2007年03月26日23時55分掲載  無料記事
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「あきらめず闘えば勝つ、夢はかなう」 池田実さん、28年ぶりに郵便局復帰へ 最高裁で確定

  28年ぶりに不当解雇された郵便局員たちが職場に帰ってきた。個人が国や企業相手に裁判に訴えた場合、上級審の判決が国や企業にとって都合のいい内容から覆されることが難しいことから、最高裁が「最低裁」と呼ばれるようになって久しい。その最高裁で画期的な判決が下された。郵政省による長年の組合差別や人権侵害に反対して闘った1978年暮れの「反マル生闘争」への報復として、郵政省が発令した61名の首切り処分の取り消し訴訟を闘ってきた郵便局員7人に、最高裁第3小法廷が07年2月13日、裁判官全員一致の意見で、郵政公社による上告受理申し立ての不受理を決定したからだ。しかも、労働組合が組合員の雇用を守る立場を放棄する中で、諦めずに28年間も闘い抜いた条件とは何なのだろうか。郵便局に職場復帰した池田実さんに語っていただいた。(「労働情報」特約) 
 
 
▼「本件を上告審として受理しない」 
 
 2007年2月13日、最高裁第3小法廷は1979年4月28日に郵政省が発令した首切り処分(4・28処分)取り消し訴訟で、郵政公社による上告受理申し立ての不受理を決定、ここに原告7人の郵便局復帰が最終確定した。 
 
 最高裁の不受理決定書の主文の前には「申し立て人から上告受理の申し立てがあったが、申し立ての理由によれば、本件は民訴法第318条1項により受理すべきものとは認められない。よって当裁判所は、裁判官全員一致の意見で、次のとおり決定する」とあった。 
 
 民訴法第318条1項とは「原判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含められる事件について、申し立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができる」というものだ。 
 
 とにかく司法の長、最高裁は郵政公社の申し立てを裁判官全員一致で退けたのである。まさに28年目の奇跡、夢のような決定だ。 
 
▼全逓が反処分闘争を放棄 
 
 処分は全逓(現JPU)が郵政省による長年の組合差別や人権侵害に反対して闘った78年暮れの「反マル生闘争」への報復だった。職場を追われた 61人の郵便局員のほとんどは、組合の闘争指令に従って争議に参加した現場の若い一般組合員であり、争議の責任者ではなく下部の参加者に免職処分を科したこの4・28処分は日本労働運動史上、前例のない大量不当処分となった。 
 
 当初、処分撤回を求めて「組織をあげて」闘った全逓本部は90年に「再採用の道をひらいた」として裁判取り下げを条件に、免職者の再受験(40歳以下の有資格者)方針を打ち出したが、これに応じて91年2月に受験した免職者は全員が不合格という結果となったのである。ところが、本部はこの結果を受けて「省への再採用の道、裁判闘争は断念する」と91年5月の臨時中央委員会で4・28反処分闘争の終結を決定、同年6月には免職者の組合員資格と犠牲者救済適用の打ち切りを行ったのだ(98年最高裁は本部による組合員資格剥奪の取り消しを決定)。 
 
 労働組合による二重の首切りとも言うべき不当な弾圧に抗して、その後、7人の免職者が自力で裁判闘争を継続し、全国に支援の輪がひろがっていった。 
 
▼最高裁決定の意義 
 
 裁判は、一審の東京地裁では原告敗訴となったが、東京高裁は04年6月30日に、争議一般参加者への懲戒権の濫用であると郵政省を断罪、4・28処分の取り消し・無効の逆転勝訴判決を行った。しかしこれを不服とした郵政公社が最高裁に上告受理申し立てを行っていた。 
 
 今回の不受理決定により04年の東京高裁判決が確定した。このことの意義は大きい。高裁判決は「事業の混乱、これによる国民生活上の不利益も、全逓及びその意思決定に関わった者が第一次的にその責を負うべき」としたうえで、「本件闘争につき、施設の破壊等の反社会的行動やその他の秩序違反行為等がないにもかかわらず、意思決定に従って忠実(又は執拗)に争議行為を実施したことのみを理由として、懲戒免職を課されるべき者が55名又は130数名もの多数となることについては、違法な争議行為についての問責のあり方として合理性に重大な違法がある」とした。 
 
 そして結論として「個々の組合員の行為として見るかぎり、もたらされる職場秩序の阻害の程度は、たかが知れており、これに対する非難としての懲戒の内容及び程度にもおのずから限度があり、これを理由として懲戒免職を課す判断は、その合理性に重大な疑いがある」「懲戒免職は、全逓の意思決定に従って違法な争議行為を実施した組合員に課されうる懲戒処分の選択及びその限界につき、考慮すべき事実を考慮せず、社会通念に照らして著しく不合理な結果をもたらし、裁量権の行使を誤った重大明白な瑕疵があり、取り消しを免れず、また、無効というべきである」と言い切った。 
 
 高裁判決は、争議行為の一般参加者に懲戒免職を課した郵政省を断罪し、さらに一旦処分取消訴訟を取り下げ、新たに「処分無効確認訴訟」(勝訴するのは針の穴に糸を通すより難しいという)を提訴した1名の原告(池田実)についても同様に無効としたのである。 
 
 あらためて労働組合運動の意義(指導者と一般組合員の区別)を認めるとともに、免職という労働者の生活権を奪う処分の濫用を厳しく戒めた点で画期的な判決だ。 
 
▼何のための労働組合 
 
 処分から28年目に下された最高裁決定、ついに長い闘争に勝利の終止符が打たれることとなったのだ。ここまで争議を長引かせた責任が郵政省・現郵政公社にあることはもちろんだが、組合員の雇用を守るという労働組合の責任を放棄し原告らを切り捨てた全逓(現JPU)もまた同罪であると言わざるを得ない。 
 
 まして「再採用の道」をちらつかせ訴訟を取り下げさせたあげく組織から放逐し、職場復帰の道を強権的に断念させた組織責任は重大である。さらに裁判継続者には犠救特別金を差別的に支給せず(最高裁で本部敗訴)、全逓弁護団も一斉に代理人から引き上げさせ、裁判を遅延させるなど数々の妨害を行ってきたのである。 
 
何のための労働組合なのか、自らの組織指令で職場を追われた組合員を今度は組織から排除する、4・28免職者切り捨ては日本の労働組合の堕落を象徴する汚点であった。 
 
 そして現在JPU本部は、「4・28問題はすでに組織として整理済み」という姑息な居直りを続け、免職者の組合員たちが再三「組合員の雇用を確保するため郵政公社が行った最高裁への上告受理申し立てを取り下げるよう要求すべき」という申し入れにも、拒否回答を行うのだ。 
 
 そして郵政民営化に向け、全郵政との組織統合を実現させるため、「反マル生越年闘争」に象徴される全逓の過去を反省した「詫び状」(総括)を提出し、土下座するように合体を懇願するのである。民営化後は日本最大の民間単一労組として民営郵政をサポートしようというのだ。何のための労働組合なのか、今回の最高裁決定はこの根源的な問いをJPUに突きつけている。 
 
▼一労働者として 
 
 最後に、28年の長きにわたって原告を支え、応援し続けてくれた全国の心あるみなさんにあらためて感謝するとともに、4・28闘争が示した「あきらめず闘えば勝つ、夢はかなう」という教訓を労働運動全体で共有化できるよう、そして生き生きとした労働組合の復権につながるよう、これからは一労働者として、28年間のブランクを埋めるべくがんばる決意を述べて、お礼とさせていただきます。 
 
(「労働運動」714号) 
 
 
*「労働情報」715号に『郵政4・28裁判勝利 祝賀座談会』が掲載されています。内容は以下の通りです。 
〜28年目の歴史的勝利 自立した闘いが勝利を切り開いた 
 ……池田実●元被免職者(赤羽局出身) 
 ……庄野光●元被免職者(立川局出身) 
 ……名古屋哲一●元被免職者(八王子局出身) 
 ……奥山貴重●郵政4・28を共に闘う全国ネットワーク事務局長 
 ……須藤和広●郵政労働者ユニオン書記次長、本誌運営委員 
 ……平賀健一郎●郵政4・28全国ネット共同代表/本誌運営委員(コーディネーター) 
 ……構成:田島省三/浅井真由美 


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