2007年12月03日15時17分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200712031517361

イラクからの撤退、気候変動相ポスト新設など表明 オーストラリア・ラッド新政権

  【アデレード3日=木村哲郎ティーグ】先月24日に行われたオーストラリア国政選挙で地滑り的な勝利を収めたケビン・ラッド労働党党首は3日、オーストラリアのマイケル・ジェフリー連邦総督により第26代オーストラリア首相へ任命された。新首相は、二人三脚で労働党を昨年の12月から牽引してきたジュリア・ギラード副党首をオーストラリア史上初の女性副首相に任命済み。同副首相は雇用職場関係相と教育相をも兼任し、親米保守で経済優先主義であったハワード前首相とは異なり、世界トップレベルの教育システム構築を含む「国民のための政府」という新政府の方向性を明らかにしている。ラッド首相はイラクからの部隊撤退の方針も明言した。 
 
 ラッド新首相はまた「ポスト京都議定書」に関する国際問題を担当する気候変動相のポストを新設し、マレーシア生まれで中国系のペニー・ウォン女性上院議員を任命。ウォン上院議員は水資源相も兼任し、一部専門家からは「千年に1度の干ばつ」と呼ばれている気候変動による恒久的な水不足問題に取りかかる。 
 また以前から京都議定書の批准を公約に掲げていたラッド新首相は11月29日、3日からバリ島で行われる「ポスト京都」の枠組みについての国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)にも自らが参加する姿勢を発表。新政府が国民に感心の高い環境問題へより積極的に関わる姿勢を示している。 
 
 また先月30日には、ラッド新首相はイラクからオーストラリア軍の撤退を来年半ばまでに行うとも発表。ラッド新首相はブッシュ米大統領とすでに電話で会談を行っており、ラッド新首相が来年早期に訪米することで合意済み。イラク撤退に関しては駐豪米大使と会談を即急に始め、協議を進める意向であるという。 
 
 元外交官で中国語を不自由なく話すことのできるラッド新首相は、80年代から90年半ばにかけてホーク、キーティングの双労働党政権下で主要政策であった「アジア重視」を復権させる方向でもある。ハワード政権下ではイラク派兵のほか、東ティモールへも多数の兵士を派遣し多国籍軍を主導したことでイスラム国家であるインドネシアやマレーシアを含むアジア諸国から反感をかっており、今後はアジア太平洋地域のオーストラリアとして、日米中にアセアン諸国とのバランスを取った外交政策を進めるのでは、と世論は見ている。 
 
 
▼自由党新党首はブレンダン・ネルソン前国防相 
 
 下野する自由党は先月29日、ブレンダン・ネルソン前国防相を新党首に選出した。今回の総選挙では1974年からの下院議員で96年から4期首相を務めたジョン・ハワード前首相が、労働党が刺客として送った国営放送ABCの元女性キャスターでマクシン・マキュー氏に敗北。首相の落選という稀にないケースでハワード前首相の政界引退が決まり、長年ハワード前首相の後見者とされてきたコステロ前蔵相も、新党首への立候補を拒否していた。 
 
 ネルソン新党首は豪医師会(AMA)の会長を経て政治家に転身。政治活動を始める前の93年には「自由党には一度も票を投じたことがない」と発言したことでも知られている。当然、保守の中の保守と自称するハワード前首相からは一線を保っており、現に党首選後の会見では、ハワード前首相とは異なり京都議定書の批准を支持する姿勢も明らかにした。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。