル会合が始まる。センター内に設けられるプレスセンターを事前視察したマニラ在住の外国人特派員の1人は、「完成は難しい。同センターで仕事ができない場合を考え、作業室に使う部屋をホテルに確保した」と話し、ASEAN会議史上でも前代未聞の事態にあきれ顔だ。 


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