2008年02月04日10時25分掲載  無料記事
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冷水摩擦でカゼを退治しよう 健康のすすめとニッポン改革 安原和雄

  詩的感覚のゆたかな人は春の訪れが間近いと感じているとしても、日常の生活実感としては厳冬の最中である。風邪でお困りの方々も多いと思うので、この機会に冷水摩擦という私の体験的健康法を披露し、風邪を退治しようと呼びかけたい。同時に一人ひとりが健康で過ごすにはどうしたらよいか、それにはどういう医療・社会改革が必要なのかを考え、提案したい。 
 
▽「毎日のタオルこすりで50年間カゼ知らず」・・・ 
 
 健康雑誌『夢21』(08年2月号・わかさ出版刊)に特集「カゼ知らずになる・・・すぐできる強化法は〈タオルこすり〉」のひとつとして「72歳の今も・・・毎日のタオルこすりで50年間カゼ知らず」という見出しの記事が載っている。いささか自己PRめくが、この記事は実は私(安原)自身の体験談を編集記者がまとめたものである。以下にその要旨を紹介しよう。 
 
 安原さんは高校時代から今まで大きな病気にかかったことはほとんどない。カゼで寝込んだことも一度もないという。カゼぎみでのどが痛くなったり、熱っぽくなったりしたことはあるが、卵酒を飲んで寝れば、翌朝には治ってしまうとのこと。 
 そんな安原さんの元気の秘訣(ひけつ)が、高校生のときから50年以上続けている「タオルこすり」である。 
 
 「私は子供のころ、とても病弱だった。小学生のときにはリウマチにも悩まされた。そんな私を心配したのか、高校に入学した春、父からタオルこすりをすすめられた。やり方は外の井戸端で上半身裸になり、水でぬらしてから絞ったタオルで肌をこする。真冬でも一日も欠かさず続けた。そのおかげか、高校3年間、病気で休んだことは一度もなかった」 
 
 それ以来、タオルこすりが洗顔や歯磨きと同じように日課になった。今では毎朝浴室で裸になり、前身をこすっている。タオルこすりとともに毎朝、約15分間の座禅、100回の竹踏み、20回の腕立て伏せ(こぶしを床について行う)も。食事は腹六分を心がけ、野菜や魚中心にしているとのこと。 
 
 「私は、自動車やエスカレーターはなるべく使わず、自分の足で歩くようにしてる。食べすぎや運動不足で、不健康な人が増えてしまった。自分の健康は自分で守るようにしなければならない。(中略)その意味でも健康に役立つうえに、お金がかからず、誰でもできるタオルこすりは、もっと見直されていい」 
 
▽これから始めたいと思う人への助言 
 
 戦後すぐの小、中学生時代、私は病弱で、リウマチのため寝たきりになって、1か月以上、学校を休むことも度々あった。その私が、高校時代に始めた冷水摩擦(タオルこすり)によって「体質の構造改革」ができたように思っている。始めた頃、つらいと感じたのは、肌を刺す真冬の寒風が吹く中での冷水摩擦である。当時は、特に田舎では水道がなく、戸外の井戸に依存していたからである。 
 今日では田舎でも水道がほぼ行き渡っており、屋内でできるのだから、必要なのは「継続する意志」だけである。継続できないのは意志薄弱というほかないだろう。 
 
 始めてみたいと思っている人のために、参考までに注意点をいくつか挙げてみる。 
*今カゼを引いている人、また引いていない人も、無理に今の厳冬下で、始めるのは身体に毒である。 
*4月の水はまだ冷たいので、5月の連休明けくらいから始めてはいかがか。 
*使うタオルは新品ではなく、多少使ってざらざらした感触のが望ましい。それを水にぬらして、よく絞ること。冬には乾布摩擦を併用するのもよい。夏場は冷水摩擦の方が気持ちよい。 
*最初の2週間くらいは首と両腕くらいの摩擦にとどめるのがよい。あまり強く摩擦しない方が望ましい。慣らし運転である。 
*冬まで毎日持続することが肝心である。体調がよくないときは、ぬらして絞ったタオルを胸に当てるだけでもよいから、ともかく毎日持続すること。一日でも休むと、持続できなくなる。 
*さて冬になってこれまで通りカゼを引くようでは、日頃の暮らし方に無理がないかどうかを考えてみること。食事、睡眠を含めて不規則で放縦な生活態度では冷水摩擦も効果はないと自覚すること。 
 
 以上は私(安原)の体験から得たことで、その人の体質によっては効果も異なるはずだから、各自工夫するのが最上の策である。 
 「冷水摩擦で長生きできるか」とよく聞かれるが、「寿命は授かりものだからわからない。ただ、いのちある限り一日、一日をさわやかに生きたいと念じている」と答えることにしている。 
 
▽健康のすすめと社会・医療改革(1) 
 
 仏教には「病と共存」という考え方もある。現世では心ならずも病とともに生きざるを得ない人々も少なくない。ただ私自身、少年時代にイヤというほど大病を患った体験から、できることなら多くの人たちが健康であることを願っている。健康人を増やすこと、これが望ましい医療改革の道である。 健康人を増やすためには医療改革は同時に社会改革(教育、食料生産、働き方などの改革)、つまりニッポン改革を伴うプランでなければならない。 
 
 以下、まず医療改革案を提唱したい。 
*高齢者は原則無料 
 70歳以上の高齢者の医療費窓口負担は、高額所得者は別にして原則無料とする。高齢者が病気勝ちになるのは自己責任とはいえない。無料は老後の安心のための配慮である。 
 
*健康奨励策の導入 
 1年間に1度も医者にかからなかった者は、健康奨励策として例えば医療保険料の一部返還請求の権利を持つ。努力すれば、それなりのよき報いをもたらすという仏教の善因善果(因果応報のひとつ)の適用でもある。 
 
*自己責任原則を考えるとき 
 健保本人の自己負担は2割(03年4月から3割に引き上げられた)に戻す一方、糖尿病など生活習慣病は、自己負担を5割に引き上げる。生活習慣病は仏教でいう精進を忘れて、生活習慣の改善を怠ったことも一因であり、自己責任原則を適用する。 
 ただし自己責任原則の導入は2〜3年の猶予期間(自己負担が増える生活習慣病などを精進=自助努力、治療などで克復する期間)の後、実施する。 
 
 病気になれば病院に駆け込めばいいという安易な考え方が意外に多い。もちろん医療施設の役割は大きいが、昨今の病院の実情を考えれば、これは自らのいのちを粗末に扱うことにもなりかねない。 
 
▽健康のすすめと社会・医療改革(2) 
 
 以下では健康のすすめに必要な日常の暮らしや社会の改革案を考える。 
*「いのち・食・健康」教育の重視 
 「いのちと食と健康」の密接な相互関連について家庭や学校で小学生から教育する。さらにつぎの日常用語を家庭や学校で理解する機会をつくる。その教育担当者として定年退職者、大病体験者などを活用する。 
 
・「いただきます」(食事の前に動植物の「いのち」をいただくことに感謝する言葉) 
・「もったいない」(モノを無駄に使わないで、大切に扱うこと) 
・「お陰様で」(他人様のお陰で生かされていることを自覚し、感謝すること) 
 
*食料自給率引き上げと「地産地消」のすすめ 
中国製冷凍ギョウザによる中毒事件に伴う不安が1月末から日本列島に広がっている。中毒の原因である農薬がどの段階で混入したのか、その詳細は2月初めの時点では不明らしいが、根本的な対策は4割を切っている食料自給率の向上を図ることである。いのちの源(みなもと)である食料の6割強を海外からの輸入に依存している現状ではいのちの安全は保証できないだろう。 
 このような先進国では異常な「いのちの他国依存型」をどう打開していくかが問われなければならない。食料の「地産地消」(国内の地域で生産し、その地域で消費すること)をどう拡大していくか、知恵をめぐらすときである。 
 
*働き方・労働条件の改革 
 最低賃金の保障、労働時間の短縮、就業機会の保障(職種にもよるが、例えばワークシェアリング=仕事の分かち合い=の導入)があって初めて暮らしに安心とゆとりを確保できる。 
 現実には小泉政権以来顕著になった新自由主義(市場原理主義)に立ついわゆる構造改革路線(=弱肉強食のごり押し)の中で企業の人減らし、賃金削減、残業増大、労働強化を背景にサラリーマンの間に自殺、病気、過労死が増えている。労働者の約6割が「仕事で強いストレスを感じている」というデータ(厚生労働省調べ)もある。 
 
 以上の改革は長期的にみれば、健康人を増やす効果を持つだろう。その結果、医療費が削減され、また病人が減って、一部の病院が倒産の憂き目にあうとしても、それは健康な社会のあかしとしてむしろ歓迎すべきことでないか。 
 
*本稿は「安原和雄の仏教経済塾」からの転載です。 
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