2007年06月07日13時30分掲載  無料記事
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危機に直面するIMF・世界銀行 ロベルト・サビオ

 【IPSコラムニスト・サービス=ベリタ通信】いわゆるブレトンウッズの双子、国際通貨基金(IMF)と世界銀行は、国連に対し何年も攻撃を続けてきたが、いまやそれら自身が政治的・経済的危機にある。これまで手出しのできない威信と信用を持ったこれらの機関は、市民社会だけから非難され、国際的メディアではいつも好意的な扱いを受けてきた。 
 
 10年にわたり国連に対し、不正行為、非効率、浪費という非難が続けられていたが、いまや注目はニューヨークからワシントン(訳注:IMFと世銀の本部はワシントンにある)に移った。(国連はニューヨーク消防局より少ない予算で運営されているのにかかわらず、予算を3分の1削減するよう求められた) 
 
 結局、国連に対する主な攻撃はふたつのことに絞られた。コフィ・アナン事務総長の息子が怪しげなやり方で8万ドル儲けたことと、石油・食糧交換計画を運営した職員のベノン・サバンが、どういうわけか彼の個人口座に14万ドルのお金をためていたことである。 
 
 実際には、石油・食糧交換計画のキックバック・スキャンダルは120億ドルがからみ、その運営はそれに参加した国と、特に米国の企業の管理下にあった。 
 
 そうした特権が急に失われたのは、3つの原因がある。それぞれ別個であるが、ポール・ウルフォウィッツ世銀総裁を巻き込んだメディアの狂騒のなかで同時にやってきた。 
 
 第1の原因は、ベルリンの壁の崩壊と、新自由主義のグローバリゼーションによって発動された粗暴な資本主義が復讐して以来、築きあげられてきた。新自由主義のグローバリゼーションは、市場を国際関係での唯一の有効な基準とし、それぞれに国に新たな緊縮予算と支出体制を押し付けた。 
 
 こうした形のグローバリゼーションの概念基礎は、いわゆるワシントン・コンセンサスである。それは米国政府とIMFと世銀のための規準となった。金融経済政策の完全な修正を要求し、国々に構造調整を押し付け、国の役割を最小限にし、できるものは何でも民営化し、医療や教育など非生産的な社会支出なくし、外国投資に門戸を開けるために関税をなくすことを要求した。かなりのイデオロギー的な情熱を伴ったこの政策は、いまでは1997年のアジアの金融危機の主要な原因と認識されている。 
 
 以前は市民社会、労働組合、左翼の一部の勢力だけがワシントン・コンセンサスによって生ぜられた破壊を非難していたが、ノーベル賞受賞者の世界銀行の主席エコノミストであったジョセフ・スティグリッツによって行われた批判は、一見まとまっているかにみえる体制に亀裂を生じさせた。危機を免れた唯一のアジアの国はマレーシアであった。首相のマハティールは、IMFの処方せんを実行することを拒否した。そうした事実は、IMFに間違いを認めさせることになった。 
 
 第2の原因は、ブッシュ政権が多国間主義に反対したことである。それは跳ね返って、ブレトンウッズ体制に打撃を与えた。公的部門に反対する民間部門の代弁者、ウォールストリート・ジャーナル紙は、グローバリゼーションと市場が国際関係の唯一の要素として台頭したことで、それらの機関は必要なくなったとキャンペーンを始めた。 
 
 第3の原因は、市民社会が、実構造はないものの、いまや現実であるということである。世界社会フォーラムは氷山の一角にすぎない。少なくとも1億人以上からなる200万の非政府組織がある。それは、国際関係でますます重要になっている献身的な理想主義と連帯の世界であり、これらの機関に対する絶え間ないラジカルな批判を与え、透明性の欠如、間違った政策、米国が不釣合いな影響力を持つ、歪んだ投票メカニズムを非難した。 
 
 世界銀行自身が財政危機に直面している。ウルフォウィッツに対する不正行為の嫌疑がなかったとしても、それ自身を危機から救えないほどであったであろう。少なくとも160億ドルの運転資金が必要である。 
 
 IMFの状況はもっとひどい。その収入は2005年の31億900万ドルから、2006年には13億ドルに減り、2007年には半分になると予測されている。この理由は、厳しい条件がついた融資を希望する国がますます減っているということである。アルゼンチン、ブラジルなどの国は、負債を弁済し、IMFの貸付残高のほとんど半分は1国、トルコが占めている。 
 
 このため、融資から受け取る利子は大きく減った。そのうえに、5月5日、中国、日本、韓国それに東南アジア諸国連合の10ヶ国は、膨大な準備金で支えられた、金融危機を相互に防ぐ基金を設立し、IMFの必要性をなくした。数日後、メルコスール諸国は、似たような目的の南アメリカ銀行をつくるベネズエラの提案に調印した。孤立し、赤字に陥っているIMFは、第3世界の国々に押し付けた構造調整を自分自身にしなければならなくなるであろう。 
 
 ブレトンウッズ危機は、国際金融組織の全般的危機における最後の動きである。第1次世界大戦後、米国の主導で国際連盟が創設された。第2次世界大戦後、またも米国の先導で国連とブレトンウッズの双子が設立された。冷戦終結後、米国は方向を変え、グローバリゼーションを押し付け、国際システムの改革に懸命に抵抗している。 
 
 現在、危機は戻ってきて、猛威を振るっている。物とサービスの全生産より20倍も大きく、自己管理と統治のメカニズムが欠けている金融セクターが自己管理能力がないことは明らかである。国連は基本的に開発政策を任され、ブレトンウッズ体制は見直しに直面している。気候変動などの劇的な問題が、すべての市民にとっての国際統治の問題を無法状態の市場が解決することはできないという新たな認識を生み出すのに十分なのかどうか、われわれは問わなくてはならない 
 
*ロベルト・サビオ IPS通信社創設者、名誉社長。世界社会フォーラム国際委員会委員。 
 
(翻訳 鳥居英晴) 


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