2007年06月28日10時42分掲載  無料記事
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世界に軍隊の無い国はあるの? 落合栄一郎(バンクーバー9条の会)

  日本国は憲法の建前上は、軍隊がないことになっています。皆さんご存知のように、現実には事実上の軍隊=自衛隊があり、その規模は世界でも有数の大きいものです。現在、日本政府与党は、憲法(9条)を改定して、これを本当の軍隊にし、堂々と国外にも派兵しようとしています。憲法9条の精神は、国際紛争は武力によらず話し合いで解決すべきであり、日本はそうするというものです。したがって、軍隊は持たないと宣言しています。 
 
 多くの人の懸念は、外国が攻めて来たとき、軍隊がなくてどうして防御できるのかということのようです。軍隊がなくて国家が成り立つのだろうか。実は軍隊をもたなくとも国は成り立ちうるのです。世界には軍隊を持たない国がすでに27カ国もあるのです。それらの国々を下に列挙します。 
 
 ミクロネシア = ミクロネシア、パラオ、マーシャル諸島、キリバス 、ナウル 
 ポリネシア = サモア、ツバル、クック諸島、ニウエ 
 メラネシア = ソロモン諸島、バヌアツ 
 インド洋 = モルジブ、モーリシャス 
 欧州 = リヒテンシュタイン、アンドラ、サンマリノ、バチカン、モナコ、アイスランド 
 中米・カリブ海 = ドミニカ、グレナダ、セントルシア、セントビンセント・グレナディン、セントクリストファー・ネビス、ハイチ、パナマ、コスタリカ 
 
 これは、平和問題研究家の前田朗教授によって調べられたものです(「法と民主主義」誌)。このうちの24カ国はWikipedia, Answer.domでも見られます。アイスランド、ハイチ、パナマ、コスタリカなどは通常の規模の国ですが、その他の国々は、非常に小規模な国です。そういう国は、自前で軍隊を持つ余裕がないのでしょうが、だからといって他国から脅威を受けているようには見えません(これに関しては、十分な情報がありません)。まあ侵略してもあまり意味がないということもあるでしょうが。 
 
 さて、日本は自衛隊はあっても戦力としては用いなかったが、戦後の62年間外国から侵略されたことはありませんでした。ある人は、それはアメリカの傘の下にあったからと指摘されるでしょうが、本当にそうでしょうか。終戦前後は、当時のソ連の侵攻が危ぶまれました(終戦直前に参戦—というより、ソ連の参戦が日本の降伏を促した)が、もちろん、アメリカが占領していたためにできませんでした(そういう意図がソ連に本当にあったかどうかは不明です)。この時は、アメリカの傘というより直接的支配でした。占領状態が解除された時点から、日米安全保障条約を締結してアメリカの傘の下に入ったわけですが、その時点でアメリカの傘がなければソ連に侵略されたでしょうか。 
 
 歴史上の、「もしこれこれであったら」という疑問には回答がありませんので、確たる事は言えませんが、皆さんはどう考えますか。また、お隣の北朝鮮は、2007年6月17日に、国際原子力機構の査察を受け入れる旨の発表をしました。一部の人達が日本の軍備拡張/核武装などを主張する根拠の一つは、幸い消失するようです。 
 
 軍隊を持ち、それによって紛争を解決することは、すなわち力にもの言わせて,相手をやっつけるということです。このような精神が主流であれば(人類の過去はそうでした)、軍備増強競争がエスカレートすることは必至です。そのあげくに、私達はすでに、人類全体を何度も皆殺しにできる武器、弾薬をもってしまいました。この悪循環を断ち切らない限り、恒久平和はありえないでしょう。9条の精神は、そういう悪循環を断ち切る原動力に成りうるものです。 
 
 現在の中東戦争の状況をみても、武力(暴力)で安全/平和が齎されることは不可能であることはますます明らかになってきています。国家間の争いは武力でなく、外交努力すなわち話し合いで解決すべきなのです。内紛や小さい組織間にはすでに、非暴力の解決の努力がなされています。それを国家間の問題にも適応すべきなのです。そのためには、もっともっと軍隊を持たない国をつくる必要があります。日本憲法9条の精神をもっともっと広く世界に広めようではありませんか。 
 
*この文章は、「バンクーバー9条の会」のサイトwww.vsa9.comにも掲載予定です。 


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