2006年12月12日00時00分掲載  無料記事
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カーター氏の反イスラエル本が話題に 「愚かしき本」との評価も

 ジミー・カーター米元大統領(82)=民主党=が最近、イスラエルと米現政権のパレスチナ和平への取り組みを真っ向から批判した著作「パレスチナ:アパルトヘイト(人種隔離)なき平和」(288ページ)を11月に出版、テレビや新聞のインタービューを通じて自ら新作のプロモーションを行なっている。今回で21冊目の著作となり、歴代大統領の中でもこれだけ出版した大統領はいない。今回、目立つのは激しいイスラエル批判で、このため出版前からブログ上では激しいカーター批判が巻き上がっている。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 米紙ロサンゼルス・タイムズなどによると、カーター氏は、著作の中で、パレスチナ和平を実現させるためには、イスラエル政府が米国の仲介する新和平案(ロードマップ)を守り、国際法に応じるだと述べ、これを逸脱する行為を重ねているイスラエルを批判した。 
 
 カーター氏によると、新和平案は現状では「失敗」の状態にある。これはイスラエルが様々な前提条件を持ち出してきて引き伸ばし戦術を駆使しているためだという。 
 
 同氏は、特にイスラエルが第三次中東戦争(1967年)で占領したヨルダン川西岸地区で、多くのパレスチナ人を取り囲むようにしながら建設を進めている分離壁に触れ、これは、パレスチナ人にとって“監獄の壁”であると述べた。 
 
 カーター氏は、パレスチナ和平が進展していないのは、イスラエルが、67年以来占領した領土を返還しようとしないためで、また米国政府が、こうしたイスラエルの姿勢を一方的に支持しているためだと述べた。このほか、米国の政治家はイスラエルを批判せず、マスコミの取材もおろそかだと決め付けた。 
 
 ブッシュ政権は、既にパレスチナ新和平案が任期中までに実現するとの見方を否定するなど、パレスチナ和平の展望は明るくない。カーター氏は、この停滞した和平案に活を入れるための問題提起型の本と位置づけているようだ。 
 
 カーター氏は、1980年の大統領選挙の再選で、共和党候補のロナルド・レーガン氏に敗北。以後世界的な和平促進を求めてカーターセンターを設立、世界各国の紛争地域に足を伸ばし、紛争解決に影響力を行使している。カーター氏は、主なものだけでも、北朝鮮、キューバ、ユーゴスラビア、ハイティ、それに地域としては、アフリカ、中南米諸国などに足繁く通っている。 
 
 一方、パレスチナ和平を妨害しているのは、すべてイスラエル──といったカーター氏の新作には、ユダヤ系米国人や識者からも非難の声が上がっている。 
 
 米保守系誌「ニューリパブリック」の編集長マーチン・ペレーツ氏は、「偏った、不正確な、愚かしい本だ」とこき下ろした。またカーター氏の反イスラエルの姿勢は、宗教的背景によるものと示唆した。このほか、カーター氏を尊敬するという学者のアラン・ダーショウィッツ氏も「あの上品な人物が、かくも下品な本を書いた。本の価値を傷つけているのは、多くの誤りと省略だ」と疑問を呈した。 
 
 米C−SPANの番組「ブックTV」に出演していたカーター氏に読者が電話で質問した。「あなたは世界中の独裁者やごろつきに取り入ってきた。しかし、それよりも問題なのは、あなたが反ユダヤ主義者であることだ」と批判した。カーター氏は、反ユダヤ主義では断じてないと答えた。同氏の新作については民主党内からも異論が出ている。 


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