2007年01月14日13時05分掲載  無料記事
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07年最初の赤ん坊論争が一応決着 3人に同額の賞金

 米大手のおもちゃ量販店「トイザらス」(本部・米ニュージャージー州)は、年が明けた2007年に最初に生まれた赤ん坊に賞金を出すことを約束していたが、トップと思われた赤ん坊の両親が、中国からの不法滞在者の可能性が強まり、いったんこれを取り消して、次点を繰り上げ一等にした。ところがこの「トイザらス」の措置に、在米中国人らが強く反発。このため「トイザらス」は1月6日に再び決定を変更し、この中国人の両親から赤ん坊にも賞金を出すことを決めた。(ベリタ通信=江田信一郎) 
 
 米メディアによると、「ベビーザらス」を傘下に持つ「トイザらス」は2007年に最初に生まれた赤ん坊に、賞金として2万5000ドルの貯蓄債券(米国債)を出すと発表。参加資格は、出産が間近な女性で、関心がある全米の病院が事前にコンテストに登録した。 
 
 07年1月1日多くの病院で赤ん坊が生まれた。ほぼ同じ時間帯に生まれた赤ん坊は3人いた。審査の結果、「トイザらス」は当初、「ユキ・リン」と名乗る女の子が第一位とし、貯蓄債券が贈られることになったと発表した。赤ん坊は1日午前零時にニューヨークのマンハッタンにある病院で生まれた。体重は2900グラムだった。 
 
 ところが「トイザらス」は、この後、決定を取り消し、次点のジャイデン・スエインちゃんが一位になったと発表した。スエインちゃんは、ジョージア州の病院で、午前零時00分19秒に生まれていた。 
 
 取り消しの理由は、ユキ・リンちゃんの両親が、合法的な米居住者ではないというものだった。合法的な居住者でないということは、不法滞在者であることを示唆するものだ。ユキ・リンちゃんの場合は、米国で生まれたため、出生地主義により、米市民権が付与される。 
 
 「トイザらス」側は、コンテストの規定にも、非合法的な居住者は資格を失うとの規定が明記されていると指摘した。しかし、この後、在米の中国系米国人らから、批判の声が上がった。 
 
 批判の中には、合法であれ非合法の資格にせよ、人々は「トイザらス」で買い物をするのに、差別するのはおかしいとの意見や、賞金は子どもに贈られるものであって、親の法的地位は関係ないはず、などの声が上がった。 
 
 米国の政治で焦点の一つになっている不法滞在者の問題も絡み、米メディアもこの問題を大きく取り上げた。こうした中で、世界的に店舗拡大をしている「トイザらス」も、これ以上問題を大きくしたくないとの気持ちになったようだ。特に最近、中国・上海に始めて出店したばかりで、中国系社会の人々の反発を買うのは、経営戦略上好ましくないのは事実だ。 
 
 「トイザらス」は6日に声明を発表し、「我々はすべての赤ん坊を愛している。我々は賞金によって引き起こされた議論を深く遺憾に思う」と述べ、賞金2万5000ドルは、審査を争った3人にそれぞれ贈られると発表した。 
 
 今回の一連の報道で、ユキ・リンちゃんの両親が不法滞在者であることが明るみに出たことで、強制送還されるのではと心配する声も上がっている。これに対し、二人を支援する関係者は、これだけ知られるようになったことで、逆に当局は動きようがなくなったと強気の見方をしている。 


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