2007年04月01日23時33分掲載  無料記事
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「殺されたくない」「殺す側にもなりたくない」 参院選めざす元HIV訴訟原告の川田龍平さん

  7月の参院選東京選挙区に、元HIV訴訟原告の川田龍平さん(31歳)が立候補することを決断した。健康に不安を抱えながら国政に挑戦する川田さんに、決断のきっかけやめざす政治について話をうかがった。薬害によって自分の生命を脅かされ、友人たちを失ってきた経験を活かしたいという川田さんの目標は、「『いのち』を大事にする政治」。そして、若い人たちと政治をつないでいく役割を果たしたいと語る。(加藤〈karibu〉宣子) 
 
▽「いのち」を大事にする社会に 
 
 ──国政にチャレンジするとのことですが、決断のきっかけを教えて下さい。 
 
 川田:もう黙っていられない」という気持ちが強いです。1999年くらいから戦争を準備する法律が国会を通っていく中で、政治を変えたいと思い始めました。1998年から2000年にかけてドイツに留学していましたが、日本人として生活しながら、日本の首相や国会議員といった人たちの発言を聞いてとても恥ずかしく思いました。自分たちの代表であり、その代表から選ばれた首相を変えたいという思いはとても強いです。 
 
 ──国会議員の仕事は激務だと想像しますが、病気の方は心配ありませんか。 
 
 川田:体調の方は、薬を飲みながらですが、以前よりも免疫の状態も良く、落ち着いています。家西悟さんという元HIV大阪訴訟原告の方が、国会議員で頑張っています。彼が衆議院と参議院通算で10年以上活動しているので、自分も大丈夫だと思っています。 
 
 ──HIV訴訟原告としての経験をどのように国政に生かしていくつもりですか。 
 
 川田:薬害を生み出してきたような社会、構造を変えたいんです。「いのち」や「人権」を大事にする。それは平和や環境にも共通しています。「いのち」がお金や利益よりも優先される社会にしていきたい。身をもって体験してきたことですから、なんとしても変えたいと思っています。友人たちが殺されてきたんです。怒りもあるし、その死を無駄にしたくはありません。無念な気持ちで亡くなっていった。生きたくても、生きられない。そんな社会を変えるために、政治を変えたいと思います。 
 
 また、僕が国会議員になることで、若い人たちが政治に関わること、つながりをつくることができると思います。薬害エイズのときもそうでしたが、同年代の人たちが、「自分の問題」として考えるきっかけになって、その中から自主的な運動が起こってきたと思います。今回も12年に1回の統一地方選挙で、若い人達と一緒に選挙を協力してすすめることができています。自ら動くことで、社会、政治を変えられると確信しています。 
 
▽憲法の理念に現実を近づけたい 
 
 ──みどりのグループから応援を受けていますが、当選後も孤軍奮闘ということになりますね。 
 
 川田:みどりの政治を目指していますが、「平和への結集 市民の風」のような形が望ましいと思っています。党派にとらわれない、無所属の立場で活動していきたいです。多様な意見が認められることが大事だと思っています。当選後、国会の中でも、考えの近い人たちと協力できると思います。孤軍奮闘にはならないと思っています。 
 
 ──国政で大事な争点になっている憲法改正や安全保障、また格差社会という問題にはどのように切り込んでいくつもりですか。 
 
 川田:憲法の問題に関しては、単に条文の文言をまもることだけが大事なのではなく、憲法の理念である生命、人権や平和、25条の「健康で文化的な生活を営む権利」、13条の生存権や幸福追求権のような理念に現実を近づける努力が大事だと思います。現実の社会がそうでないからといって憲法を変えるべきではない。自民党がいう新憲法を作るべきではないと思います。 
 
 安全保障に関して、いま世界で求められていることは、憲法9条のような代替案です。実際の平和に持っていくためには、「テロとの闘い」のようなつくられた危機、対立を作ることではなく、対話を作っていく。若い人たちを国際交流などで積極的に海外に送り出して、長い時間をかけて平和を創っていく。海外の人を受け入れることも大事ですね。 
 
 格差社会については、雇用の問題、所得の問題は「公平・公正」が大切です。労働基準法自体守られていなかったりするわけで、守るべきものは守らせていく。また、雇用の形態が変化しているので、均等待遇が必要ですね。雇用で保障できない人は再分配で格差を縮小すべきだと思います。日本の中の格差だけでなく、地球規模でも考えたい。必ずしも金銭的な価値だけではないものを大事にしていくことが求められている。自殺率の高さは、今の生きづらい状況、不安定さから来ていると思う。それをどう安定させていくか。心の不安だったり、金銭的・雇用的不安であったり、医療・福祉や年金の問題だったり、若い人には将来に対する不安があります。何より自分たちの将来のことでもあり、そうした不安を解決していきたいですね。 
 
 ──政治家として、尊敬している人がいたら教えて下さい。政治家としてどういう人間でありたいと思っていますか。 
 
 川田:うーむ、母親は尊敬していますが・・・。「政治家」になりたいと思ってはいないんです。生きている人は変わっていくし、1人の人を尊敬するというよりも、ある人のある部分や行動を尊敬している。でも丸ごと評価している人はいないですね。政治家には長くやると悪く変わっていくイメージも強いんです。だから自分で切り開いていくしかない。「職業としての政治家」になるつもりはないです。 
 
 ──最後に、抽象的ですが「生命(いのち)」ということについて語ってください 
 
 川田:自分が10歳のときにHIV感染の告知を受けてから、自分がいつまで生きられるか、長くは生きられないと思って、自分が何のために生きるのかとか、すごく考えてきました。殺されたくない、死は避けられないが、殺されたくない。殺す側にもなりたくない。 
 
 自分が生きていくなかでもっとも大事なこと、それは「楽しく生きること」だと思うんだけれども、そのために必要なのは、自分たちの生命が大切にされたり、人権が大切にされたり、生命が脅かされない平和だったり、水とか空気とか食べ物のように生きるために必要なものだったり。そういう基本的なものの尊重された社会、社会がなければ人は生きられないし、人だけが生きているわけではない。世界のなかで生きている。生命をつなぐということを自分はしたいんです。 
 
(於:四谷・「川田龍平を応援する会」事務所 2007年3月15日) 


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