2007年04月20日05時31分掲載  無料記事
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宅八郎氏出馬で渋谷区長選は波乱含み? 黒川紀章氏も応援へ

 告示日前日の14日に、「おたく評論家」の宅八郎氏が急きょ、出馬表明したことで、突如、全国的に注目されるようになった渋谷区長選挙(4月15日告示、22日投開票)。自民党・公明党が推薦している現職の桑原敏武区長が一歩リードしているが、「渋谷史上初」といわれるほど、区民の関心は高まっている。有権者の投票率が上がれば、意外な展開も予想されている。(及川健二) 
 
 桑原区長は、区内の業界団体から数多くの支持を受ける。自・公支持者に浸透すると同時に、支援団体に挨拶回りするなど組織選挙に徹している。 
 
 保守系無所属の矢部一氏は区議6年、都議19年で培った地盤をもとに、支持拡大に懸命だ。議員時代は自民党に所属し、前回の区長選挙では桑原区長の選対責任者を務め、当選に大きく貢献した。矢部氏は2003年総選挙で党本部が公認した自民党候補に反発して、離党して無所属で出馬し、惨敗した。それ以来、矢部氏は浪人の身だ。矢部氏は今回の選挙を「政治生命をかけた戦いだ」と述べ、背水の陣で臨む。桑原氏とは支持者・支援組織が重なり、両氏は票を激しく奪い合う。矢部氏の不遇に対して同情票が保守層から流れるのでと...と桑原陣営は警戒する。 
 
▽骨肉の争い 
 
 「保守分裂」の骨肉の争いという好機を活かして当選を狙うのは、渋谷区役所に30年勤務して、清掃リサイクル部長という要職を辞して、区長に反旗を翻し、出馬した坂井正市氏だ。選挙を手伝うボランティアの数は他陣営を圧倒するほど多く、選対関係者は「桑原氏と坂井氏の一騎打ちという構図になってきた」と自信をのぞかせる。民主党は自主投票を決定したものの、坂井氏は日本共産党や連合から推薦を受け、民主党の全区議と市民派無所属の区議複数が支援する。民主党や共産党の支持者を固め、現区政に反感を持つ層への浸透を図る。 
 
▽黒川紀章氏が宅氏を応援へ 
 
 「他陣営を気にしないというより、気にもされていない」と自嘲気味に語る宅八郎氏には強力な援軍が現れた。先の都知事選挙に出馬して話題になった世界的に著名な建築家で『共生新党』の黒川紀章党首が支援を表明したのだ。 
 
 ラジオ局・ニッポン放送の番組『テリー伊藤 のってけラジオ』に黒川氏は4月16日に出演した後、取材陣を前にして、「(渋谷区長選挙に立候補している宅八郎の)応援に行きますよ」と宅氏への支持を明言した。宅氏は「知事選で黒川さんが話していたことは確かなこと」と述べ、黒川氏の政治理念に共感を示した。黒川氏は最終日の21日に宅氏の応援に入る。 
 
 黒川氏は都知事選が終わってから人気が急上昇、落選後わずか1週間で、テレビ、ラジオ、雑誌などから100件以上の出演依頼や取材要請が殺到したという。日本テレビ「おしゃれイズム」や「太田光の私が総理大臣になったら...秘書田中」の2番組にはすでに出演が決定している。 
 
 宅八郎氏を公認した『オンブズマン渋谷行革110番』の大貫三平代表は、「いま、ブレーク中の黒川さんの応援は心強い。宅さんは石原慎太郎都知事が大嫌いで、オリンピック招致に明確に反対した黒川さんに共感を覚えていた。意外な組み合わせだが、2人の政治理念はかなり近い」と述べ、「黒川さんの応援で追い風が吹く」と期待する。 
 
 120億円かけて宇田川町に建設予定の巨大ハコモノや、2兆円を投入する渋谷駅周辺と代々木公園・神宮外苑の再開発といった大型開発に、宅氏は候補者の中で唯一、反対していることを前面に出し、「税金の使い方を、大型開発ではなく、くらし・福祉優先にする」と強調する。 
 
▽史上初の大接戦との見方も 
 
 渋谷区は他区に比べて無党派層が多い。自民・公明と民主の力は互角で、都議会議員選挙や衆議院議員選挙では、公明党が推す自民党の候補と民主党の候補の票差は1000票程度に過ぎない。自民・公明が推す候補が安泰という選挙区ではない。 
 
 今回の区長選挙を決するのは、前回39.31%と低かった投票率と無党派層の動向だ。前回の2003年と同様に低投票率ならば、現職が他候補を引き離して当選する可能性が高い。しかし、投票率が上がれば、新人3候補に当選の目が出てくる。宅氏が出馬し、黒川氏が渋谷入りすることで、渋谷区長選挙はマスコミで大きく取り上げられ、区民の関心はかなり高まっている。「渋谷史上初の大激戦だ。当選するにしても、僅差になるのではないか」とある陣営の関係者は分析する。 
 
 宅氏の出馬で話題になった選挙戦は、4候補がしのぎを削る中で最終盤を迎える。あと2日でサプライズは起こるのか。結果が出るのは22日。渋谷区民の選択に注目が集まっている。 


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