2007年07月21日23時51分掲載  無料記事
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マレーシア芸術界の巨匠、故ピヤダサ氏の作品展「マレーシアン・シリーズ」が開幕

  【クアラルンプール21日=和田等】現代マレーシア芸術界の巨匠、レザ・ピヤダサ氏の作品展「ピヤダサ−ザ・マレーシアン・シリーズ」が首都クアラルンプールの中心地KLCCにあるギャラリ・ペトロナスで20日から始まった。同氏は芸術学者、歴史家、批評家、教育者、ライターとしても知られ、惜しまれながら今年5月に亡くなった。43点の展示作は多民族国家マレーシアの文化の多様性を描いている。 
 
 1939年にパハン州クアンタンで生まれたピヤダサ氏は、1970年代にニュー・シーン・アート・ムーブメントの立役者として注目を浴び、80年代には写真のような写実性に西欧的なポップアート的色彩感覚を交えた「マレーシアン・シリーズ」の制作に着手。今回展示されたインド人家族やイスラム教徒の家族、華人家族の肖像を描き、マレーシアの持つ民族や文化の多様性を描き出した。 
 
 ピヤダサ氏は画家としてだけではなく、1992年から97年にかけて地元英字紙「ビジネス・タイムズ」に週1回の芸術コラムを執筆、批評家としての立場を固めた。さらにMARA技術大学芸術校やマレーシア科学大学の人気講師として教育者としても知られるようになった。 
 
 それだけではなく、ピヤダサ氏は自身の確立した立場やネットワークを活用してマレーシアの芸術や芸術家を積極的に売り込む宣伝役をも務めた。同氏の提唱を受け日本やオーストラリア、シンガポールのギャラリーがマレーシア人芸術家の作品を展示するにいたるなど、同氏がマレーシア芸術の普及に果たした役割も大きい。 
 
 ピヤダサ氏は社会的な事象にも高い関心を割き、周辺に追いやられた人たちにも深い配慮を示した。マレー人と華人が衝突し多数の死者が出た1969年の5・13事件を題材にした絵画「May13」を翌70年に描いていることにもそれがうかがえる。 
 
 今回の展示会はマレーシアの秘められた才能を再発見できる展示会といってよく、一度足を運ぶ価値ありと推奨しておきたい。8月5日まで開催されている(入場無料)。 
 
 ギャラリ・ペトロナスはマレーシアの国策石油会社ペトロナスが企業の社会貢献の一環として、マレーシアにおける芸術の発展を支援するため1993年に開館したギャラリー。開館以降、マレーシアの芸術家のみならず日本を含む外国の芸術家の作品の企画展を実施してきている。最近では、4月から5月にかけてキネティック・アーティスト、田中真聡(まさと)氏の作品展「時紡(ときつむぎ)」が同ギャラリーで開催された。 
 
■ギャラリ・ペトロナス 
TEL:(603)2051−7770 


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