2008年01月27日04時27分掲載  無料記事
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欧州移民新世紀

オランダで反イスラム映画の上映遅延決定 アムステルダムでは抗議デモも

【ロンドン27日=小林恭子】オランダの極右国会議員ヘールト・ウイルダース氏が制作し、1月末テレビ放映の予定だった反イスラム教の短編映画が、ウイルダース氏の都合により、放映遅延となった。オランダ最大の日刊紙「デ・テレグラーフ」紙が26日付けで伝えた。映画は、ウイルダース議員の自論である、イスラム教の法典コーランが「人に殺人を行なうよう扇動するファシストの本」であることを証明するのが目的だ。放映遅延の理由は、「制作が全て終わっていないため」(ウイルダース氏)だ。2004年、反イスラム映画の監督がイスラム教狂信者にアムステルダムの路上で殺害されていることから、今回の映画も同様の行動を触発する可能性や、国内外のイスラム教徒の間に大きな反感を呼び起こす事態が指摘されていた。 
 
 テレグラーフ紙によると、映画はコーランの表紙が左手に映る場面で始まる。右手には「警告:この書物には衝撃的な映像が入っている」という文字が出る。この後、「シャリア法が使われているイラクで人の首がはねられる様子、イランでの石打ちによる死刑、サウジアラビアでの処刑の様子」が続く。 
 
 「こうした映像を見て、視聴者は私に対して怒るべきでなく、(処刑などをした)人々に対して怒るべきだ」とウイルダース議員はテレグラーフ紙に語っている。コーランの書物の縁が画面の枠になり、「コーランの世界を映像化した」ように作られているという。 
 
 オランダ議会(全150議席)で9議席を持つPVV党の党首でもあるウイルダース氏が制作した反イスラムの映画がテレビで放映されることが公になったのは、昨年11月末だ。映画の放映をきっかけとして国内外で抗議運動や死者が出る状況を予想したオランダ政府は、内密で治安対策を協議し、バルケネンデ首相は、「落ち着いた行動を取るように」と国民に呼びかけてきた。 
 
 イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画をデンマークの新聞が掲載したことで、2006年、世界中に広がったイスラム諸国での抗議運動や、2004年にはイスラム教徒の女性の屈辱的立場を描いたオランダの短編映画「服従」の監督がアムステルダム市内でイスラム教狂信者の青年に殺害された事件などは、未だにオランダ国民の記憶から消えていない。 
 
 映画「服従」の脚本を書いたアヤーン・ヒルシ・アリ議員(当時)にもイスラム教過激派から殺害予告が出たため、厳重警護がついた。ヒルシ・アリ氏はオランダを出て、現在は米国に住む。ウイルダース議員もイスラム批判の言説が多く、身辺を警護される毎日だ。 
 
 26日、アムステルダムではウイルダース議員のシンパと見られる極右派20人ほどがダム広場で「欧州のイスラム化を止めよう」とするスローガンを訴えながら、デモを行なった。シャリアはここでは禁止だ」、「もう(イスラム移民には)あきあきだ」と書かれたプラカードを持つデモ参加者を報道陣が取材し、警察官らがこれを囲んだ。広場の反対側では、右派デモに抗議をする人々が「全ての人種差別者は出て行け」とするプラカードを掲げていた。 
 
 人口1600万人のオランダで、イスラム教徒は5%を占め、その殆どがトルコやモロッコからの移民かその二世,三世だ。欧州内でもオランダの反イスラム教徒の感情は特に高いと言われる。 
 
 国内の約200のイスラム団体の調整役を務めるモハマンド・ラッバエ氏は、24日付AFP通信の報道の中で、オランダの全国民に向けて、「映画に扇動されるな」と訴えた。「映画を観て侮辱されたと感じた人は、映画が差別や憎悪を扇動したという理由で、裁判所に訴えるべきだ」と述べた。また、国内外のイスラム教団体は「オランダ製品のボイコットに動くべきではない」としている。 


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