2007年05月20日08時44分掲載  無料記事
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根津教諭の「君が代」拒否

<停職6ヶ月「出勤」日記・7>悪意なしに指示・命令を「職務」として実行する人が怖い

5月14日(月) 
 
 立川二中へ。3年生は修学旅行の代休でいないので、登校する生徒は知らない顔ばかり。でも、気持ちよく挨拶をしてくれる。 
 
 読書をしていると、私の前で車が止まったような気がして顔を上げた。見覚えのある車だ。「先週の方、ですよね?」――「そうです。こういう者です」と名刺を差し出された。大学の教員をされている方だった。「ノンポリなんですが、これ(=「君が代」強制と処分)は絶対に許すことできませんからね。がんばってください」。そうおっしゃって、再びアクセルを踏まれた。 
 
 午後は、友人のAさん、Bさんの訪問を受ける。 
 
 卒業生の訪問者は、CさんとDさん。「私がここにいること、よくわかったわね」と言うと、「お父さんが教えてくれた」のだと。「先生、有名な問題児だから皆先生のことを知っているんだってば」と言われてしまった。 
 
 ここを黙って通り過ぎる方も、私の行動を無視したり、敵視しているのではないということなんだ、と思った。 
 
 登校前のあわただしい中を、Cさん、Dさん、ありがとう。 
 
 もう一人の訪問者は、Eさん。明後日から定期テストというのに風邪を引いて辛そう。それなのに立ち寄ってくれて。なんてありがたいこと! 早く治ってね。テスト勉強に支障が少ないようにと祈る。 
 
5月16日(水) 
 
 11時から河原井さんと私の停職処分の裁判、4回目の法廷。それまで南大沢学園に「出勤」した。水曜日は2週続けて用事が入ってしまい、「出勤」できなかったので、今日は少しの時間でも南大沢に行きたかった。 
 
 校門前に着くと数分で副校長の一人が出てこられた。「私の監視ですか」と訊くと、今日は、「いいえ、ご挨拶です」ということだった。 
 
 しばらくして、校長が出勤してきて私の前で足を止め、「できればやめていただきたいのですが」と控えめにおっしゃる。「できれば、ですか」と私。校長はそれには返事を返さずに、校門をくぐって行った。 
 
 4月初めの言い方とは随分違った。どういうことなんだろう? 悪意があるわけではない普通の人が、多少ためらいながらも、指示・命令を「職務」として実行に移してしまうことが、私には怖い。 
 
 出勤する同僚には都庁前で撒いたチラシの残りを手渡した。「お世話様です」「読ませていただきます」「もらえません」「・・・」。反応はさまざまだ。 
 
 生徒たちにはとびきり明るい声で挨拶のことばをかけ、顔見知りになった保護者と挨拶を交わした。ここでは保護者の何人もの方が、労りのことばをかけてくださる。9時半、荷物をまとめて裁判所に向かった。 
 
 11時、開始時刻ぎりぎりで法廷に到着した。傍聴に来てくださった方々が着席されているところを原告席に座った。当事者が最後で申し訳なかった。 
 
 今日はこちらから準備書面(2)と(3)を提出し、弁護士さんがその概要を陳述した。 
 
 ・起立の強制は憲法19条「思想及び良心の自由」を侵害すること・思想・良心の変更強要を求める累積加重処分の違憲性・処分が比例原則・平等原則違反など裁量権を逸脱・濫用し違法であること、したがって、地方公務員法32条違反(職務命令違反)も33条違反(信用失墜行為)も成立しないことについてである。 
 
 傍聴してくださった皆さん、ありがとうございます。裁判長は傍聴者の数や様子で事件の社会的関心度を量るのだろうから、傍聴者がいないことには始まらない。今日の傍聴者の中には、国会への働きかけで上京された福岡の方3人がいらした。本当にありがたい。 
 
 裁判の後は都庁に行き、チラシまきをした。福岡の3人の方も参加してくださった。 
 
5月17日(木) 
 
 鶴川二中へ。昼過ぎまで雨。長靴を履いてくるべきだった。体は、停職1ヶ月の時に田中哲朗さんがプレゼントしてくれたゴアテックスの合羽の上下を着、傘を差しているから快適そのものだったが、靴は生徒を迎える間だけでたちまちぐじょぐじょになってしまった。ビニールで覆ったが、すでに遅し。 
 
 私のした挨拶に対して一人の生徒が、「わたし、今年がんばっているよ」と。「知っているよ。今日も1日がんばって!」とこたえる。 
 
 今日はほとんど人が通らない。雨がかかってもよい雑誌を読んで過ごした。 
 
 午後は、大学で聴講をした。知らない事実を知る喜びとともに、どのような教材を選び、どのようにそれを提供するかという点がすごく刺激となる。これが本来の研修だ。 
 
 今日教育関連3法案が衆院を通過した。伊吹文科相は地方教育行政法の「改正」で、「生徒の教育を受ける権利が侵害される場合、文科相は教育委員会に是正要求(=命令)ができる」とすることについて、その事例としてつい半月前は、いじめ自殺や履修漏れを挙げていた。 
 
 しかし、ここに来て本音で事例2つを出すに至った。たった半月で。1つは、学校が卒業式などで国旗を掲揚せず、国歌も斉唱しなかった時、2つ目は、全国学力調査の実施を教員が妨害したにもかかわらず、教委が放置した時と。 
 
 黙っていることは、悪政に加担していること。 
 
5月19日(土) 
 
 昨日は新横浜で「どがんすっとね?日本ば!パレスチナば!」の集会、今日は「憲法9条を語ろうin八王子」の集会に参加した。 
 
 どちらの集会も若い人たちの企画・運営で、彼らの思いが伝わってくる集いだった。若い人たちにつけを残してはいけない!という思いを、また同時に希望を抱く。 
 
 八王子の集会では、元市長の波多野氏(=確か2002年くらいまで市長であった)が、不戦の決意を柱とする現憲法を熱く語られた。氏がPKO法にも強く反対してこられたことを私は今日、初めて知った。氏はオールド自民党・・・。 
 
 図らずも、この数年間の右傾化の激しさを確認することになった。 
 
 この数年間の右傾化の激しさを、大勢の人が確認することが、はじめの一歩と思う。 


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