2007年12月03日00時16分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200712030016531

時事英語一口メモ

【35】「超高層ビルの呪い」

ブログ版 
 
 「さあ、天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」(創世記第11章第4節)バベルに建てられた塔を見て、神は人間のごう慢さの原因は言葉が同じことが原因であると考えた。そこで、言葉を混乱(バラル)させ、世界各地に散らされたという。 
 
 アラブ首長国連邦のドバイで建設中の超高層ビル「ブルジュ・ドバイ」が、台湾・台北市にある「台北101」を抜いて世界一高いビルとなった。2008年に完成する。世界一高い超高層ビルの建設は経済危機の前触れとなるという説がある。“skyscraper curse”(超高層ビルの呪い)である。ブルジュ・ドバイが「砂上の楼閣」になることはないのか。(鳥居英晴) 
 
 “skyscraper curse”という言葉を使っているのはブルームバーグ・ニュースのコラムニスト、ウィリアム・ペセック。この言葉を造語したのがペセックかどうかは不明であるが、彼は遅くとも2002年には使用している。11月28日のコラムで、原油価格が100ドルに近づいている中、エコノミストが「ドバイのバブル」についてささやいているのは不思議ではないとする。 
 
 Of course, doomsayers may have some ammunition in the ``skyscraper curse.'' 
 
 (もちろん、悲観論者は「超高層ビルの呪い」という有利な言説を持っているかもしれない) 
 
 It happened in Kuala Lumpur in 1997, Chicago in 1974, New York in 1930 and in biblical times with the Tower of Babel. A bizarre coincidence perhaps, yet humankind's propensity for architectural overreach has been a reliable omen of meltdowns. 
 
 (それは1997年にクアラルンプールで、1974年にはシカゴで、1930年にニューヨークで、聖書の時代にはバベルの塔で起きた。奇妙な偶然の一致かもしれない。が、人類が身の程を知らない建築物をつくる傾向にあることは、破綻の確かな前兆を示すものであった) 
 
 この説はペセックの独創ではない。超高層ビルの建設と経済危機との相関関係を初めて指摘したのは、ドイツ銀行のエコノミスト、Andrew Lawrenceである。彼は1999年、これを“skyscraper index”(超高層ビル指数)と名づけた。彼によると、超高層ビルはその国の富、技術力、ごう慢を雄弁に語るという。Lawrenceは彼の指数を“unhealthy 100 year correlation”(不健全な100年の相関関係)と呼んだ。 
 
 米アラバマ州のLudwig von Mises研究所の上級研究員、Mark ThorntonはLawrenceの説を次のように解説している。 
 
 He shows that in almost all cases that the initiation of construction of a new record-breaking skyscraper preceded major financial corrections and turmoil in economic institutions. Generally, the skyscraper project is announced and construction is begun during the late phase of the boom in the business cycle; when the economy is growing and unemployment is low. 
 
 (彼が示したのはこういうことだ。ほとんどの場合、新たな世界一高い超高層ビルの建設の開始は、大きな金融調整と経済システムでの混乱に先立っていた。一般的に、超高層ビルプロジェクトは、経済が成長し、失業率が低い、景気循環の好況期の最後の時期に発表され、建設が始まる) 
 
 This is then followed by a sharp downturn in financial markets, economic recession or depression, and significant increases in unemployment. The skyscraper is then completed during the early phase of the economic correction, unless that correction was revealed early enough to delay or scrap plans for construction. The skyscraper index performs well as a leading indicator of major downward swings in the business cycle. 
 
 (その後に、金融市場で急激な降下が起きる。景気後退、ないし恐慌、失業率の大幅な増加である。調整が明らかになって、建設計画が延期になるか中止にならない限り、超高層ビルは経済調整の初期の段階で完成する。超高層ビル指数は景気循環における大きな下降局面の主要な指標として機能している) 
 
 超高層ビルの最初の周期は1904年と1909年の間に起きた。1908年にニューヨークで竣工したシンガービルは世界最初の超高層ビルとなった。翌年完成したメトロポリタン生命保険ビルはこれを追い越した。“the Panic of 1907“(1907年の恐慌)は銀行の取り付け騒ぎを引き起こし、米国経済史における最大の下降のひとつとなった。 
 
 超高層ビルの第二の局面は、“the Great Depression”(大恐慌)の始まりとともに起きた。クライスラービルは1930年、エンパイヤーステートビルは1931年に完成した。 
 
 第三の周期は1970年代初頭に起きた。金本位制度が放棄され、ブレトンウッズ体制が崩壊しつつある中、ニューヨークとシカゴでは建設労働者が次の世界一の超高層ビルを建設していた。ワールド・トレード・センター(1973年完成)とシアーズタワー(1974年完成)である。米国経済は1973年から1975年にかけてrecession(景気後退)に見舞われる。 
 
 第四の周期は東アジアの経済危機の到来を告げた。1997年7月にタイを中心に始まったアジア通貨危機は、東南アジア、東アジアを巻き込んだ。マレーシア・クアラルンプールにペトロナスタワーが完成、シアーズタワーを抜いて、世界一の超高層ビルとなったのは1997年であった。 
 
 It would be very easy to dismiss the skyscraper index as a predictor of the business cycle, just as other indicators and indexes have been rightly rejected. However, the skyscraper has many of the characteristic features that play critical roles in various business cycle theories. 
 
 (他の指標や指数が正当に退けられているように、超高層ビル指数は景気循環を予測するものにはならないとして退けるのは簡単である。だがしかし、超高層ビルはいろいろな景気循環理論で重要な役割を果たしている多くの特性を備えている) 
 
 It is these features that make skyscrapers, especially the construction of the world’s tallest buildings, a salient marker of the 20th century’s business cycle; the reoccurring pattern of entrepreneurial errors that take place in the boom phase that are latter revealed during the bust phase. 
 
 (超高層ビル、特に世界一高いビルの建設を20世紀の景気循環の顕著な指標にしているのは、そうした特徴である。企業家は好況時に失敗を起こすという繰り返されるパターンである。それは後の不況の局面で明らかになる) 
 
 In the twentieth century the skyscraper has replaced the factory and railroad, just as the information and service sectors have replaced heavy industry and manufacturing as the dominant sectors of the economy. Therefore it should not be surprising that the skyscraper is an important manifestation of the 20th century business cycle, just as the canals, railroads, and factories were in previous times. 
 
 (20世紀において、情報・サービス部門が経済の主要な部門として重工業や製造業にとって代わったように、超高層ビルは工場や鉄道にとって代わった。従って、前の時代で運河や鉄道、工場がそうであったように、超高層ビルが20世紀の景気循環の重要な表れであることは驚きではない) 
 
 台湾の超高層ビルについてはどうなのか。ペセックは先のコラムで次のように述べている。 
 
 Taiwan, which in 2004 became home to the tallest building, was arguably affected. Its economy didn't implode, so much as it's disappearing. China has done a masterful job marginalizing an island it sees as a breakaway province. Now, among Taiwan's main allies are Kiribati, Swaziland and the Holy See. An economic crisis? You decide. 
 
 (2004年に世界一高いビルを持った台湾は、ほぼ間違いなく影響を受けた。その経済は消えるほどは崩壊しなかった。中国は巧みに台湾を国際社会から孤立化させるようにした。現在、台湾の主な同盟国はキリバス、スワジランド、バチカンである。経済危機であろうか?その判断は任せる) 
 
 The thing about record-breaking skyscrapers is that they can say as much about hubris as wealth, ambition and technology. Is Dubai a development miracle? Or is it the center of an Arabian asset bubble tied to surging oil prices? At least for the moment, it would appear to be the former. 
 
 (記録を破る超高層ビルとは、それが富や野心、技術ばかりでなく、ごう慢についても語っているということである。ドバイは発展の奇跡なのか?それとも、急騰する石油価格に関係したアラビアの資産バブルなのか? 少なくとも、今のとことは前者のように見える) 
 
 To sustain the boom, Dubai needs to beat the system, so to speak; it has to overcome the skyscraper curse. Trouble is, few economies have done so. 
 
 (好況を維持するためには、ドバイは突破口を見つけなければならない。言ってみれば、超高層ビルの呪いを克服しなければならない。問題は、そうした国はほとんどなかったことである) 
 
 「超高層ビルの呪い」は資本主義だけのものではない。北朝鮮はソウル五輪に対抗したとされる、1989年の世界青年学生祭に間に合わせようと超高層ホテルの建設に乗り出した。「柳京ホテル」は、ソウルに1985年完成し、当時アジアで一番高かった「63ビル」より高く、完成すれば世界で一番高いホテルになるはずであった。1987年に起工したが、1992年に工事は中断したままになった。平壌の中心にそびえるその廃墟はチュチェ社会主義の崩壊を象徴するものになっている。 
 
参考サイト 
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601039&sid=aBVT9MVGtNAM&refer=home 
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601039&sid=aL28O1n.YHgk&refer=home 
http://money.cnn.com/magazines/fortune/fortune_archive/2005/09/05/8271392/index.htm 
http://findarticles.com/p/articles/mi_m5072/is_38_24/ai_92808208 
http://www.mises.org/journals/scholar/Thornton4.pdf 


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