2007年04月16日12時01分掲載  無料記事
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生協法改定案の危険な中身(上) 強まる生協への国家介入  金 靖郎

  多くの国民が知らない間に法律が変わり、企業活動は野放図になる一方で、市民の活動はきびしく制約される状況が深まっている。今回は生協をめぐる動きである。市民の自立的な活動の代表格ともいえる生活協同組合に対する国家の介入を強め、生協が組合員の暮らしを守るために行う事業活動に対する企業の営業の自由を拡大する内容の生協法改訂案(消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律案)が今国会に上程され、審議が始まっている。この改訂案の問題点について、生協内部で働くものの立場から寄稿してもらった。3回に渡り掲載する。第1回は、強化される生協運営への国の介入問題である。(大野和興) 
 
◆国の処分権限を大幅に拡大 
 
  生活協同組合、いわゆる生協は日本社会で非政府団体、非営利団体として知られており、全国で629の生協が活動しており、合計すると、約2300万人以上が組合員として組織している。 
 
  生協は消費者の運動の一つで、事業イコール運動というのを原則としてきた。そのため、その職場の中では生協運動という言葉が使われている。私はある生協で働く職員で、これまで十数年にわたって生協運動に参加してきた。 
 
  戦後60年に渡り生協の運営の基礎となってきた生協法の改定案が3月13日に閣議決定され、3月14日に国会上程された。この内容はきわめて重大な問題を含んでいると思う。 
 
  この法案の94条には、生協が公益を害する行為をしたと国が判断すれば、生協の全部もしくは一部の業務の停止もしくは、役員の解任を命じることが出来るという条文が入っている。この「公益に反する」というのは限りなく拡大解釈が可能な条文で生協にとっては危険な内容と言える。 
 
  また、現在の生協法の95条では、、員外利用や名義貸しなど生協法の条文の中で明記されているいくつかの禁止事項に反して是正命令を受け、それに従わなかった場合は生協に解散を命じる事が出来るという条文がある。 
 
  今回の改正案ではこの95条の部分がこれまでの一定の条文に反した場合と限定されてきたものが、生協の業務若しくは会計が法令もしくは法令に基づいてする処分に違反し、是正命令に反した場合は生協に解散を命じる事が出来るという内容に書き換えられているのだ。 
 
  ここでは法令の範囲は規定していない。これまでの限定的に認められていた解散命令権を法令及びそれに基づく処分という形で大幅に条件を広げているのだ。 
 
◆「公共の福祉」から「公益」へ、改憲の流れと一致 
 
  そもそも生協は消費者の自主組織であり、行政から独立した団体である。それがあれこれと行政から口出しされると言う状況は極めて不当なものである。およそ生協にとっては相応しくなく、恣意的運用されると危険な内容となっている。生協運動にとってこうした条文がもし入れられてしまえば、行政からの独立性、生協の自主性が損なわれる可能性があるだろう。 
 
  しかし今回の改定案の内容は生協のみにとって危険というだけにとどまらない。 
 
  実は2005年でつくられた自民党新憲法草案では「公共の福祉」という言葉が消え、「公益」と「公の秩序」という言葉が多数出ている。 
 
  現在の憲法の第12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と規定している。 
 
  基本的人権は無制限でなく、公共の福祉によって制限されるという意味だ。ところが自民党新憲法草案では「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、保持しなければならない。国民は、これを濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う」と規定されている。 
 
  自民党はわざわざ意味もなく言葉を言い換えたのでなく、より国民の権利を制限し、国家の権限を強化する方向で憲法を変えようとしており、そのために条文を変えようとしているのである。 
 
  自民党新憲法草案では憲法前文に「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し、」という文章が加えられている。国民生活を支えるために国家があるという考え方から、国家を支える国民という第二次世界大戦以前の国家観への転換を図ろうとする意図が読み取れる。 
 
  こうした改憲の流れを見ると、「公益」という言葉は重大な意味を持つように見受けられる。 
 
◆市民活動制限の流れのひとつ 
 
  日本には非政府団体、いわゆるNGO、非営利団体、いわゆるNPOなどが多数存在するが、生協に対して国家が介入できる条文が出来るという事はこうした団体にとっても重大な意味を持つような気がする。市民の様々な活動にとって、行政からの独立性、自主性が侵害される状況になろうとしているのかもしれない。 
 
  昨今、立川で戦争に反対するビラをまいただけで逮捕されるといういわゆる立川反戦ビラ弾圧事件が発生するなど国家による思想弾圧の動きが露骨になりつつある。市民の活動を大幅に制限し、思想の自由をなくす共謀罪が国会で審議中となっている。 
 
  このような一連の流れで見ると生協法改正における役員解任及び業務停止命令権は改憲の流れの一環として見るべきではないだろうか?いわば、改憲の一部先取り的な内容を含んでいるとも言えるのではないか。(続く) 
 
注:生協法改定案の全文は厚生労働省の以下のURLから見る事が出来る。 
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/166.html 
 
P.S 私はこの生協法改定について、今後とも情報を集め、それを分析した上で広く世に訴えていくつもりです。特に、「改憲草案での公益という言葉の意味と自民党の狙い、法律の専門家から見たこの改定案の条文についての解釈、反対運動などの動きなど何か情報があれば、以下の所までお寄せ下さい。ご協力をお願い致します。 
連絡先 maxdoide@yahoo.co.jp 


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